離乳食完了期(生後12~18ヶ月)のポイントを解説|よくある悩み・疑問も【管理栄養士監修】
栄養のほとんどを食事からとるようになる離乳食完了期、通称“パクパク期”。開始の目安や食材ごとの調理法、食べさせ方、おやつの取り入れ方など、大人の食事に近づくこの時期の進め方のポイントをお伝えします。調理の手間をはぶくコツや、母乳・ミルクとのバランスなど、このころによくある悩みも要チェック!
離乳食完了期っていつ? どんな時期?
離乳食完了期は12~18ヶ月ごろ
離乳食完了期は生後12~18ヶ月、つまり1歳~1歳半にあたります。このころはちょうど、子供が著しく成長する時期です。
1歳ごろには90%以上の子でつかまり立ちができ、早い子では数秒間なら1人で立っていられることもできるようになります[*1]。その後、1歳半までにたっち、あんよと発達が進み、動きが活発になっていきます。言語機能の発達も進み、意味のある1語から「ワンワン、いた」などの簡単な2語文を話せるようになる子も。
幼児食へ移行するまでの最後のステップ
離乳食完了期(※)には、食事にもすっかり慣れ、栄養のほとんどを離乳食からとるようになります。ママ・パパも、調理にも食べさせることにも手慣れてくるころですが、幼児食移行への最後のステップになるこの時期だからこそ、押さえておきたいポイントがあります。
スムーズなステップアップのためにも、進め方の基本と注意点を知っておきましょう。
離乳食完了期、開始の目安
「○○期」という考え方(※)には、2つの考えが含まれています。1つは食事の面で必要な栄養の話、もう1つは口の機能の発達の話です。
1歳頃からは、少しずつ食事で栄養を補っていきたい時期ですので、食事がしっかりできるようになったら開始の目安といえます。
口の機能からみると、大人の親指と人差し指でつぶせるようなかたさの物がしっかり食べられるようになったら、今度は何度も指を使ってやっとつぶせるくらいのかたさのものになります。これが離乳食完了期のかたさの目安です。
しかし、「開始の目安」と一概にいえませんので、よく食べるから、少しかためのものにチャレンジしてみようかな?という程度にしましょう。
また、栄養状態が補えているかどうかは、成長発育曲線をみてみましょう。もう少し食べさせたいと思ったら、少しやわらかいものをメニューに加えても構いません。全部が同じかたさである必要などはありませんので、おおらかに考えましょう。
※離乳食完了期は、正しくは「離乳完了期」と言います[*2]。
離乳食完了期の進め方
離乳完了期は、手づかみ食べだけでなく、スプーンなどを使って自分で食べられるようになっていく時期でもあります。さまざまな食材の体験を通して食べる意欲を促し、3食のリズムもつけながら進めていきましょう。
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3回食のスケジュールが基本
■1日3食を基本に■
大人もそれぞれ時間が異なるように、赤ちゃんのスケジュールも一定ではありません。このように、1日3回の食事を基本としながら、間に母乳やミルクをあげていた時間に補食をプラスしていくといいでしょう。母乳をやめる必要はありませんが、主な栄養を食事でとっていきます。
できるだけ多様な食材を
離乳完了期には食べられる食品の種類がますます増え、量を加減すれば焼き物や揚げ物も食べられるように。メニューのバリエーションが増えると、献立が楽になりますね。また、薄味が基本であれば、調味料も使えます。さまざまな食の体験ができるといいですね。
離乳食完了期の献立例
離乳食完了期は、普通のごはんが食べられるようになります。基本は、おかずとごはんというスタイルがいいでしょう。ただ、ごはんばかり食べてしまうというようなこともあったりしますので、今回は混ぜご飯のご紹介です。
■混ぜご飯(離乳食完了期)■
<材料>
・ごはん 80g
・ほうれん草(茹で) 15g
・鮭(またはサーモン) 15g
・ごま油 少々
・しょうゆ 2-3滴
<作り方>
① ほうれん草はみじん切りにする
② 鮭は適当な大きさに切って電子レンジにかけ、骨と皮をとりほぐしておく
③ フライパンにごま油を熱し、ごはん、①、②を加えて炒めあわせたら、仕上げにしょうゆを加えて混ぜる
離乳食完了期に注意したい食材
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自分で食べる意欲をサポートして
スプーンで食べる練習がスタート
離乳食完了期の後半には、スプーンを使って自分で食べる練習も始めていきましょう。
初めは、“手のひら握り”から。握ったときに柄の部分が少し出るくらいの長さのものを用意してあげましょう。まずは大人が一緒に持ってあげたり、見本を見せてあげながら、少しずつ進めていきます。
ぼろぼろこぼしたり、うまくすくえないのはあたりまえ。楽しむ感覚で、ゆっくり練習していきましょう。「自分で食べてるね」「お野菜もちゃんと食べたね」などとほめてあげると、食べる意欲が促されやすいです。
食べる環境も考えましょう
椅子はなるべく赤ちゃんの足の裏がしっかり足板などにつくように調整しましょう。
足が落ち着かない状態だと食べることに集中しにくくなってしまいます。また、食事に集中できるように、テレビを消すのはもちろん、周りの人も一緒に食べるのもいいでしょう。
量・大きさ・かたさの目安と調理法
■たとえば…
種類 | 分量 | 大きさ/かたさ |
---|---|---|
炭水化物 (ご飯・パン・麺類など) |
・軟飯/ご飯80g ・食パン40~50g ・うどん105~130g ・いも類40~50g |
最初は軟飯、慣れてきたら大人と同じご飯に 食パンはトーストしてスティック状に。めん類は2~3cm大に切る |
ビタミン・ミネラル (野菜・果物など) |
40~50g | フォークがすっと通るくらいのやわらかさにし、1cm角に 手づかみ食べのときは輪切りやスティック状に |
たんぱく質 (白身魚・卵黄など) |
・肉や魚15~20g ・全卵1/2~2/3個 ・豆腐:50~55g ・乳製品:100g |
肉や魚、卵、豆腐は茹でて5mm~1cm程度に食べやすく切る 慣れてきたら大き目に切って、前歯でかじりとる練習をさせる |
まだまだ薄味、油少な目に
大人の食事にだいぶ近づいてきますが、このころはまだまだ薄味が基本です。だしを上手に使い、大人の味つけの半分くらいを目安にしましょう。
少量であれば焼き物や揚げ物を食べることもできるようになりますが、揚げ物はたくさん食べ過ぎると余分なエネルギーの過多になってしまうため、与えすぎには注意が必要です。調理も、ごく少量の油で揚げ焼きする、炒ったパン粉をまぶすなど「できるだけヘルシーに」を意識しましょう。
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炭水化物 (ごはん・パンなど) |
軟飯・食パン・パスタ・中華麺/長芋・山芋・
里芋 ホットケーキミックス・オートミール・コーンフレーク |
---|---|
ビタミン・ミネラル (野菜・果物) |
かぼちゃ・トマト・なす・ねぎ・もやし・スナップエンドウ・れんこん・ニラ・きのこ・しいたけ・なめこ・ミックスベジタブル アボカド・キウイ・さくらんぼ・いちご・みかん・ぶどう |
たんぱく質 (魚・肉・卵など) |
マグロ・かつお・メカジキ・ホタテ・エビ・さば・ブリ・鮭・たら・さわら・はんぺん・ツナ缶 ささみ・鶏ひき肉・豚肉・牛肉 油揚げ・おから/全卵 |
おやつの役割とは?おすすめの食べ物とあげ方のポイント
1歳前後からは、離乳食とともにおやつ(補食、間食)も必要になってきます。おやつを食べさせる意義と、あげる際に気をつけたいこと、おやつにおすすめの食べ物をご紹介します。
離乳食完了期には食事の合間におやつを
1歳前後になると、つかまり立ちやたっち、あんよなど、著しい発達とともに運動量もぐんと増えてきます。そのため、今までよりも多くのエネルギーが必要に。しかし、胃が小さく消化器官も未発達なこのころは、一度に多くの量を食べることができず、3回の食事だけでは必要な分を満たすことが難しいです。
そこで必要になってくるのが、おやつです。「おやつ」というと、お菓子を連想しがちですが、これは「補食」ともいい、3度の食事の合間に、不足した栄養やエネルギーを補完する目的で食べさせます。
特に、小食の子の場合は“4回目の食事”ととらえ、穀類やいも類に、牛乳・チーズなどたんぱく質の多い食品と果物を組み合わせるなどして、栄養バランスを考えて与えることが大切です。
おやつをあげるタイミングと注意点
おやつは、食事と食事の間にあげるのが基本です(昼食と夕食の間の15時前後など)。明確なルールは特にありませんが、次の食事に影響しない時間と量になるよう気をつけましょう。
お昼寝や外出などでいつもの時間にあげられなかったときは、無理にあげようとせず、食事の時間をちょっと早めたり、量を少し多めにするなどして調整してください。
おやつにおすすめの食べ物
おやつ=お菓子ではありません。前述のとおり、おやつは3度の食事を補う役目を担うもの。そのため、エネルギーや栄養を手軽にとれる食べ物がおすすめです。
おにぎりやサンドイッチ
手軽にとれるエネルギー源として、おやつに適しています。食材を組み合わせやすく、栄養バランスをとる上でもおすすめです。
レシピ
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おやき、蒸しパン
いろんな食材を混ぜ合わせることができるおやきや蒸しパンも、炭水化物・たんぱく質・ビタミンなどを一度にとれる食べ物。食べやすさもバツグンなので、おやつにはもってこいです。
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乳製品や卵、小魚など
牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品や、卵・納豆・小魚などは、不足しがちなカルシウムや鉄分などを補うのに適した食べ物です。量や栄養バランスに配慮しながら、組み合わせて食べさせてあげましょう。
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果物
ビタミン・ミネラルの他、食物繊維も豊富に含まれている果物も、おやつに適した食べ物です。ただし、果糖も多いので、あげすぎには注意しましょう。なお、水分補給には水や麦茶など甘くない飲み物を。牛乳もいいですが、飲みすぎには注意が必要です。
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離乳食完了期によくある悩みQ&A
発達・発育にともなう、その時々ならではの悩みは多くあります。離乳食完了期だって例外ではありません。この時期によくある悩みについて、専門家がお答えします。
好き嫌いがあってメニューが偏りがちに
好き嫌いがみられるときは、味が嫌いで食べないだけでなく、食べ慣れていないせいで食べない場合もあります。食べ慣れている料理に混ぜる、見た目や調理法を変えてみるなど工夫すると、慣れない食材への抵抗感が少なくなることも。食べる機会が増えれば、その分味や食感にも慣れていきます。調理法や味つけもさまざまに試してみると、その中でお気に入りが見つかるかもしれません。
また、子供は大人の様子をよく観察しています。大人が食べて「おいしい」という様子を見せると、食べる意欲がわくかもしれません。
野菜を食べてくれないときは?
野菜が苦手な子は多いもの。特定のものは食べられても「野菜は全般的に好き!」という子は珍しいでしょう。これは、野菜にはトマトなど一部のものを除いてアミノ酸系、グルタミン酸系などのうま味成分が少ないことに加えて、野菜に含まれるちょっとした苦味などに、乳幼児が敏感に反応してしまったりするためです。
なかなか食べてくれないときは、小さく切って肉団子やカレーの具にするなど、うま味成分が入っている肉や魚と組み合わせるメニューで対応しましょう。うま味がプラスされると、その分食べやすくなります。
見た目だけで拒否してしまう場合は、細かくきさんで卵焼きやハンバーグに混ぜるなど、慣れるまでは野菜とわからないよう工夫して食べさせるのもひとつの手です。
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食事の途中で飽きて遊んでしまうときは?
食事が空腹のタイミングか、食べる環境が整っているか(テレビがついていない、おもちゃや絵本などが近くにないなど)を、まずは確かめましょう。
そして、食事の環境がきちんと整っていても遊んでしまうときは、ずるずると食べさせずに切り上げてしまいましょう。幼い子供の集中力は長くは続きません。食事の時間は20~30分と決めておき、それを超えるようであれば切り上げてしまうことも大切です。
ただし、その際は知らぬ間に片づけてしまうのではなく、一度椅子に戻して「ごちそうさま」をさせましょう。終了を認識させることで、食事と遊びの区切りをきちんとつけてあげることができます。
食事の時間じゃなくても食べることができると思うと、食べることに集中しないで遊ぶことがくせになってしまうかもしれません。そのため、食事を途中で切り上げたときも、ほしがるからと食べ物をちょこちょこ与えたりすることはやめましょう。空腹のタイミングで食事の時間を迎えれば、食べることに夢中になり、遊びに気をとられることも少なくなるでしょう。
まとめ
いよいよ幼児食に近づいてくる離乳完了期。食べることにもすっかり慣れ、スプーンを使って自分で食べる練習も始まる時期です。食べられる食材や調理法もますます増えるころなので、メニューのバリエーションを増やし、さまざまな調理法と味つけでいろんな味と食感を体験させてあげましょう。
食べムラや好き嫌いが増えた、遊び食べをし始めたなど、この時期ならではの悩みも出てくるかもしれませんが、あまり神経質にならず、ゆったり構えながら対応してください。大人がおいしそうに食べる様子を見せたり、「自分で食べてるね」など声掛けをしてあげると、食べる意欲が自然と出てくることも。楽しい食卓づくりを心がけ、親も一緒に無理なく進めていきましょう。
(文:マイナビ子育て編集部、監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]W.K.Frankenburg, 日本小児保健協会編: DenverⅡ:デンバー発達判定法, 日本小児医事出版社, 2005.
[*2]厚生労働省:授乳・離乳の支援ガイド (2019年改定版)