
【医師監修】喉つわりが辛い!妊娠中の喉の不快感・詰まりはどう対処する?
妊娠すると「喉つわり」に悩まされる女性もいます。妊婦さんに起こる喉の不調を指して一般的にこう呼ぶことがあるのですが、これはどんなものでどうして起こるのでしょうか。妊娠中、喉に不快感や詰まった感じがするときの対処法とともに解説します。
喉つわりってどんなもの?

「喉つわり」とは、どんな症状のことなのでしょうか。
喉が詰まる・苦しい・不快……
「喉つわり」は、妊娠によって起こる、
・喉に何かが詰まったような感じ
・喉を締め付けられるような苦しさ
・喉に何かがつかえているような不快感
などといった不調のこと。これは医学用語ではなく、きちんと定義されているわけではありませんが、一般的にこのような症状を指して「喉つわり」と呼ばれることがあります。
一般的に言われている「つわりの種類」
通常「つわり」というと、妊娠によって起こる「胃や腸などの不快な症状」のことを指します。つわりは、妊婦さんの50~80%に起こると言われています[*1]。
つわりは個人差が大きく、人によって悩まされる症状がさまざまなのも特徴です。医学的な分類ではありませんが、一般的に下記のような症状も「つわりの一種」と考えられています。
一般的に考えられているつわりの種類
・「吐きづわり」:吐き気やおう吐
・「食べつわり」:空腹になると気持ちが悪くなるのでしょっちゅう物を口にしたくなる
・「よだれつわり」:唾液による不快感
・「眠りつわり・寝つわり」 :強い眠気やだるさが続く
・「喉つわり」:喉周辺の違和感や不調
喉つわりが起こる原因は?

喉つわりはなぜ起こるのでしょうか。
つわりの原因自体まだよくわかっていない
つわりは、ひどく悩まされる人がいる一方で、まったくない人や軽い人もいて、症状の有無や程度も個人差が大きいマイナートラブルです。
実は、吐き気やおう吐といった通常のつわりが起こるメカニズムは、現在でもよくわかっていません。妊娠すると起こるホルモン変動などが影響していると言われていますが、くわしいことは解明されていないのです。
喉つわりの原因もいろいろ考えられる
そのため、どんな症状が出るかやその程度が人によって大きく異なる理由もはっきりとはわかりません。喉つわりの原因も確実なものはわかりませんが、引き起こす可能性がある要因をいくつか解説します。
(1)喉などの粘膜のむくみや充血
妊娠すると、全身の水分量が増えたり、女性ホルモンが増加したりすることなどにより、体の至るところに「むくみ」が出る傾向にあります。実は、妊娠すると「喉の粘膜」もむくんだり充血しやすくなっていると言われていて、これが喉つわりを起こしている可能性があります。
喉の粘膜がむくむと、中が狭くなり、締め付けられた感じや何かが詰まったり、つかえているような感覚が出るからです。
妊娠中は、喉だけではなく、声帯や舌、鼻の粘膜などにもむくみや充血が起こりやすくなっているので、
・声が出しづらい
・しゃがれ声
・鼻づまり
・鼻でうまく呼吸できない
・鼻の圧迫感
・くしゃみ
・鼻血
といった症状が出ることもあります。
(2)逆流性食道炎などによる食道の炎症
妊娠すると、「逆流性食道炎(胃食道逆流症。GERD)」を起こしやすくなります。
子宮が大きくなっていくにつれて腹圧が高まったり、女性ホルモンの増加によって胃と食道のつなぎ目にある「噴門」のしまりが悪くなったりするからです。こうなると胃から胃酸が逆流して、食道に炎症が起こります。
逆流性食道炎のおもな症状は、
・胸やけ
・呑酸(どんさん。胃酸がこみあげてくる感じ)
・胃のむかつき
・胃や胸部の痛み
ですが、「喉のつかえ」や「咳」が出ることもあります。
吐きづわりによって、胃の内容物を頻繁におう吐することで食道に炎症を起こすこともあります。
(3)その他
ほかに、以下のような理由で喉つわりが起きている可能性もあります。
甲状腺の病気
首の根元あたりにある蝶の形をした「甲状腺」という臓器に異常がある場合、喉に違和感を覚えることもあります。
甲状腺の病気は男性に比べ女性がかかることが圧倒的に多く、とくに妊娠可能な年齢の女性に多いという特徴があります。
精神的なもの
いろいろ検査してもとくに原因となる異常が見当たらないのに喉に異物感を覚えることもあり、この場合は「咽喉頭異常感症」という心身症の一種と考えられています。
風邪などを引いて一時的に炎症が起こることで、喉に違和感が出る場合もあります。
喉つわりはいつからいつまで?

喉つわりが起こりやすい時期というのはあるのでしょうか。
妊娠初期に起こりやすい
喉つわりは、妊娠初期に起こす人が多いでしょう。
喉など気道のむくみは妊娠初期に起こりやすく、妊娠の経過とともに自然に治まってくると言われています。
また、初期は吐きづわりがひどい人も多いので、おう吐のしすぎで食道に炎症を起こすことも多いと考えられます。
中期以降も続くなら逆流性食道炎の可能性も
通常のつわりは、個人差が大きいですが、早くて妊娠5~6週ごろ始まり、妊娠8~10週ごろが症状のピークで、妊娠12~16週ごろにかけて治まっていくというのが典型的です。
この時期を過ぎても喉の違和感に加え、胸やけや呑酸などの症状が続く場合は、逆流性食道炎が原因となっている可能性もあります。
喉つわり対策!薬はあるの?

喉つわりがひどく、辛い場合はどうすれば良いのでしょうか。
なかなかよくならない・症状がひどい場合は受診して
喉つわりが長引いていたり、あまりにも辛かったりする場合は、かかりつけの産科医に相談しましょう。
ここまでで解説したように、その原因として考えられるものには、心配のないものから治療可能なものまでいくつかあるので、体の状態を診てもらい、それに合った対処をとる必要があります。
とくに、逆流性食道炎が原因となっているときは、薬で治療できる場合もあるので、症状が辛いなら医師に相談してみてください。
受診するとともに、自宅では下記のようなセルフケアを試してみると、辛い症状の緩和に役立つかもしれません。
喉つわりのセルフケア
胃酸の逆流によって起こっている喉つわりなら、以下のような方法を試してみると症状を予防したり、軽くするのに役立つ可能性があります。
逆流性食道炎の予防
・庭仕事や床掃除など、前かがみ姿勢になる動作を避ける
・お腹を締め付ける服装はしない
・重いものを持つなど、お腹に力の入る動作を避ける
・食後は胃酸が逆流しやすいので、食べたあとすぐは横にならない
・食べ過ぎ、早食いを避け、消化の良い食事を何回かにわけて食べる
・胃酸の逆流やゲップが出やすくなるので以下のような食品は避ける
脂肪分の多い食べ物/柑橘類や酢の物など酸味が強いもの/あんこ、ケーキなどの甘い食品/
チョコレート、コーヒー、炭酸飲料など
また、妊娠中はどうしても喉含め全身がむくみやすいものですが、以下のような方法はむくみの予防や解消に役立ちます。
全身のむくみの予防
・左側を下にして横になる
お腹の圧力が下がるとともに、心臓から全身に血液が流れやすくなってむくみが軽くなる
・寝るときには脚を少し高くした状態にする
・十分な睡眠時間をとる
・着圧ソックスをはく
・ウォーキングをする
・足湯をにつかる
・塩分を摂り過ぎない
まとめ

喉つわりで悩まされている妊婦さんのために、妊娠中の喉の不調はなぜ起こるのか、いつ起こりやすいのか、試してみてほしい対処法を解説しました。喉つわりというとあまり耳にしたことのない人もいるので、その辛さをなかなかわかってもらえず苦労している妊婦さんもいるかもしれません。
でも、ここで解説したとおり、喉つわりも妊娠によって起こりうる不調のひとつ。なかなか良くならないときやあまりにも辛い場合は、治療が可能なこともあるので、まずはかかりつけ医に相談してみてください。
(構成・文:マイナビ子育て編集部/監修:宋美玄 先生)
※画像はイメージです
[*1]病気が見える 産科, メディックメディア, 2018.
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます