【医師監修】つわりのとき楽な体勢は? 寝る・起きているとき|NG体勢もチェック!
つわりで辛いとき、少しでも楽になる体勢はあるのでしょうか。寝るとき・起きているとき別に、つわりで辛いときにおすすめの体勢とその理由を解説します。つわりで眠れないとき試してみて欲しい方法も紹介するので、参考にしてみてくださいね。
寝るとき|つわりが楽になる体勢
まずは寝るときにとると、つわりが楽になるかもしれない体勢を紹介します。
左を下にして横向きに寝る
妊娠中の寝る体勢でもっともおすすめなのは、「左側を下にし、膝を曲げて横向きに横たわる」ことです[*1]。
「左を下にした横向き」が良い理由
・腹部の圧力を和らげ、心臓から体全体に血液がいきわたりやすくなる
・とくに左側を下にすると、赤ちゃんや子宮、腎臓、心臓に血液が流れるのを促進する
・左側を下にして寝ると、右側が下の場合や仰向けより、胃からの逆流が少なくなる。右側を下にすると、より頻繁に胸やけが起こるだけでなく、より長く続くことがある
・横向き寝は仰向けより、便秘、腹部膨満、またはその他の胃腸の不調がある人に向くことがある
・横向き寝は、首や腰、背中の痛みがある場合、症状を和らげるのに役立つ。妊娠中は、寝ている間に腰痛が悪化し、目が覚めることもある
上体を少し高くする
妊娠すると、女性ホルモンの増加により胃と食道のつなぎ目にある「噴門」のしまりが悪くなります。また、子宮が大きくなっていくと腹圧が高くなることもあって、胃から食道へと胃酸などの内容物が逆流しやすくなります。
胃からの逆流で食道が炎症を起こした状態は「逆流性食道炎(胃食道逆流症。GERD)」といって、とくに妊娠中期以降に起こりやすいと言われています。
逆流性食道炎の症状には、「胸やけ」「呑酸(酸っぱいものが口まで上がってくる)」「喉や胸の痛み」「咳」などがあり、これをつわりと勘違いしている場合もあります。
逆流性食道炎予防は「上体を少し高くする」
逆流性食道炎の場合、横になると症状が悪化しやすくなります。これを予防するためには、寝るときに「上体を少し高くする」のが有効です。
敷布団やマットレスの頭側に座布団などを敷いたり、リクライニングできるベッドであれば頭側を起こしたりして、「上体の位置を少し高く」してから横になると、胃からの逆流を少なくするのに役立ちます。
NG:お腹が大きくなってきたら「仰向け寝」を避ける
妊娠中期やとくに妊娠後期になったら「仰向け寝」は避けましょう。お腹が大きくなってから仰向けになると、大きくなった子宮が背骨に沿って心臓へと血液を運ぶ「下大静脈」を圧迫し、血液が心臓に戻りにくくなって「仰臥位低血圧症候群」という状態を起こすことがあります。
仰臥位低血圧症候群では、気持ちが悪くなっておう吐したり、冷や汗、頻脈、顔色が悪くなったりといった症状が起こります。仰臥位低血圧症候群になったら、左側を下にして横向きに横たわるとすぐに回復します。仰向け寝では、胃からの逆流も起こりやすくなります。
なお、妊婦さん自身が問題ないと感じるなら、妊娠初期などはうつ伏せでも眠れますが、お腹が大きくなるにしたがって自然とうつ伏せでは寝にくくなってくる人が多いでしょう。
起きているとき|つわりが楽になる体勢
起きているとき、つわりが楽になる体勢というのもあるのでしょうか。
ソファなどに深く腰掛ける
つわりで辛いときは、まずは体に負担をかけない体勢をとりましょう。横になっても良いですし、ソファなど、楽に座っていられるところに深く腰かけて休憩してください。
横になる際は、左側を下にして横たわると、胃からの逆流を少なくするのに役立ちます。
NG:前かがみの体勢は避ける
起きているときに、「前かがみの姿勢を避ける」ことも大切です。前かがみの体勢が習慣になっていると、妊娠中はただでさえ高まる腹圧がさらに高くなり、胃酸の逆流が起こりやすくなるからです。
庭仕事やテレビを観ているとき、パソコン作業やアイロンがけなどをしたりしているときは、前かがみの姿勢になっていないか注意しましょう。
お腹に力の入る動きを避ける
なお、重いものを持ち上げたり、息を止めてお腹に力を入れたりすることでも腹圧は高まり、胃酸の逆流が起こりやすくなります。
妊娠中は便秘になりやすいものですが、排便でいきむと強い腹圧がかかるため、逆流性食道炎がある場合は、できるだけ便秘を予防することも大切です。
つわりで眠れないときの対処法3つ
いろいろ体勢を工夫しても、つわりが辛くて眠れない、横になりづらいときに試してみてほしい対処法3つも紹介します。
(1)何かを少し食べる
胃酸などが逆流して辛いときは、寝る直前にあまり食べないほうが良いのですが、空腹でつわりがひどくなっているときは、少し食べ物を口に入れると症状が軽くなることもあります。
その際は、ビスケットやトーストなど、消化がよく低脂肪のものを選ぶと良いです。なお、食べたら寝る前にできれば歯みがきをしてください。つらくて難しい場合は、うがいをしましょう。
(2)クッションなどを使って楽な体勢を工夫する
妊娠中は「左を下にした横向き」で横たわるのがおすすめです。この体勢のとき、抱き枕やまくら、クッション、座布団などを使うことで、より楽な体勢にできることもあります。以下のような方法を試してみてください[*1]。
横向き寝のときの寝具の工夫
・枕やクッションをお腹の下や脚の間に置く
・腰のくびれの下に、巻いた毛布を置いて腰にかかる圧力を分散する
・腰の下にパッドを敷いて腰の痛みを和らげる
・体を支えるために、抱き枕や枕を使用する
なお、横向き寝では、仰向けやうつ伏せの場合より「枕は高め」にしたほうが体勢を整えやすく、起きたときに首や肩の痛みを感じにくいかもしれません。
また、マットレスは、体の重い部分は深く沈むが、他の部分は深く沈みすぎない程度にしっかりしている「中程度の硬さ」のものが横向き寝には向いていると言われています。
左を下にして寝るのが不快なときは、時々右側を下に切り替えてOK。左腰への圧力を和らげることができます。
(3)30分以内に眠れない場合は読書などをする
「なかなか眠れない!」と焦ってしまうと、余計眠れなくなることも。横になってから30分以内に眠れない場合は、一度ベッドから出て、眠くなるまで何か静かにできる他のことをしてみましょう。
ただし、スマホなどの電子機器の画面はブルーライトを発しており、眠気を引き起こすメラトニンの分泌量を減らしてしまうので避けます。楽な姿勢で読書をしたり、腹式呼吸を試すなどして、できるだけリラックスしてみてください。
まとめ
つわりのとき楽になる体勢について、寝るとき・起きているときそれぞれの場合でのポイントと、つわりで眠れないときの対処法3つを紹介しました。
つわりのときはひっきりなしに吐き気をもよおすことも多く、ただでさえ体力を消耗しがち。昼夜問わず、症状が辛いときはなるべく楽な体勢でやり過ごして欲しいですが、楽に感じるポジションは人それぞれ。ここで紹介したポイントを参考に工夫して、自分にとって少しでも楽に感じる体勢を探してみてくださいね。
(構成・文:マイナビ子育て編集部/監修:宋美玄 先生)
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※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます