
【産婦人科医解説】これって「頭痛つわり」? 妊娠初期でもできる7つの緩和方法
一般的につわりは吐き気やおう吐などの消化器症状が主な症状とされますが「頭が痛い」ことに悩まされるママたちも少なくないようです。今回は頭痛が起こるメカニズムや妊娠中でもできる対処法を東峯婦人クリニック副院長で産婦人科医の松峯美貴先生にお伺いしました。
つわりの時期の頭痛、原因はなに?


つわりとは、そもそも妊娠初期に現れる消化器の不快な症状を指す言葉。気持ちの悪さや吐き気・嘔吐が起こることが有名ですが、同時期に頭痛、眠気、唾液が増える(唾液が気持ち悪い)、食べてないと気持ちが悪いといった症状がある妊婦さんもいます。それらを指す「吐きづわり」「頭痛つわり」「眠づわり」「よだれつわり」「食べづわり」といった通称ができるぐらい、妊娠初期に起こる体調不良の症状は多様で、個人差があります。
今回特に注目するつわりの時期の頭痛については、主に次の3つの原因が考えられます。
1. ホルモンバランスの影響

同様の理由で月経前症候群(PMS)でも頭痛の症状が出る人がいます。妊娠前、月経(生理)前に頭痛があった人はつわりの時期にも頭痛が出やすいということもあるかもしれません。
(松峯先生)
2. 低血糖の症状
つわりのために食事が十分にとれず、低血糖状態になったことで頭痛が起こる場合もあります。
3. 妊娠とは直接関係ない頭痛
その他、妊娠初期とは直接関係ない頭痛もあります。
特に、「片頭痛」(偏頭痛)と呼ばれる頭痛は妊娠・出産の可能性や予定がある性成熟期の女性に多い傾向にあり、さらに昨今はスマホやPC利用で「緊張型頭痛」を起こす人が増えています。
生活に影響するような痛みがある場合には、市販の頭痛薬などを自己判断で利用せず、産科や頭痛外来(妊娠を告げて)で相談を。必要に応じて妊娠中も服用できる薬が処方されます。
すぐに受診が必要な頭痛の見分け方
以下の症状では、一時的に起こってその後回復したと思った場合も、必ず医療機関を受診してください。
・ これまでに感じたことがない強い頭痛
・ 頻度と痛みの強さが増す
・ 吐き気やおう吐を伴う
・ 片方の手足に力が上手く入らずうまく動かせない、またはしびれなどがある
・ ろれつがまわらない、言葉が出てこない
・ けいれん発作を伴う
・ 片方の目が見えない、物が二重に見える、視野が欠ける
・ 意識を失う
妊娠中でもできる頭痛への対処法7つ

頭痛を軽減するために自分でできることをまとめます。病気などが原因ではない場合は、無理のない範囲でできることを試してみましょう。
① まずは応急処置を
片頭痛などの場合は、以下の方法を試してみましょう。
①痛む部分を保冷剤などで冷やす
②刺激になる光や音を避ける
③静かな空間で安静にする
また、こめかみを押さえると痛みが鎮まることもあります。
緊張型頭痛の場合は、以下の方法が症状緩和につながる場合もあります。
①目を休める
②肩や首のこりをほぐしたり温めたりして、血流をよくする
③姿勢を変える
② 軽食をとる


つわりのために食欲がなく、あまり食べられていないようであれば、低血糖対策のため、スポーツドリンクや果物(糖分と水分補給)など食べられそうなものを口にできるといいですね。
また食事の回数を増やすのもOK! 「1日4または5回×半人前〜0.7人前程度(控えめ)」など分割食を試してみるのもいいかもしれません。
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つわり中の食事について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎つわりでも食べれるものが知りたい!軽減のコツと食べやすい食品
③ 肩こりを解消する
肩など特定の部分がこっているようであれば、温めながらほぐしましょう。入浴中にマッサージをするのもいいですね。パートナーにマッサージをしてもらうのも、心身がほぐれそうです。
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妊娠中の肩こりについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦は肩こりがひどいもの?つらい肩こりの原因とセルフケア
④ スマホから離れて休養をとる


脳の休養となる睡眠を十分にとりましょう。就寝前、覚醒刺激が強いブルーライトを発するテレビやPC、スマホから離れてのんびりし、自然な眠気を待って布団に入ると寝つきがよくなります。
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妊娠中の休養について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦の理想的な睡眠時間
⑤ ストレッチなど適度に体を動かす
体調を整え、全身の緊張をほぐす適度な運動を続けましょう。妊娠の経過に問題がなければ、ストレッチのほかウォーキング、マタニティヨガ、マタニティビクス、マタニティスイミングなども推奨されています[*2]。
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頭痛対策のストレッチについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦の頭痛対策!頭痛体操のやりかた
⑥ ストレス対策をする

つわりの多様な症状は心身のストレスとなるので、普段以上にストレスケアが大切です。
脳の健康とストレスケアの第一人者は『あまり興味のないテレビをぼーっと見るなどは脳にとってストレスになることがあるが、つい没頭してしまうような手仕事をしていると脳が活性しているときに出る脳波P300が広範囲に出て、ストレスケアになると言える』として、毎日“ほどほど(いい加減)”にやることを推奨しています。
調理や手芸、DIY、プチ模様替えなど、短時間、集中して行ってみましょう。
(松峯先生)
⑦ 頭痛の原因を探って遠ざける

痛みが治ったら、自分がどのようなきっかけや環境で頭痛を感じやすいか知るためにも「頭痛ダイアリー」をつけ、原因を遠ざける工夫をしてみましょう。
参考◆頭痛ダイアリー(日本頭痛学会)
まとめ


つわりの時期に頭痛が重なるととてもつらいですね。妊娠中はおなかの赤ちゃんのためにも、ママの体のことを第一に考えて行動する時期です。仕事や家事などが気になってがまんをしてしまう人もいますが、無理は禁物! 頭痛症状については主治医や頭痛外来で相談し、セルフケアについてもアドバイスをもらいましょう。早期に症状を軽減し、なるべく快適につわりの時期を乗り越えてください。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1]病気がみえるVol.10産科 第4版 ,p102, メディックメディア, 2018.
[*2] 産婦人科診療ガイドライン―産科編, p115-117,日本産科婦人科学会, 2017.
[*3] 産婦人科診療ガイドライン―産科編, p329,日本産科婦人科学会, 2017.
[*4] 病気がみえるVol.10産科 第4版 , p87,メディックメディア, 2018.
古賀良彦著「脳の疲れをとる本」,方丈社,2018
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます