大豆の食べ過ぎは体に悪い?リスクと効果を解説【管理栄養士監修】
大豆は「畑の肉」と言われ良質なたんぱく質を含みます。お肉に比べて低脂質でコレステロールフリーな大豆ミートがヘルシーフードとして注目されるようにもなりました。その一方で大豆に含まれるイソフラボンの影響が気になる人もいるのではないでしょうか。大豆の食べ過ぎにはどんなリスクが考えれるのか、また、その適量についてお伝えします。
大豆に含まれる成分のメリット
大豆は体に良いイメージがありますが、どのような栄養やメリットがあるのでしょうか。
骨粗しょう症予防効果|大豆イソフラボン
大豆イソフラボンとは大豆の特に胚芽の部分に多く含まれる成分です。この大豆イソフラボンに期待される効果の1つとして、骨粗しょう症の予防があります。
大豆イソフラボンは女性ホルモンと分子構造が似ていることから作用にも似たものがあるといわれており[*1]、女性ホルモンは骨の代謝を調節する働きをもっているため、大豆イソフラボンに骨粗しょう症を予防する効果が期待されているのです。
なお、「骨の健康に役立つ」特定保健用食品に認められている大豆製品もあります。
乳がんのリスクの低減|大豆イソフラボン
日本やその他のアジア諸国では欧米と比べて乳がんの発症率が低くなっています。この理由として、アジアでは大豆や大豆製品を食べる食習慣がある一方、欧米ではほとんど食べられていないことが関係しているのではないかと注目されています[*2]。
乳がんの発生には女性ホルモンであるエストロゲンの分泌も関係していると考えられていますが、大豆に含まれる大豆イソフラボンはエストロゲンを抑える作用があることから、大豆イソフラボンの摂取が乳がんの発症リスクを下げる可能性があるのです[*3]。たとえば、味噌汁の摂取が多い人は乳がんになりにくい傾向が見られたという研究[*4]や、大豆食品をよく食べることが乳がんのリスクの低下に関係する可能性を示した研究[*5]などがあります。
大豆製品に乳がん発症予防の効果があるとはまだ言い切れないかもしれませんが、毎日の食事に大豆製品を取り入れるのを心がけるのはよいといえるでしょう。
コレステロールを下げる効果|大豆たんぱく質
大豆に含まれる大豆たんぱく質には、血液中のコレステロールを下げる効果があるといわれています[*6]。悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが増えると動脈硬化などにつながりやすくなるため、増えすぎないようにすることが大切です。
なお、特定保健用食品として「コレステロールが高めの方に適する」と表示できる大豆製品もあります。
カロリーカットの効果
大豆の栄養の効果で体重が減ったりやウエストが細くなるとは言いにくいですが、摂取カロリー(エネルギー)を低減しやすいでしょう。
最近はお肉の代わりに使える大豆ミートといった商品もありますが、100gあたりの豚ひき肉と大豆ミート(ミンチタイプ)のカロリーを比較すると、大豆ミートの方が約100kcalほど低くなります[*7]。また、ハンバーグにおからや豆腐を使ってお肉の量を減らし、カロリーをカットするという使い方もできますね。大豆製品をうまく取り入れればダイエットにつなげることができるでしょう。
大豆を食べ過ぎるとどうなるの?
大豆にはさまざまな効果が期待できますが、一方で食べ過ぎるとどうなるのか気になりますよね。ここからは大豆の食べ過ぎで考えられるリスクについてお伝えします。
大豆イソフラボンの摂り過ぎのリスク?
大豆を食べ過ぎると大豆イソフラボンの過剰摂取につながり健康に良くないのではないか、と気になる方もいるでしょう。
しかし実際のところ、日本では従来よりさまざまな大豆食品が日常的に摂取されてきましたが、それによって健康被害の問題が出たことはありません[*1]。したがって、大豆や豆腐を食べ過ぎたからといって大豆イソフラボンの過剰摂取を心配したり、大豆イソフラボンを気にして大豆や豆腐などの量を制限する必要はないでしょう。
もちろん、すべてのエネルギーを大豆だけで補うというようなことをすると、大豆に含まれていない栄養素の欠乏などにも結びつくのでよくありません。意識したいのはあくまでもバランスの良い食事をすることです。
特定保健用食品・サプリメントは要注意
大豆イソフラボンの摂取で注意しないといけないのは特定保健用食品やサプリメント。これらは通常の食品と比べて成分が強化されているためです。
大豆や豆腐などの普通の食品を食べながら特定保健用食品も摂取する場合には、特定保健用食品から摂取する大豆イソフラボンは1日30mg(大豆イソフラボンアグリコン換算)の範囲にコントロールすることが必要とされています[*1,8]。
大豆製品の特定保健用食品には一部の豆乳などがあります。特定保健用食品やサプリメントを摂取するのであれば、必ずパッケージの成分表示を確認し、含有量を把握したうえで取り入れましょう。
動物由来の栄養素が不足するリスクも
ダイエットでカロリーを抑えるために肉や魚をすべて大豆製品などに置き換えてしまうと、たんぱく質のもとであるアミノ酸のバランスの偏りや、動物性食品に含まれる栄養素の摂取不足が懸念されます。カロリーが低いからといって、大豆だけで1日のたんぱく質を賄おうとはせず、魚や肉もバランスよく摂るようにしましょう。
大豆の適量はどのくらい?
大豆は体に良い作用をもたらす可能性がありますが、食べ過ぎは栄養バランスの偏りにつながるため避けましょう。1日の適量はどのくらいでしょうか。
1日50~100g程度|納豆なら1~2パック
厚生労働省・農林水産省による食事バランスガイドでは、大豆や大豆製品は肉や魚、卵料理などと同じ「主菜」というカテゴリーに入ります。この中から1日に3~5つ(SV※)とるとよいとされていますが、このうち肉や魚で2つ(SV)、卵で1つ(SV)をとることが一般的かと思います。
したがって大豆や大豆製品で1~2つ(SV)を補えるのが理想です。量で考えると50~100g程度になります。なお、大豆製品の1つ(SV)の目安は次の通りです。
<1SVの目安量>
煮豆などゆで大豆…約50g
納豆…約50g
絹ごし豆腐…約120g
※SVとはサービング(食事の提供量)の略
妊娠中はどうしたらいい?
妊娠中は食べてはいけないものや、食べ過ぎるといけなものは何かが心配になりますね。大豆はどうなのでしょうか。
大豆を妊娠中に食べても大丈夫
基本的に大豆を含め、豆腐、納豆、煮豆、みそなどの大豆製品については、他の食品とともにバランスよく食べることに気をつければ、妊娠中に食べても問題はありません。ただし、大豆・大豆製品を毎食のように食べるなど、たくさんの量を毎日食べ続けるのは食べ過ぎといえます。
妊娠期はなるべく安全な食べ方を考えておきたい時期です。何かの効果を期待して食べるという食べ方ではなく、あくまでバランスの良い食事の中で食べる程度にとどめておきましょう。
特定保健用食品やサプリメントは避けて
妊娠中のイソフラボンの多量摂取は胎児の発育に悪影響となる可能性があります[*1]。どのくらいのイソフラボンの摂取が問題となるかは具体的に明らかとなっていませんが、特定保健用食品やサプリメントでイソフラボンの摂取量を上乗せすることは、避けた方がよいでしょう。また授乳中も同様に避けておくと安心です。
まとめ
大豆には大豆イソフラボンなどの効果が期待されますが、特定の栄養成分の効果を期待して大豆ばかり食べるのもよくありません。大豆を含めてほかの食品とともにバランスよく食べるようにしましょう。
(文:鈴木ひかり 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]農林水産省:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
[*2]国立がん研究センター がん対策研究所:大豆・イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について
[*3]日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン:BQ5.大豆,イソフラボンの摂取は乳癌発症リスクを減少させるか?
[*4]Yamamoto S, Sobue T, Kobayashi M, Sasaki S, Tsugane S; Japan Public Health Center-Based Prospective Study on Cancer Cardiovascular Diseases Group. Soy, isoflavones, and breast cancer risk in Japan. J Natl Cancer Inst. 2003 Jun 18;95(12):906-13.
[*5]Zhao TT, Jin F, Li JG, Xu YY, Dong HT, Liu Q, Xing P, Zhu GL, Xu H, Miao ZF. Dietary isoflavones or isoflavone-rich food intake and breast cancer risk: A meta-analysis of prospective cohort studies. Clin Nutr. 2019 Feb;38(1):136-145.
[*6]厚生労働省:e-ヘルスネット「HDLコレステロール」
[*7]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*8]食品安全委員会:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
[*9]食事バランスガイド
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます