#古坂大魔王のモヤズバッ! Vol.19 ワンオペでしんどいのに「家事はやりたくない」と言う夫。分担してもらうにはどうしたら?
お笑い芸人や音楽プロデュース、テレビ番組のMCなど、多忙な毎日を送りながら、2児のパパとして育児に奮闘する様子をSNSで積極的に発信している古坂大魔王さん。同じように育児や夫婦関係のことで悩んでいるパパ・ママのお悩みに、ズバッと切り込みます。
今回のお悩み
なっつんさん(34歳/情報・IT/事務系専門職)
フルタイム勤務しながら、ワンオペで1歳半のヤンチャ息子の育児、家事をしていてパンク状態です。それでも夫は、結婚当初に自分が畳んだ洗濯物を私が直したせいで「やりたくない」と言います。こんな夫に、古坂さんならどうやって分担してもらいますか? または、「こんなふうに言われたら、張り切って家事をする」というセリフがあれば教えてください。
古坂さんの回答
育児をしないのはもったいない
なっつんさん、毎日お疲れ様です。フルタイムで仕事をしたうえに、まだ手のかかる年齢のお子さんの育児も、家事も、全部ひとりでするのはパンクしてしまって当然です。とにかく、なるべく早くパパに分担してもらう必要があると思います。
でも、なっつんさんが直接言っても聞いてくれないんですよね? それであれば、まず身近に育児・家事をしている男性がいれば、その人に間に入ってもらって、なっつんさんがすでに限界であること、分担をすべきことを話してもらうのがおすすめです。
もしも僕がなっつんさんの旦那さんに会ったら、男だとか女だとか、父親だとか母親だとかいう前に、ひとりの人間として育児をすること、家事をすることは、とても大事だということを話したいなと思います。
僕は、育児をすると「人間」のことがよくわかってくるようになる、と思うんです。たとえば、赤ちゃんがなかなか泣きやまないときに、肌と肌を密着させると泣き止むことがある。これってスキンシップによって「物理的に愛が伝わる」からですよね。
こういうことは知識としてはわかっていても、実際に体験しないと深く理解できないと思います。社会人になって初めて、根性とは「スタミナがあること」や「叩かれてもやめない粘り強さ」であることがわかるように、育児をして初めてわかることはたくさんある。
だから、パパとママ両方いるのであれば、ママだけに独占させてはもったいないということです。しかも、子どもと愛着関係を築けて初めてわかる幸せもあります。
育児と家事は区別できないもの
ところで、育児と家事は別々に語られることがありますが、僕は切り離せないものだと思っています。子どもにご飯を食べさせるために、食材を買って、メニューを決めて、調理をすれば、それらのすべてが家事であり、育児でもあるでしょう。
洗濯だって同じです。子どもって特定の服を気に入って、毎日着たがる時期がありますよね。うちの子は今、「チンアナゴ」の絵柄の靴下が大好き。だから僕は帰宅したらすぐ、ウタマロ石けんでササッと洗って干しておきます。これも家事であり、育児ですよね。
僕は、子どもがこだわりを持つようになること自体、また子どもが発達している段階であること自体が子育てのおもしろいことだと感じているので、観察しない手はないと思うんです。そして子どもの気持ちに応えて靴下を洗っておいてあげる。日々育児をしていると、子どものニーズを察することができるようになるし、マルチタスクが上手くなります。
さらに育児と家事を効率よくしようと工夫しているうちに、上手に順番を組めるようになり、タイムマネジメントも確実に上手くなる。マルチタスク、タイムマネジメント、どちらも社会生活で使えることです。
僕は、育児をすることで政治や社会情勢、環境問題などに関心を持つようにもなりました。だから、育児には興味の幅を広げていくことができるというメリットもあるんじゃないかなと思います。これもまた、社会人としてプラスです。
残念ながら、パートナーが育児や家事をするようになる「魔法の言葉」は存在しないと思います。自分を変えることはできても、他人を変えることは難しいと思うんです。せめてできるのは、「こういうメリットがある」ということを相手に伝えることじゃないかなと思います。
倒れてしまう前に助けを求めて!
一方、育児の大変さって、わかってもらいづらいものです。そのひとつは、「イヤイヤ」とか「(寝かしつけの)トントン」とか、育児用語がかわいい響きだからなのかもしれません。「登山」と言うと大変そうなのに、「ハイキング」と言うと楽しそうに聞こえるのと同じような感じです。
実際の育児は、大変なもの。まして家事も仕事もひとりで背負っていたら、体を壊したり、うつ病になったりしてもおかしくありません。本当に倒れてしまう前に、パパにも周囲にも大変さを伝えて、助けを求めてください。
ただ、大変さを言葉で伝えるだけでは、わかってもらえないかもしれません。一番いいのは、お子さんの安全を確保できそうであれば、なっつんさんが数時間でも家を留守にして、パパにひとりで育児と家事をやってもらうことです。
僕はこの連載で何度も話していますが、妻が留守のときにひとりで3時間ほど子どもの世話をして初めて、育児の本当の大変さを知り、「なんでこんなに大変なことを妻ひとりに押し付けていたんだろう」と思って目が覚めました。
もしもパパが家事や育児をやる気になったら、最初はできるだけ簡単なことからやってもらってください。パパが嫌がっている洗濯は後回しにしましょう。皿洗いでも、おむつを替えることでも、ゴミをまとめて捨てることでも、なんでもいい。ひとつずつ得意な家事や育児を作っていけば、そのうちになんとか回るようになると思います。
万が一、パパがどうしても「育児や家事はできない」と言うのであれば、せめてハウスクリーニングや宅配食、ベビーシッターなどの外注費を負担してもらうという手もあります。働きながら家事・育児をひとりで背負っているなっつんさんにとって、そのサービスを利用する資格があると僕は思います。
今回の結論!
古坂大魔王さんプロフィール
1973年7月17日生まれ。青森県出身。1992年にお笑い芸人「底ぬけAIR-LINE」でデビュー。現在は、芸人、音楽プロデューサーのほか、文部科学省・CCC大使、総務省・異能vation推進大使を務めるなど、マルチな才能を活かして活躍中。2児の父。NHK Eテレ『すくすく子育て』をはじめ、多数のバラエティ・情報番組に出演中。プロデュースするピコ太郎の公式YouTubeチャンネル内に幼児向けコンテンツ「ピコスタキッズ」を開設した。
ピコ太郎のYouTubeチャンネル『-PIKOTARO OFFICIAL CHANNEL-"PIKO ST KIDS"』
Twitter @kosaka_daimaou
(取材・文:大西まお、撮影:天田輔[インタビュー]、佐藤登志雄[タイトル・結論]、編集:マイナビ子育て編集部)