昭和生まれは無理? 子どもと一緒にマイクラを楽しみたい時、やるべきこと|子どもの能力が伸びるマイクラ#3
最近では学校教材にも採用されるマインクラフト。「だったら子どもにやり方を教えねば!」と意気込む人もいるようです。逆に、「ゲームは子どものもの。大人なんかが入り込む余地は…」と尻込みする保護者も。親はマイクラにどう向き合えばいいのでしょうか。
今回は、「マイクラおじさん」こと、日本初のプロマインクラフター・タツナミシュウイチ氏による初の著書『子どもの能力が伸びるマインクラフトの使い方』(ポプラ新書)より、マイクラと子育てについての解説をお届けします。
この記事の著者
タツナミシュウイチ さん
(プロマインクラフター/東京大学大学院客員研究員/常葉大学客員教授)
マインクラフトで見る子育ての原点と教育
ゲームなんだからとにかく一緒に楽しんで!
この本を手に取ってくださった多くの大人の方は、とても真面目で、子煩悩な親御さんに違いありません。お子さんが興味を持っている、あるいは、評判のいいマインクラフトについて知り、学びたいという気持ちをお持ちなのだと思います。しっかりと予習をし、我が子を導いてこそ親だという自覚もおありなのだと思います。
でもだからこそ、そんな親御さんに伝えたいことがあります。
マインクラフトについては、学ぶ前にまず、遊んでください。楽しんでください。学ぶ時間があるのなら、お子さんと一緒にマインクラフトの世界に浸ってください。
マインクラフトは教科書でも問題集でもありません。大人が解き方を指南したり、ヒントを出したり、正解に導いたりする必要はありません。そもそも、正解がありません。だから、教えることはできないですし、教えようとしなくてよいのです。
自分自身が子どものころを振り返ると、まわりの大人は子どもである自分に何かを「教える」存在でした。大人と子どもは上下の関係にありました。当時はそれが当たり前だと思っていましたが、だからこそ、教わったことがうまくできないと申し訳ないなと思ったり苛立ったりしてしまったのだと思います。私自身は、英語学習でそう感じたことがあります。
でももし、大人と一緒に英語を学ぶのであったなら、どうだったかなと思います。絶対に違っていたはずです。
大丈夫です。予習せずにマインクラフトを始めても、TNTでパソコンが爆発したりダイヤを見つけるために高額な追加費用を請求されたりすることはありません。マインクラフトは、「習うより慣れろ」を実践できる場です。
そもそも昭和生まれが教えられると思ってはいけない
親御さんは、マインクラフトをお子さんに教える必要なし!
そう言われても、子どもが困るようなことがあれば教えてあげたいと思う親御さんもいるでしょう。
でも、ちょっと待ってください。そもそも、マインクラフトは私ですらまだ極めていない部分もたくさんあり、ましてや触れたことがない大人が少し解説書を読んだからといって手取り足取り教えられるほどに浅いプラットフォームではありません。実は非常に奥が深いものなのです。
ちょっと言葉が強すぎたかもしれませんが、でも、考えてみてください。
ご自身が子どものころ、どんな遊びが流行っていましたか?
ファミコンですか? バーコードバトラーですか? クレーンゲームですか? ニンテンドーDSですか? トレーディングカードですか?
こういう遊びを、大人から教わったこと、あるでしょうか?
将棋や囲碁、折り紙やあやとりなら、大人から教わったかもしれません。なぜならそれは、私たちの親世代も知っている、親世代のほうがよく知っている遊びだからです。
でも、皆さんが子どものころに流行り始めた、夢中になった遊びは、親からは教わっていないはずです。むしろ、大人はその遊びのことをよくわかっていなかったはずです。
そうした親のことを責めるつもりはありません。自分の子ども時代になかった遊びのことは、よくわからなくて当たり前だからです。
ですので、今、親御さんがマインクラフトのことをよくわかっていなくても当たり前です。教えられなくて当然です。私のようなマニアックな人間を除いて、昭和や平成の初期に生まれたほとんどの大人はたいてい、マインクラフトを教えられないのです。
それは、今の多くの親御さんが国語や算数は教えられても、プログラミングは教えられないのと似ています。それは仕方ないです、学校で習ってこなかったのですから。もちろんプログラミングを仕事や趣味としている人は別ですが、それはあくまで例外です。
大人というものは、大人になってからこの世に登場した子どもの遊びのことは教えられない。これは、いつの時代も変わらない真理ではないでしょうか。
ですから、マインクラフトをお子さんに教えようとしなくて大丈夫です。そんなに頑張らなくても大丈夫です。むしろ、なんでもすぐに吸収する時期のお子さんから、皆さんが学ぶくらいでちょうどいいはずです。「マイクラおじさん」を自称する私も、すぐに追い抜かれるだろうなと思いながら、お子さんたちと接しています。だから私は、お子さんたちとはできるだけ敬語で話します。そのうち私の師匠になるかもしれない方に対して、敬意を払いたいからです。
親は伴走者であってほしい――無関心はダメ
お子さんにマインクラフトを教えられない親御さんでも、伴走者になることはできます。
伴走者とは、ランナーであるお子さんをリードする立場ではありません。先回りして完璧なガイドをする必要はありません。「これってどうするの」と聞かれてもわからなければ、「わからない」と正直に答えてもらってまったく問題ありません。
ただ、伴走者はランナーを放っておく立場でもありません。孤独にしてしまうのはちょっと違います。お子さんが自分のペースで進んでいくのを、そばで見守る立場です。
私はよく、マインクラフトのセミナーや教室に講師として伺います。そこにはたいてい、マインクラフトが大好きなお子さんとその親御さん、または、マインクラフトの教育効果に興味のある親御さんとそのお子さんが来ています。
お子さんが手を動かし始めると、一緒になって画面を覗き込む親御さんもいます。
一方で、お子さんから外した視線をスマホに注ぎっぱなしの親御さんもいます。
日々、子育てに全力投球の親御さんが息抜きでスマホを見たいというのは理解できますが、でも、できればお子さんが何をしているのか、見ていてほしいなと思います。
見ているだけでいいです。ああしたほうがいい、こうしちゃダメといったアドバイスはいりません。ただただ、お子さんがマインクラフトという世界で何をしているのか、何を表現しようとしているのかを見守ってほしいです。
そして、帰る途中や帰ってから「何が楽しかった?」と尋ねて、話を聞いてあげてほしいです。
※『子どもの能力が伸びるマインクラフトの使い方』(タツナミシュウイチ著、ポプラ新書)より一部抜粋・再編集