天気に左右される体調、この症状は当てはまる? 気象病の可能性を判定する「18の質問」|気象病ハンドブック#1
なんだか体調が悪くて、天気予報を見て「ああ、なるほど」と納得する……そんな人、いませんか? 気圧などの変化によって頭痛やだるさなどが起こることがあります。
本記事では、気圧予報・体調管理アプリ「頭痛ーる」監修医師である久手堅司先生(せたがや内科・神経内科クリニック院長)の著書『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)より
✅ 気象病ってなに?
✅ つらいのは気圧のせい?
などの疑問についての解説をお届けします。また、片頭痛のセルフケア方法も要チェックですよ!
梅雨や台風の時期になると、体調が悪くなる方はいませんか?
天気予報を見なくても、雨が降ることを予測できてしまう方はいませんか?
最近、「気象病」や「自律神経」という言葉が広まってきたと感じています。私が気象病専門外来を開設して約6 年になりますが、気象病に悩みながら、周囲に理解されないことにも苦しむ患者さんを多く診てきました。そのため「気象病がやっと認知されてきた」という気持ちは大きく、「気象病はきちんと原因のある不調であり、原因があれば対策もある」ということをより多くの方々に知ってほしいと考えています。
気象病とは、気圧や気温、湿度など、気象変化によって引き起こされる心身の不調のことをいいます。最近では、気圧を予測するアプリなどが普及していますが、それだけ気象(特に気圧変化)によって体調が左右されてしまう方が多いということだと思います。気象病に特徴的な症状は、頭痛や倦怠感、めまいなどですが、症状は本当に人それぞれで多岐にわたります。
先ほども述べたように、気象病はなかなか周囲に理解してもらえません。気象病外来に来られる患者さんのほとんどが、「気にしすぎ」「精神的なもの」「休めば治るから」などと言われた経験があるそうです。症状が多種多様なのも、理解されない理由の1 つでしょう。また、メンタルにも影響をきたすことが多いため、精神的なものと決めつけられてしまう傾向にあります。しかし、気象病は患者さんの心の問題などではなく、気象変化という原因のある不調です。そのため、気象変化にとらわれすぎず、自ら不調を増やしていかないことも大事です。
気象病チェックリスト
①天候が悪い時に体調が悪い。
②雨が降る前や天候が悪化する前に、何となく天気の変化が予測できる。
③頭痛持ち(緊張型頭痛、片頭痛など)である。
④首こり、肩こりがある。首肩の持病や不調がある。
⑤めまいや耳鳴りが起こりやすい。
⑥倦怠感が強い。起床時、日中も常にだるい。
⑦低血圧気味である。血圧が低くなると体調不良が出る。
⑧精神的な不調(不安障害、適応障害、抑うつ、統合失調症など)がある。
⑨姿勢が悪い。猫背や反り腰がある。
⑩古傷があり、時折痛みが出る。
⑪原因不明の動悸や消化器の不調がある。
⑫パソコンやスマホの使用時間が長い(平均4 時間/日以上)。
⑬乗り物酔いをすることが多い。
⑭運動習慣がなく、ストレッチや柔軟体操をすることが少ない。
⑮歯の食いしばりや歯ぎしり、歯科の治療歴が多い。
⑯温度設定が一定の場所(夏は冷房、冬は暖房)にいることが多い。
⑰日常的に、主にメンタル的なストレスを感じることが多い。
⑱更年期障害ではないかと考えることがある。
判定結果
判定1 ①と②に該当する人は、高確率で気象病と考えて良いでしょう。どちらか1つでも当てはまると、気象病の可能性は約80%です。
判定2 ①②以外の項目は、該当する数が多いほど気象病になるリスクが高まります。特に③~⑪は気象病の方が訴える典型的な症状です。また、③~⑱のうち、5項目以上に当てはまると、気象病の不調が起きやすいです。ただし、該当する項目が多い場合でも、必ず気象病というわけではありません。
つらいのは 気圧のせい?
Q. 何年も前から、原因不明の体調不良に悩んでいます。 これって気圧のせいですか?
気象変化が起きた時に特に不調を感じるのなら、気圧や気温の影響である可能性が高いでしょう。次のようなことはありませんか?
・雨が降っている時よりも、雨が降る前や降った後の方が症状が出やすい。
・台風やゲリラ豪雨が発生した時、標高の高い所に移動したり、高速エレベーターに乗ったりした時に症状が出る。
・職場や自宅が建物の高層階に引っ越ししてから体調が悪い。
これらに該当すると、気圧が影響しているかもしれません。しかし、原因不明の体調不良がすべて気圧のせいとは限りません。まずは医療機関で、原因がどこにあるかを検査することが大切です。
具体的に、どんな症状があると気象病かもしれないんですか?
「気象病チェックリスト」にある症状(頭痛、全身の倦怠感、首肩こり、めまいなど)や、何となく体調が悪い状態が続いている方で、病院で検査をしても異常が見つからず、「自律神経の乱れ」「心身のストレス」「気のせいでしょう」「不定愁訴ですね」などと言われた場合は、気象病や自律神経失調症が考えられます。
不定愁訴とは、明らかな身体的原因が認められないにもかかわらず、頭痛や倦怠感など様々な症状を訴え続けることをいいます。こうした原因不明の体調不良は、症状が1 つではなく複数に及ぶ場合がほとんどで、症状が多いほど原因の特定が難しくなります。
一方、少数派ですが単独の症状が出る場合もあります。例えば、めまいは、耳鼻科で検査をしても異常がなく、頭部MRI や頚椎MRI、レントゲンなどでも異常が見つからず、原因不明と言われることが多いようです。全身倦怠感も、内科で検査をしても原因がわからないことが少なくありません。
気圧のせいかどうか、自分で見分けることはできますか?
見分けるポイントが1つあります。それは、いつも体調が悪いのか? それとも体調に波があり、気象変化によって悪化するのか? ということです。気圧のせいで体調不良を起こす方は、雨が降る前や寒暖差が大きくなるタイミングで不調になります。常に体調が悪く、あまり変動がない場合は、気圧のせいではないかもしれません。
私は常々、体調不良には必ず何かしらの原因があると考えて診療を行っています。症状があるからには、その原因になっているものを少しでも見つけ、適当な処置をしたいものですね。
今すぐできるセルフケア|片頭痛
気象病と片頭痛の関わり
片頭痛の症状は、吐き気や嘔吐、動くとひどくなる、血管がドクドクする、音や匂いや光などで悪化する、鎮痛薬が効きにくい、といったつらいものです。片頭痛の患者さんは気象変化を過敏に察知する方が多く、雨が降る前の気圧が下降する時に症状が最も強くなります。また、頭痛がつらくて動くことができない、一日中寝込んで過ごしているなど、重い症状に悩んでいる方も多くいらっしゃいます。
片頭痛の投薬治療では、鎮痛薬、トリプタン(片頭痛の治療薬)、予防薬などの選択肢があります。気象病で片頭痛を持っている方は、これらの薬をひと通り使用したことがあるという方が多いです。ただ、一般的に気象変化時にはあまり効果がないことが多く、気象変化と頭痛の関連性を認めてもらえなかったというケースもあります。
漢方薬の五苓散は、頭痛に適応があるので使用される頻度は高く、効果も認められています。気象病で片頭痛の方は、まず使用することを検討してみても良いでしょう。
顔まわりのマッサージ
片頭痛のケアでは、顔まわりのマッサージで筋肉のこりをほぐします。緊張型頭痛のセルフケアも併せて行うと効果的です。
片頭痛から首肩こりの症状も
私が診察で重視しているのは、片頭痛と首肩こりが同時にあるかどうかです。片頭痛が首や肩から始まるという場合は、触診をした時に、首肩に違和感(痛みやこり、左右差)を訴えやすいです。右肩が痛いと頭の右側に、左肩が痛いと頭の左側に痛みが出やすいです。自分の指で触ってみるとわかることも多いので、確かめてみてください。
参考:一般社団法人日本頭痛学会「国際頭痛分類 第3版」
『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(久手堅司 著、誠文堂新光社)より一部抜粋・再編集
マッサージ写真 撮影:もろだこずえ、モデル:杜野まこ
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「頭痛ーる」監修医師が教える
自律神経が整う症状別のセルフケア
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気圧や気温、湿度など、気象変化に伴う体調不良(=気象病)を訴える人が増えています。その数は全国で1000万人とも。梅雨の時期に頭が痛くなったり、台風が近づくと耳鳴りがしたり…何となく思い当たる症状があるかもしれません。天気だけでなく、気圧の予報も気にする時代。私たちにとって、気象病はより身近な存在となってきました。しかし、その実態はいまだ謎めいています。それどころか、十分な予防対策も知られていないのです。
この本には、次のような特徴があります。
◎5000名以上の気象病患者を診てきた専門医によるカウンセリングを紙上で体験できます。
◎症状が出るタイミングや体の部位など、気象病の全体像を知ることができます。
◎不調の原因がわかり、痛みに応じたセルフケアを実践できます。
不調を和らげるヒントは自律神経にあった! 読むと少しラクになる、気象病に悩むあなたのためのハンドブックです。