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2024年05月16日 06:16 更新

「休んでも疲れてる」「なんとなく不調」これは自律神経の乱れ? 専門医に聞く対処法 |気象病ハンドブック#3

毎日忙しく暮らす中で「休んでも疲れが取れない」となると、仕事にも生活にも影響を及ぼします。その原因、もしかしたら「自律神経の乱れ」かもしれません。

前回の「気象病のピーク」に続き、気圧予報・体調管理アプリ「頭痛ーる」監修医師である久手堅司先生(せたがや内科・神経内科クリニック院長)の著書『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(誠文堂新光社)より
✅ 自律神経って何?
✅ 自律神経の乱れとは?
✅ 休んでも疲れが取れないのはなぜ?

などの疑問についての解説をお届けします。

そもそも、 自律神経って何?

※画像はイメージです

Q. 最近、「自律神経」っていう言葉をよく聞きます。 そもそも、自律神経って何ですか?

自律神経とは、生命を維持するために、自分の意思とは関係なく自動的にはたらいている神経のことです。呼吸や循環(血圧や心拍)、消化、排せつなどが上手く機能するように24 時間調整するはたらきをしていて、生命活動の維持に不可欠なものです。

神経は、大きく分けて中枢神経と末梢神経の2種類があります。このうち末梢神経は、体性神経を構成する運動神経・感覚神経と、自律神経を構成する交感神経・副交感神経の4種類に分かれます。人体の司令塔となるのが、脳と脊髄から構成されている中枢神経です。そして、中枢神経からの指令を全身に伝えるのが末梢神経です。末梢神経は、四肢の末端、皮膚にまで全身に分布しています。

中枢神経と末梢神経は、一方的な関係ではありません。中枢神経からの指令は末梢神経が全身に伝え、末梢神経が全身から受け取ってきた情報は中枢神経へと反映されます。

体性神経って、はじめて聞きました。どんなものなんですか?

体性神経は、自分の意思でコントロールしたり、体の動きを感じたりすることのできる神経です。そのうちの運動神経は、自分で動かそうとして動く部分に関係します。感覚神経は、痛い、冷たい、触れているなどの知覚情報を中枢神経へ伝えます。

自律神経は主に、活動時は交感神経、休息時は副交感神経というように、2つの神経がバランスを取りながらはたらいています。自律神経は脊髄を経由しており、脊髄はケーブルのようにつながっている神経の束です。脊髄を保護しているのが背骨なので、自律神経にとって背骨はとても大切な存在です。

自律神経は、その名の通り自律しているため、自分の意思ではコントロールすることが難しいです。自律神経が24時間365日休まずはたらいてくれているからこそ、様々な状況にオートマティックに対応して、私たちの生命活動は維持されているのです。

自律神経について、もっと詳しく知りたくなりました。

では、自律神経のはたらきについて、わかりやすく説明しましょう。走った直後は、心拍数が上がって血圧も上がり、汗をかきますね。これは交感神経のはたらきです。それからしばらく経つと、心拍数と血圧が下がります。汗も引いていきますね。これは副交感神経のはたらきです。こんなふうに自律神経は、全身の機能に対してはたらき続けています。自分のために、ここまでがんばってくれているなんて、すごいと思いませんか?

なるほど! 自律神経と気象病は、どんな関係があるんですか?

気温が上昇した時は、汗をかいて体温を下げなければいけません。一方、気圧が下がった時は、体と大気圧のバランスを保つために自律神経がはたらく必要があります。自律神経が上手く機能していないと気象変化に対応しきれず、不調が出やすくなってしまいます。このように、気象変化に合わせて自律神経がはたらいているため、自律神経は気象病と切っても切れない関係にあります。だから気象病を理解するためには、自律神経も理解しておかなければなりませんね。

自律神経の「乱れ」とは?

Q. 自律神経が乱れているという時の「乱れ」とは、どんな状態をいうのですか?

心身への負担が限界を超えてしまうと、自律神経ははたらきすぎて、オーバーヒートしてしまいます。そうなると、交感神経と副交感神経のどちらか一方だけが極端に優位になります。自律神経は適切にスイッチを切り替えることが重要ですが、それができなくなると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れます。これを「自律神経が乱れている状態」といいます。

なるほど。自律神経が乱れることによって、いろいろな不調が出るということでしょうか?

複数の不調が出ている場合、私は「自律神経が乱れている」と説明しています。逆に、頭痛という1つの不調だけを訴える場合は、すぐに「自律神経の乱れ」とは言いません。

ここで忘れてはいけないのは、「原因のはっきりしない不調が出ている」ということです。「自律神経が乱れている」と言いきるには、検査をして異常が認められた症状に対して、原因がはっきりしない状況である必要があります。例えば、動悸や不整脈の原因が心臓にあったり、全身倦怠感でも甲状腺機能障害や貧血などが原因であれば話は別、ということですね。

自律神経が乱れると、様々な症状が出る。

具体的には、どんな症状が出やすいんですか?

例えば、動悸や不整脈、呼吸苦、全身倦怠感、吐き気、胃痛などの上部消化管の不調、下痢や便秘などの下部消化管の不調、頭痛、首肩こり、めまい、手足のしびれ、低血圧・高血圧、頻脈、不眠、抑うつ、不安などです。このように、自律神経が乱れた時の症状は多岐にわたります。そのため、不定愁訴があると、「自律神経が乱れている」という状態に該当してしまいます。一般的に、患者さんも医療従事者も、何らかの不定愁訴があると「自律神経が乱れているから」と考えがちです。しかし、それは違います。すぐに自律神経のせいとは決めつけず、まずは明らかな原因がないかどうかを探すことから始めましょう。それが、回復への近道なのです。

原因不明の不調=自律神経の乱れというわけではないんですね。

少し専門的になりますが、自律神経の乱れと間違われやすい病名や症候群を以下にご紹介します。更年期障害、過換気症候群、起立性調節障害、体位性頻脈症候群、機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)、過敏性腸症候群などです。特に更年期障害は、自律神経が乱れた状態の症状とほぼリンクします。更年期障害を診断するには、婦人科での専門的な検査が必要です。そのため、まずは婦人科の検査で異常がないことを確かめていただくようにお伝えしています。

休んでも疲れが 取れないのはなぜ?

※画像はイメージです

Q. 疲れていると思って休んでも、疲れが取れなくて…。 どうしたら良いでしょう?

「休んでも休んでも疲れが取れません」。私のクリニックでも、この相談はとても多いんですよ。

寝るだけで疲れが回復する場合には、十分に自己回復できていると思ってください。休むことで回復するのは理想的です。しかし、自律神経が乱れがちな方は、睡眠の質が悪いため、休んでも上手く回復できないのです。

それには、交感神経と副交感神経のバランスが関わってきます。寝ている時に、副交感神経がしっかりと優位に立っていないと、睡眠が浅くなります。これは、活動モードである交感神経のはたらきが強いということです。その影響で、睡眠時にも交感神経が活発になり、なかなか休めません。また、気圧が下がると副交感神経が優位になり、睡眠リズムが乱れやすくなります。さらに骨格のゆがみがある場合は、自律神経はより乱れやすくなります。

睡眠の質がある一定以上に保たれていないと、「回復」という本領を発揮できません。そのため、自律神経が乱れていると、休んでも疲れが取れない状態を招くというわけです。

最近は仕事がめちゃくちゃ忙しくて…。やっぱり自律神経のバランスが崩れていたのかもしれません。

少しでも休息と回復を図るために、睡眠のお話をしましょう。

睡眠中は、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しています。レムとは、英語のRapid Eye Movement(急速眼球運動)のことです。

ノンレム睡眠は、脳も体も眠っている状態をいいます。レム睡眠は、脳は起きているが体は眠っている状態です。この2つの睡眠のサイクル(1サイクル90~120分)が何回か来て、目覚めに至ります。

大切なのは、最初に訪れるノンレム睡眠です。眠りにつくと、最初に一番深いノンレム睡眠がきます。この最初の90分の睡眠の質が高くないと、それ以降の睡眠も良いものにはならないとされています。また、最初のノンレム睡眠時に、最も多く分泌されるのが成長ホルモンです。成長ホルモンは、細胞の増殖や代謝を促進させる効果があります。つまり、大人になっても大切なものだということがわかりますね。

気象病の方も、自律神経が乱れている方も、睡眠の状況を把握することはとても重要です。ある程度の睡眠の質と時間を確保できていると、不調のリセットができるのです。

睡眠以外にも、疲れへの対処法はありますか?

もちろん、睡眠以外にも疲れを和らげる工夫はいろいろあります。

・朝起きたら日の光を浴びる。
 →体内リズムをリセットして、夜眠くなる体に近づけてくれます。

・栄養を摂る。
 →疲労回復効果のあるビタミンB群・C、ミネラルなどを積極的に摂ると元気が出ます。

・スマホやパソコン、デジタル機器の使用を控えて、自然とふれあう。
 →脳を酷使すると疲労感が増えます。時々デジタルデトックスをして頭を休めてあげましょう。

これらは一部ですが、睡眠を見直すだけでなく、疲労を溜めすぎない、疲労につながる要因を減らす工夫から始めてみましょう。それが自律神経を整えることにもつながってきます。

参考:『スタンフォード式 最高の睡眠』西野精治著 サンマーク出版

『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(久手堅司 著、誠文堂新光社)より一部抜粋・再編集
イラスト:植松しんこ

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「頭痛ーる」監修医師が教える
自律神経が整う症状別のセルフケア
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気圧や気温、湿度など、気象変化に伴う体調不良(=気象病)を訴える人が増えています。その数は全国で1000万人とも。梅雨の時期に頭が痛くなったり、台風が近づくと耳鳴りがしたり…何となく思い当たる症状があるかもしれません。天気だけでなく、気圧の予報も気にする時代。私たちにとって、気象病はより身近な存在となってきました。しかし、その実態はいまだ謎めいています。それどころか、十分な予防対策も知られていないのです。

この本には、次のような特徴があります。
◎5000名以上の気象病患者を診てきた専門医によるカウンセリングを紙上で体験できます。
◎症状が出るタイミングや体の部位など、気象病の全体像を知ることができます。
◎不調の原因がわかり、痛みに応じたセルフケアを実践できます。

不調を和らげるヒントは自律神経にあった! 読むと少しラクになる、気象病に悩むあなたのためのハンドブックです。

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