子どもの気持ちを理解したいとき、「親らしく」を意識するよりもこのほうが近道。『ホームレスパパ #2』
麒麟・田村裕さんが子どもたちと接するとき、意識していることとは?
10歳と8歳の女の子と、4歳の男の子を夫婦で育てる田村さんが綴った新刊『ホームレスパパ、格差を乗り越える 何も変わらなかったから考え方を変えた』(KADOKAWA)から一部をお届け。
第二回は、家族の「解散」経験を持つ田村さんならではの視点で、子どもたちに接するときに意識していることについて。それは、自分自身が幼少期にどう感じていたかを思い出すということでした。
子供の気持ちを理解するためには子供の時を思い出せ!
これはもしかしたら、僕が特殊な環境で育ったから、特殊な記憶になってしまっているのかも知れません。
まず、父親が変わり者(『ホームレス中学生』参照)でほとんど喋った記憶がなく、思い出の数が少ない。
母親は僕が11歳の時に他界、父親とは14歳で解散して親との思い出が少なく、一つ一つが色濃いので「お父さんのあの言い方嫌だったな」とか「お風呂で体を洗われている時、力強くて痛かったな」とか「優しく言うてくれたらこっちも頑張れたのにキツく言われて反骨心が芽生えちゃって素直に聞けなかったな」とか憶えているので、子供の気持ちに寄り添いまくって嫌にならないように気を付けて接しています。
僕も体を洗う時につい力が入ったりはしてしまいますが、その辺はご愛嬌で、咄嗟に叱りたい時も言葉の選び方に気を付け、会話が増えるように興味のないものでも興味を持ち、親の都合や勝手なルールを説明もなしに守れとは言わず、なぜそうしてほしいのか理由を説明し、共感出来るかを確認します。
どうしてもわからないと言われたら、押し付けるのはやめて、また話し合おうと言って保留します。
長女に叱ったことを保留中に、次女が同じことをして客観視が出来るチャンスが巡ってきて、そばで見ていて嫌な気持ちになったから自分もやめると話がまとまることもありました。こんな流れです。
「『お前』って言わない方が良いと言われるけど、なぜダメなのか自分の感情をコントロールするのが難しい。『お前』と言われたら言い返してしまう」と長女。僕は、そういう言葉を使うと自分の価値が下がるから言わない方が良い、相手が使っていたらなおさら同じレベルに降りて戦わない方が良いと言ったのですが、意味がわからないと言われて保留しました。
その後、次女が「お前、お前」と言っていたので、それを言われた長女にどう思ったか聞いたら、良い気持ちにはならないと。自分の価値が下がるって意味が少しわかったかもと言って、むやみには言わなくなりました。たまには言うてます。そういう逞しさもほしいので、それには目を瞑っています。「お前」の無駄遣いは無くなりました。
子供の時の自分が、どんな気持ちでそういう言葉を使っていたかをイメージすると、子供が理解しやすい言い方や接し方が見つかります。親だから「親らしく、親らしく」と思ってしまいますが、子供の時の自分の気持ちを思い出してみた方が近道かも知れません。
子供時代にトラウマがある方は、この話は聞かなかったことにしてください。
まずは自分の心が健康的であることが最優先です。
麒麟 田村裕さん/芸人
1979年生まれ。大阪府出身。1999年、川島明さんと共にお笑いコンビ・麒麟を結成。2001年に『第1回M-1グランプリ』で決勝に進出し、2003年から2007年まで『M-1グランプリ』決勝戦に連続出場。2007年、自伝的小説『ホームレス中学生』(ワニブックス)がミリオンセラーに。現在は麒麟としてバラエティ番組などに出演するほか、俳優としても幅広く活躍。芸能界を代表するバスケ通で、関西を中心にバスケットボール教室をプロデュースしている。2011年に一般女性と結婚、10歳と8歳の女の子、4歳の男の子のパパ。
Instagram@hiroshi9393
YouTube 麒麟田村のバスケでババババーン!
(写真:本人提供 構成:マイナビ子育て編集部)
※本記事は、『ホームレスパパ、格差を乗り越える 何も変わらなかったから考え方を変えた』著:田村裕/KADOKAWA より抜粋・再編集して作成しました。