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2025年05月30日 10:31 更新

片づけの時間、自閉症の僕だけ動かなかった。そのとき幼稚園の先生がかけてくれた言葉|だから毎日、幼稚園に通えた #2

作家で自閉症の東田直樹さん。会話が難しかった幼稚園時代に感じたことをエッセイで公開しています。

◆自閉症の作家が綴る幼稚園時代の日常

『自閉症の僕が跳びはねる理由』で知られる作家の東田直樹さんによる幼稚園時代のエッセイ。会話が難しい自閉症児だった著者の視点から幼稚園の世界を見ることができます。
保育者のお悩みに答えるQ&Aも収録され、保護者も保育者・支援者もほっと一呼吸できる1冊です。

今回は、「みなさんお片づけ」の1編を書籍『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』(世界文化社)から一部抜粋してお届けします。

みなさんお片づけ

園庭に、手まりみたいなまん丸い紫色のアジサイの花が咲きました。

しとしと雨が降り続いても、子どもたちは元気いっぱい。積み木やパズル、絵本を広げ、ワイワイ、ガヤガヤ、保育室で遊びます。あちらこちらで楽しそうな笑い声。

「朝の会」が始まる時間になると、先生がピアノを弾いてくれます。

ファファファソラー♪ファファソラー♪ソファソララドシララソソファ♪この音楽が流れてきたら、おもちゃや絵本を元の場所に戻さなければいけません。「お片づけ~お片づけ~さあさみなさんお片づけ~♪」。先生の歌声が、保育室に響き渡ります。

みんなは、机の上や床にある絵本やおもちゃを、次々に棚に戻します。だけど僕は、ひとりだけ時間が止まったように動きません。なぜなら、聞こえてくる音に聴き入ってしまうからです。音楽が流れてきたら、体全部が耳になるのです。音楽を聴きながら何かをすることが苦手です。

イメージ画像
※画像はイメージです

僕のお片づけは、先生の歌が終わってからが本番。じっとしている僕のそばに先生が来てくれます。「これは、どこに片づければいいかな?」。

それでも僕は動きません。今度は、先生の言葉に耳を傾けているからです。

先生の声は、いつも明るく元気です。保育室のどこにいても聞こえます。

僕に直接話しかけてくれる時の先生の声は、お母さんみたい。
「ここだよ」と先生に言われて、そこにおもちゃを置きます。「よくできました」。先生が、僕の頭をなでてくれました。

灰色の雲のすき間から光が差しています。
「雨やんでいるよ」「ほんとだ」。みんながいっせいに空を見上げます。僕だけは下を向いて、ポタポタと屋根から落ちるしずくに見とれていました。

イメージ画像

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この続きは、是非書籍でご覧ください。

自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた
(2025/05/30時点)

※本記事は、『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』著:東田 直樹/世界文化社より抜粋・再編集して作成しました。

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