「仕事ってこんなにあるの!?」中学生が驚いたキャリア教育カードゲーム授業に密着
座学になりがちなキャリア教育を、遊びながら深く学んでほしい。そんな思いから、マイナビではカードゲームを使った出張授業を、全国の中学校で行っています。練馬区立石神井東中学校を訪ね、中学生たちがゲームを通じて“業種連携”を体験し、仕事と社会のつながりを実感する様子を取材しました。
キャリア教育が楽しく学べるカードゲームに、興味津々な中学生
3月5日の午後、キャリア授業が行われたのは、東京・石神井東中学校の1年生全5クラス(165人)。そのなかの1クラスにおじゃますると、生徒は4人1組の班を作り待機中でした。
カードゲーム一式が、各班に1セットずつ配布されます。これから、1時間目はカードゲームを、2時間目は振り返りの授業が行われます。
このカードゲームは、マイナビが50周年記念事業の一環となる取り組みとして、NPO法人企業教育研究会(千葉県)と共同で開発した、キャリア教育のためのオリジナルカードゲーム教材『カードゲームで学ぶキャリア図鑑』です。
2024年7月から全国の中学校へ無償での出張授業を開始し、2026年1月時点で40都道府県、93校で実施、総勢8,232人の中学生が参加しています。
講師が「みなさんは普段、カードゲームをやりますか?」と聞くと、「昨日学校でかるたをやった」「英語のカードゲームがある」など教えてくれる生徒たち。
続けて「キャリアってわかりますか?」と聞く講師。「大きな人生ストーリーをイメージしてもらえたらわかりやすいかと思います」と説明し、「人生のストーリーの中で、“仕事”というものは大きな要素。今日は、自分に合う職業を探すためにこの授業を活用してもらえるとうれしい」と話します。
このカードゲーム、「キャリア図鑑」と名前がついているとおり、ゲームを通してたくさんの職業を知ることができます。
「みなさんが将来仕事を探すとき、選ぶとき、自分が知っている中からしか選べない。つまり、自分がどれだけ仕事を知っているかで、みなさんの未来の選択肢が変わってくるのです」
と、講師が、このカードゲームの意義を教えてくれました。
ゲームを前に、まずは解説アニメーションを視聴するとーー。
このゲームの舞台は、架空の自治体「まいひな市」。かつて鉱山で栄えていたものの、閉山により少子高齢化と人口減少が進んでいるといい、この状況を打破するために4人の市民が立ち上がり、さまざまな業種を連携させて“バーチャル鉱山”を充実させていくーーという設定です。
ゲームのルールをすぐに理解し、サクサク進める中学生たち
ここでは“設定”ですが、現実でも同じような問題が、全国各地で起こっています。
授業では、同中学校と同じ東京都練馬区にあって2020年8月31日に閉園した「としまえん」について、「その瞬間は、やっぱり、街から少し活気がなくなってしまったんですよね」という話が。2023年6月16日、跡地に「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が誕生しましたが、「そういったことがなかったら、元気にしないとまずいなということで、地域活性化プロジェクトが立ち上がったと思います」と、身近な例が紹介されます。
そして、こうした地域活性化には、さまざまな業種・職種がかかわっていることを、このカードゲームから具体的に学んでいくというわけです。
講師が生徒に訪ねます。
「みなさん、職業の種類って、どれくらいあると思いますか?」
「90」「100」「1000」
などの数字が飛び交いますが、解説アニメーションで「17,000以上の職種、100以上の業種がある」と明かされると、みなさん驚いた表情を見せていました。
さて、ゲームの舞台についてわかったところで、次はルール説明です。
各班1人ずつに異なる業種である4人の市民がそれぞれ割り当てられ、1人ずつ課題シートと向き合います。
そして順番にカードを引き、課題シートに沿って手持ちに加えるか否かを判断します。カードを課題シートに置くことができれば、1ポイントゲット。引いたカードをほかの人に渡すこともできます。
さらに、ポイントが得られるイベントサポートカードなどがあり、最終的に班のメンバーと協力してポイントを集めて、バーチャル鉱山を発展させるというもの。
聞いていると、なかなか難解に思えましたが……生徒たち、解説を聞いてすんなりゲームのルールを理解し、サクサクと進めていくではないですか。
「このカード、そっちで使えそう?」
「ポイントゲットしたよ!」
「こんなに捨てて大丈夫かな?」
「イベントサポートカードで2ポイントじゃん、やったー!」
「あとここに製造業のカードが引ければクリアしそう」
「防犯対策って、どの業種だろう?」
など、さっそく一喜一憂して楽しんでいます。
マイナビ社員も「子どもって、すごく飲み込みが早いんです。大人の方が難しいと感じますよね」と笑顔。
あっという間に1時間目が終了してしまいました。
「業種連携」のシミュレーションを体験して、社会を知る
2時間目は、ゲームの振り返りを踏まえ、業種を越えた連携や仕事を通じた多様な社会参画について学び、自己の生き方やキャリアを考えます。
今回はカードで実践しましたが、実際に長野県松本市では「ばーちゃるまつもと」としてこうした取り組みを行っていると、講師が解説します。
たとえば、「味噌蔵を再建して販売するという施策があった」とのこと。「味噌を作る仕事=製造業と、味噌蔵のCG画像を作る仕事=映像CG制作業、そして、味噌の販売サイトを運営する仕事、3つが協力して特産品である味噌の発信を行った」結果、「松本市を訪れる人が増えた」という成果があったそうです。
このように異業種で協力して施策を進めることを「業種連携」といいます。今日、生徒たちは、カードゲームを通じて「業種連携」のシミュレーションをしたのです。
先ほどのゲームで、生徒たちの“まいひな市”はどんな成果が得られたのか、ワークシートに記入していきます。
思い思いに自由に書き進めたり、見せ合いながら書いたり、すらすらと筆を進める生徒たち。教室を見まわしても、手が止まっている生徒はいないようです。
書き終えた後、班ごとに代表者1人による成果発表がありました。
「地産地消でコストが減りました」
「トラックを使うことにより、食材が予定通りに届いて仕事がうまくいきました」
など、班の個性が際立つさまざまな成果が発表されました。
ここでまた、講師が身近な例を出し、生徒たちを驚かせます。
「チョークについて調べた学校があるんです。チョークにかかわっているのは、何社くらいだと思いますか?」
生徒たちからは「5?」「10!」という声が。
「20社です。チョーク1本作るのに、こんなにもたくさんの業種がかかわっているんです」
という答えに「えーーー!」と、驚きの声で教室が沸いていました。
次に、4人の市民それぞれがどんな仕事をしたのかを班ごとに考え、発表していきます。生徒たちはそれぞれ積極的に意見を出し合い、情報を共有し合っていました。
自ら考え実践し、話し合ったことで理解が深まったからか、発表の内容は充実。
「工事や修理などを長い期間行ったことで業種同士の関係性が深まり、ホテルができたことで観光客が来て、地域の活性化につながりました」
「製造業で造った薬を小売業で売り、そのお店で"まいひなペイ”を使えるようにすることで、たまったポイントでものを買って地域活性化に繋がりました」
「CGを導入することでミュージアムのクオリティが上がり、ミュージアム近くの飲食店にも人が入り、賑やかになりました。そうするとミュージアムの偉い人の知名度も上がります」
それぞれの視点で自ら出した答えに、講師もスタッフも「なるほど!」「おもしろい視点!」「正直、みんなすごいなと思いました」と感心。
そして最後に、獲得したポイントを配分します。4つの業種にかかわるエリアにどのようにポイントを配分するかを、班でそれぞれ考えるのです。
「すべて大切な仕事だから」と均等に分けた班、「ここが抜きん出たほうが、一番地域が活性化しそうだから」とショッピングモールエリアにベットした班、「住みごこちがよくないと、そもそも人が寄ってこないから」とウェルネスエリアに多く振り分けた班、「もっとポイントがあれば、コミュニティエリアを増やして地域の人たちの交流を深めたかった」と話していた班もありました。
この発表を通じて、「仕事が活性化すると社会も盛り上がることを知ってほしかった」と講師が話します。
私たちの社会は、多くの仕事と人で成り立っているーーそうした事実をより実践的に学ぶことで、生徒たちは将来へのイメージがより鮮明になったようでした。
「仕事が1万以上あるなんて知らなかった」
2時間の授業を終え、生徒2人と進路担当教師の方にインタビューを行いました。
――まずは、今日の感想を教えてください。
生徒Aさん「1万以上の種類の職業があることを初めて知って驚いて、これからいろんな職業に出会っていきたいなと思いました」
生徒Bさん「私も驚きました。自分がいままでやりたいなと思っていた業種の中にも、まだまだ知らないものがあるんだなと、改めて感じました」
――ゲームの内容はいかがでしたか?
生徒Aさん「たくさんの職業が知れて、楽しみながら勉強できてよかったです」
生徒Bさん「カードゲーム式で、業種や職種を知ることで学びが深まりました」
――授業を通して、もっとも興味が惹かれたのはどの部分でしたか?
生徒Aさん「カードを引いて業種が揃ったときに、『この仕事ってこの業種なんだ!』みたいなことを知った瞬間です」
生徒Bさん「2時間目の振り返りで、『この仕事とこの仕事を合わせると、こうなるんだ』と繋がりがわかったとき、めちゃくちゃ学びになったなと思いました」
――先生にもお聞きします。今日の授業で、生徒たちの様子はいかがでしたか?
先生「カードゲームを通じて、非常に楽しく社会の課題を解決するために話し合ったり、アイディアを出し合ったりしていました。そんな中で、いろいろな職業や業種が社会を支えていることが実感できたんじゃないかと、生徒の様子を見て思いましたね。なによりみんな、純粋に楽しんでいました。中学生にとって"キャリア”はまだまだ先のことですが、中学生の段階でキャリア教育をすることの大切さを実感しました」
――仕事の前に高校受験がありますもんね。
先生「私自身進路担当ですが、中学生にとって親子ともに高校進学や受験に気持ちが向いていると思います。ですが、それは通過点なので、その先に就職があり、しかもそれを一生やっていくと決まるわけでもなく、社会人になってからも『自分は将来どんな仕事をしようか』『どうやって社会に貢献しようか』と悩んだりするテーマなんだよと伝えています。そういった広い視点で捉えられるような取り組みをしたいなと思い、その一環として『カードゲームで学ぶキャリア図鑑』を活用しました」
――どんな経緯で『カードゲームで学ぶキャリア図鑑』を採用したのでしょう。
先生「ひとつ上の学年からやらせていただいているんです。これまでも、2年生は職業体験があったり、外部の方に来ていただいての講習がありましたが、こういったゲーム感覚でキャリアを教えるのっていままであまりないかなと思い、去年から採用させていただきました。日頃の授業はメリハリがないようなところもあるので、こうして外部の方が授業を展開してくださるのは、とてもいい刺激になったと思います」
――昨年は『カードゲームで学ぶキャリア図鑑』をどうやって知ったのでしょうか。
先生「担当者がマイナビさんのホームページで見つけたことがきっかけです。講演となると寝ちゃったり、聞き慣れない言葉がたくさん出てきて話を整理するのが難しくて、退屈になってしまう生徒もいるんですが、昨年の担当者からは『カードゲームはそういった生徒も含めて主体的に共同的に取り組むことができてよかった』と聞いていました。それで、『ぜひ今年も!』ということになりました」
ゲームを通じてキャリアを学んだ子どもたちの目には、選択肢無限大の未来へのわくわくが宿っていたのでした。
(写真・文:有山千春、編集:マイナビ子育て編集部)
