「やってみたい」が形になる。「市民が主役」で動き出す、鯖江市のまちづくりが本気すぎた
「地域で何かやってみたいけれど、どう動けばいいかわからない」──そんな声に応える取り組みが、福井県鯖江市で行われています。鯖江市では、市内全10地区で策定された『地区まちづくり計画』を実行に移すため、専門家による講座と個別サポートを組み合わせた新しい支援体制をスタート。実践を後押しするその仕組みとは?
2026年6月21日。鯖江市役所のイベント会場では受付が開始した直後から、参加者の交流が始まっています。この日開催されたのは、鯖江市市民主役推進課が主催するプロジェクト『鯖江まちづくりプレイヤースクール』のキックオフイベント。知り合い同士で参加された方だけでなく、初めましての人同士も、イベントが待ちきれないように名刺交換や自己紹介が行われていました。
市内全10地区で完成した『地区まちづくり計画』を実行していく支援プロジェクト
鯖江市では、“自分たちのまちは自分たちがつくる”ことを目的として、市民による市民のための「市民主役条例」が定められ、“市民主役のまちづくり”が進められています。
これまでも市民活動に対する市役所からの支援策はたくさんありましたが、昨年度までの二年間にわたり「自分たちのまちをどうしていきたいか」を地区の住民同士が考え、実践していくための中長期指標である『地区まちづくり計画』の策定・改訂が進められ、2025年度までに市内全10地区で完成。
これを契機として、具体的にまちづくり活動をしていきたい方に、まちづくりの専門的な知識を共有し、思いを実現してもらうべく『鯖江まちづくりプレイヤースクール』という取り組みを始めました。
「講座」と「伴走支援」で基礎固めと個別サポートを実施
『鯖江まちづくりプレイヤースクール』は、鯖江市でまちづくり活動に取り組みたい方を対象とした「講座」と「伴走支援」がセットになったプロジェクトです。
キックオフイベントでは、講師として一般社団法人地域改革代表理事・一般社団法人福井県まちづくりセンター代表理事で、総務省地域力創造アドバイザーである竹本祐司氏を招いて、「まちづくり、イベント初めの一歩講座」「まちづくり、イベント活動収益化講座」が開催。今後は、企画、広報、収益化、イベント管理、営業の方法といった講座が予定されています。
全国で行われている多くの市民を対象とした支援が講座のみである中、本スクールの特徴として「伴走支援」があります。これは相談内容に合わせて竹本氏をはじめとした各領域の専門家が、まちづくり活動について指導・助言を行うもの。面談の設定だけでなく、平日・休日問わず質問を受け付け、回答していくものです。
講座を聞き、実際に取り組んでみて、新しい疑問が生まれたーーそのような際に、改めて面談や質問ができ、講座の内容以外にもアドバイスがもらえる仕組みです。竹本氏が「講座を聞いただけで実践できる方ばかりではありません。伴走支援をして、その方にあったサポートをすることで、まちづくりプレイヤーが自信を持って活動できるようになります」と話すように、何かの壁にぶつかっても途中であきらめるのではなく、専門家の支援によって、その壁を一つずつ乗り越え、実現させていける仕組みになっています。
きめ細かなサポートで、「まちづくり活動」への熱意を支える
このような取り組み体制の背景にあるのは、高まる熱意を実行へ、さらには成果へと結びつけたいとの思い。イベントの冒頭では佐々木勝久市長が登壇し、「皆さんが主役になって完成した『地区まちづくり計画』を実行し、市民にとってこれまで以上に暮らしやすくワクワクするまちにするためには、皆さんの力が必要です。その支援をさせていただきます」と取り組みへの市としての思いを参加者に伝えました。
鯖江市市民主役推進課の川﨑千寛主任は「市民の方から、活動への前向きな声をお聞きします。ただ、思いはあるがどのようにしたらいいのかわからない、という声もお聞きしました。そこで、一人ひとりのお悩みの解決になればと、講座だけでなく伴走支援を組み合わせた形を取り入れました」と、本プロジェクトへの思いを話します。
その思いを受けた竹本氏は「積極的に活動されている方を見て次は自分だ、という方が増えてきた際にも対応できるよう、ノウハウとしてまちに残していきたい」と、市民活動が自走化できるような支援方法を考え、このスクールの方式に至ったと語りました。
すでに活動を始めている人が、今の悩みをその場で相談
今回のキックオフイベントに参加した市民は約20人。これから活動したいと考えている方だけでなく、すでに鯖江市で市民活動を始めている方もいました。
講義の後には参加者から、「とても素晴らしい内容でした。私だけでなく仲間にも聞かせたいので、伴走支援の際は仲間も一緒に参加させてほしい」「自分一人では何もできないと思っていたが、一人だからこそ勢いを持ってできる事例を聞いて、自信になった」「お名前を知っていたり、いいなと思う活動をしていたりする方と、この場で知り合えた。今後は相談したり、一緒に何か企画したりするなど、市民同士でのつながりも活発化させたい」といった前向きな声がたくさん上がりました。
すでに決まっている講座だけでなく、要望が集まれば現在は予定していない講座も開催するなど、柔軟かつ積極的で、きめ細かな支援を想定している『鯖江まちづくりプレイヤースクール』。市民がどう変わり、市をどう変えていくのかーー鯖江市の取り組みに注目が集まっています。
(取材・文・写真 廣瀬達也/広瀬企画)
