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- 2026年10月31日 17:01
「ないなら作ろう」地元住民と移住者が共創、ものづくりのまち・鯖江で育つ“手作りの祭り”
9月26日・27日、福井県鯖江市の西山公園円形芝生広場で「さばえまつり2026」が開催されました。2024年に始まり、今年で3回目。ものづくりのまち・鯖江らしさを体現する市民参加型の“つくるを祝う祭典”として、定着しつつあります。
さばえまつりは、鯖江のまちにどのような影響を与えているのでしょうか。今回は同イベントを訪れ、かかわる人たちを取材しました。
誰もが気軽に参加できるお祭りを。さばえまつり誕生の経緯
9月26日、雨の影響で、さばえまつりは1時間遅れでスタートしました。小雨が降る中、朝からスタッフや出店者は会場内を動き回り、準備に奔走。ものづくりのまちらしい“手作り感”が、開会前から漂っていました。
さばえまつりは“つくるを祝う祭典”。このコンセプトは、鯖江のブランド戦略「つくる、さばえ」から派生したものです。2015年に鯖江に移住し、第1回からイベントを統括するディレクターの森 一貴さんが、さばえまつり誕生の経緯を教えてくれました。
「『市民主役のまち』といわれる鯖江ではさまざまな活動が行われていますが、以前はそれぞれが独立してしまっていて、外から新しい空気を呼び込んだり、互いに知見をシェアし合ったりすることができていない印象を受けていました。そこで、鯖江のブランド戦略として『つくる、さばえ』というキャッチコピーを市役所や有志の方々と一緒に作り、誰もがものづくりやまちづくりに気軽に参加できるお祭りを立ち上げることになったんです」(森さん)
3回目の開催となった今年のテーマは「ルーツ」。鯖江が培ってきた歴史や文化といった“縦のルーツ”と、多様な人たちがつながる“横のルーツ”を表現したいとの想いが込められているそうです。「参加型デザイン」の研究に従事している森さんは「最初は個人的な好奇心だった」と明かしますが、回を重ねるごとに参加者は増加。今年は、100人を超える市民が「影絵」を製作しました。
「SNSでの告知だけでは、なかなか人は動いてくれません。みんなが主体的に周りに声をかけてくれて、どんどん輪が広がっています」(森さん)
「さばえまつりがきっかけで、鯖江に移住したり、お店をオープンしたり、かかわる人たちの人生に前向きな変化が起きていることが嬉しい」と森さんは語りました。
“手作り感”こそ、さばえまつりの真骨頂。鯖江のものづくりに惹かれて移住
さばえまつりには、移住者もかかわっています。「『ないなら作ろう』という鯖江の“ノリ”が、さばえまつりにも表れている」と話したのは、鯖江市別司町のシェアハウスに集まった仲間とポッドキャストで「fonfon radio(フォンフォンラジオ)」を配信するグラフィックデザイナーの室谷かおりさん。
「会場装飾も盆踊りも手作りですし、この屋台もワークショップで作りました。使い心地も最高です!」(室谷さん)
この“手作り感”こそ、さばえまつりの真骨頂なのでしょう。室谷さんは「さばえまつりは、誰かの『やってみたい』を歓迎し、応援してくれるお祭りです。そんな大らかさが、独特なゆるく楽しい雰囲気を生み出しているような気がします」と話してくれました。
ちなみに室谷さんは、2019年に東京から鯖江に移住。鯖江のものづくりを体感できるオープンファクトリーイベント「RENEW」に足を運んだ際、デザインの価値に感動したことで移住を決意したそうです。
「東京で働いていたときはwebデザインの仕事をしていたのですが、完全に分業制で、自分がつくったものが誰にどう届いているのかわからないままでした。『RENEW』に行ってみると、職人さんたちが誇りを持ってものづくりをされていることに感銘を受けたので、鯖江に移住し、企画とアートディレクションを担当している今の会社(合同会社ツギ)に入社しました」(室谷さん)
「事務所の大家さんが漆器の職人さんなので、いつかコラボ商品を作ってみたい」と今後の夢を語ってくれた室谷さんは、鯖江のものづくりをデザインの力で支え、今やまちづくりにも貢献しています。
「一緒に楽しんじゃおう」。さばえまつりは地元住民にも浸透
また、鯖江市内の複合施設で週末カフェ「SHIBA COFFEE」を営む柴﨑美穂さんは、鯖江の隣町・武生の出身。福井に戻ってきて以来、鯖江で長く暮らしています。さばえまつりでは、コーヒーや、フルーツシロップを使用したドリンク、ノンアルコールカクテルを提供していました。
「1回目に遊びに来たときに楽しくて、2回目から出店しています。作り上げている側の感覚になれるのが、このお祭りの良いところですよね。明日は『寄席』に出演し、ソーラン節を踊ります」(柴﨑さん)
福井県内の別のイベントに出演するために仲間と練習していると、ディレクターの森さんから声をかけられ、さばえまつりでも踊ることになったのだとか。「ただ遠目に見ているだけでなく、『一緒に楽しんじゃおう』と前のめりにさせてくれます」と、柴﨑さんは声を弾ませました。
まさしく“つくるを祝う祭典”が鯖江を中心とした地元住民にも受け入れられ、浸透している様子が伝わってきました。
鯖江が30年後も50年後も理想的なまちであるために。未来の種を植えていく
1時間遅れのスタートとなったものの、開会式後の練り歩きが終わる頃には雨が上がり、時おり晴れ間ものぞいた今年のさばえまつり初日。家族で越前市から遊びに来ていた男性は「1回目から毎回来ています。友人にも会えるし、こういったお祭りがあるのは嬉しい」と話しました。
いたるところで耳にしたのは「久しぶり!」「元気だった?」という会話。さばえまつりが人と人をつなぐ役割を担っていることが感じられ、それは“縦のルーツ”と“横のルーツ”が交差する光景でもありました。
「ずっと鯖江で暮らしている人たちだけでは、新しい可能性を想像しにくいのではないかと思います。外から人を呼び込んでいるのは、まだ見ぬ魅力に気づかせてもらうためです。鯖江が30年後も50年後も理想的なまちであり続けるよう、今のうちからさばえまつりを通じてアイデンティティを積み上げていって、未来の可能性を示す種をたくさん植えていきたいです」(森さん)
地元住民も移住者も、みんな一緒になってまちづくりに参加する。さばえまつりが、ものづくりのまち・鯖江の新たなつながりや挑戦を生み出す場として、これからどのように育っていくのか注目されます。
(取材・撮影・文:権藤将輝)
