- 掲載
- 2026年10月25日 13:35
子どものそばにいたい。その家族をどう支える? 付き添い入院の実態と、今本当に必要な支援
2026年10月1日、ヒューリックホール東京で「ロナルド・マクドナルド・ハウス ブランドリニューアル発表会」が開催されました。第二部の「ファミリー・センタード・ケア フォーラム」では、付き添い入院を経験した家族と医療従事者、支援団体の代表がパネルディスカッションに登壇。子どもの入院によって変わる家族の暮らしや、必要な支援について語り合いました。
「ファミリー・センタード・ケア」とは、治療を受ける子どもだけでなく、支える家族も含めてケアし、家族一緒に治療に向き合える環境を整える考え方。今回のお話からは、家族が安心して子どものそばにいるために、どのような支えが必要なのかが見えてきました。
脳炎で緊急入院、突然の付き添い入院で車中泊を経験
黒田智美さんの娘・あおいさん(仮名)は、2016年、10歳のときに感情や記憶などをつかさどる部位に炎症が起きる「辺縁系脳炎」で緊急入院。翌日には呼吸が停止し、意識不明となってICUに入りました。黒田さん夫妻は病院のそばを離れられず、付き添いができない時間には車内で仮眠を取る生活を約1週間続けたそうです。
疲弊する黒田さんに声をかけた看護師から紹介されたのが、現在の「ロナルド・マクドナルド・ハウス」(以下、ハウス)でした。ハウスは、遠方の医療機関で治療を受ける子どもの家族のための滞在施設。あおいさんの容体が落ち着いてからは、夫婦で病院とハウスを交代で利用し、付き添い入院生活を乗り越えたといいます。
温かい食事と、人目を気にせず泣ける場所が心の支えに
黒田さんがハウスで助けられたと振り返ったのは、洗濯をして清潔な服を着ること、お風呂に入ること、ベッドで横になること。普段なら当たり前の生活が、心身を支える大切な時間になったそうです。
なかでも個室は、子どもの前で抑えていた感情を表出できる場所でもあったそうです。人目を気にせず泣いたり、ため息をついたりすることで、心を休ませることができたといいます。
深夜にハウスへ戻った際、用意されていた食事も忘れられない経験でした。「よろしければ温めて食べてください」というメモと料理に、涙があふれたそうです。白黒のように感じていた世界に、一瞬、色が見えたようだったという黒田さん。見知らぬ誰かの「応援しているよ」という気持ちが、再び子どもに向き合う力になっていました。
不安で食べられない、眠れない。同室に8人の入院生活で疲弊
戸塚孝さん、綾子さん(仮名)夫妻の息子さんは、小学4年生で白血球の一種であるリンパ球ががん化する「悪性リンパ腫」と診断され、16カ月の入院生活を経験しました。最初の病院では、4人部屋に子どもと付き添いの親、計8人が寝泊まりしていたそうです。母親の綾子さんは不安で食べることも眠ることもできず、同室の患者さんとその家族への気遣いにも限界を感じていました。
有料の個室へ移った日、息子さんの表情に久しぶりの笑顔が戻ったといいます。一方で、費用を負担して同じ選択ができる家庭ばかりではないとも指摘。安心して過ごせる環境を確保する難しさが伝わってきました。
入院の影響は、家で待つきょうだいや仕事にも
戸塚さん一家は、入院の長期化によって、自宅で過ごす娘さん(入院した息子さんの姉)と、その生活を支えていた祖母の負担も増していったそうです。家族の共倒れを防ぐため、父親の孝さんは休職を決断。収入が途絶えることや、手当・給付の期間に限りがあることへの負担も語られました。
姉弟は病棟の年齢制限によって面会できず、主にビデオ通話で話をすることで交流していたそうです。しかし、ハウスを利用するようになってからは、息子さんにハウスへの外泊許可が出た際、家族で食卓を囲み、きょうだいが一緒に過ごせる時間が生まれました。
子どもの入院は、患者本人と付き添う親だけの問題ではありません。残されたきょうだいも含め、家族全体を支える視点が必要なのだと感じさせられるお話でした。
▼戸塚さん一家の詳しい療養体験をインタビューしています
✅最初は成長痛だと思っていた。1年半近く入院することになった小学生の息子に付き添うため、家族が下した決断
入院する子どもに「付き添う」「離れる」を安心して選べるように
東京大学病院 副看護部長の木村敬子さんは、家族支援の課題として「環境」と「心のケア」を挙げました。寝る、食べる、着替えるといった生活の場所を整えることに加え、心理の専門職による支援や、きょうだいへの配慮も必要だといいます。
国立成育医療研究センター 医療連携・患者支援センター 医療連携室のメディカルソーシャルワーカー・助川裕香さんからは、宿泊先の調整や経済的な相談、退院後の復学支援など、その時々の悩みに応じて家族を支える取り組みが紹介されました。医師や看護師だけでなく、多職種で連携することが大切だそうです。
自身も付き添いを経験した、認定NPO法人キープ・スマイリング理事長の光原ゆきさんが目指すのは、子どもと家族の状況に応じて、付き添うかどうかを選べる環境。付き添うときには安心して過ごせ、離れるときには安心して任せられることが重要だと語りました。
同団体では、食事や生活物資、交通費の支援、実態調査などを実施。厳しい状況は続くものの、病院での家族向けの食事提供や休息環境の改善など、少しずつ変化も生まれているそうです。
家族の休息が、子どもの安心につながる
現在、大学生になった黒田さんの娘・あおいさんも登壇。両親がハウスで休めたからこそ、自分のそばで支え続けられたのではないかと振り返りました。病状が悪化したときも、ベッドの隣にいる両親の言葉が安心につながったそうです。
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今回のパネルディスカッションを通して浮かび上がったのは、家族の休息も、子どもを支えるために欠かせないということでした。食べる、眠る、気持ちを立て直す。その時間を確保できることが、再び子どもに向き合う力になります。
現状を知って誰かに伝える、寄付をする、ボランティアに参加する。家族だけに負担を背負わせず、それぞれにできる形で支えることが、子どもと家族が安心して一緒にいられる医療につながるのではないでしょうか。
(取材・文:マイナビ子育て編集部)
ロナルド・マクドナルド・ハウス ホームページ
https://www.dmhcj.or.jp/
