親が知っておきたい「付き添い入院」のリアル【ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 東京都立小児総合医療センター開所式レポ】
2026年5月15日に東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)内に「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」が開設。今回は同ルームの開所式および付き添い入院経験のある家族を交えたトークセッション、家族に付き添い入院のリアルをうかがった個別インタビューの様子をお伝えします。
「ファミリールーム」「ハウス」の併設は全国初
5月15日、東京都府中市の東京都立小児総合医療センター内に「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 東京都立小児総合医療センター」がオープンします。開設に先立ち、4月28日に現地にて開所式が行われました。
開所式には、本施設の設置(病院と共同で設置)・運営を行う公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン(DMHC)常務理事の河野辺孝則氏が登壇。入院中の子どもに付き添う家族を支えるための院内の休息場所「ファミリールーム」と、遠方から入院・通院している子どもとその付き添い家族のための病院隣接の滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス ふちゅう」の役割の違いなどについて説明がありました。ひとつの医療機関にファミリールームとハウスが併設されるのは全国初の試みです。
「家族を支えることは子どもの医療を支えることにつながる」
続いて、東京都立小児総合医療センターの山岸敬幸院長から、同センターにおける付き添い家族支援の現状や、ファミリールーム設置に至った背景が語られました。
山岸院長によると、医療の進歩によって多くの子どもたちが回復、次の成長へ進めるようになった一方で、子どもを支える家族は長期間、不安・緊張の中で付き添いを続けているそうです。子どものすぐそばにいる家族が十分な休息や食事すらままならず、心身に大きな負担を抱えている現状は医療者として看過できないものだったとのこと。
今回のファミリールーム開設は、家族のそのような負担を軽減し、再び子どもに向き合う力を取り戻す場所、そして小児医療の質を高める新しいモデルにもなるといいます。「家族を支えることは子どもの医療を支えることにつながる」という山岸院長の言葉が非常に印象的でした。
ほかにも、府中市長・高野律雄氏らによる祝辞や、東京都知事・小池百合子氏からのビデオメッセージも寄せられ、医療現場・地域・行政が一体となって家族支援に取り組む姿勢が示されました。
「自分の食事やトイレですら一苦労」経験家族が語る付き添い入院の現状
トークセッションには、実際に付き添い入院を経験した家族、病棟で家族を支えてきた看護師、そしてファミリールームマネージャーの3名が登壇。
家族からは、突然の入院による強い不安や、子どものそばを離れられず食事やトイレもままならなかった経験、夜も血圧・体温測定や同室の子の泣き声などで十分に眠れなかった状況が語られました。看護師からは、いつもと異なる病院という環境で付き添い家族が疲れを見せず気丈に振る舞う姿に寄り添いつつも、十分な休息が取れていない現状を心配する声が。ファミリールームマネージャーは、「一人になることに勇気が必要な家族が、病室近くで安心して鎧を脱ぎ、自然と子どもの前に笑顔で戻れる場所を作りたい」との思いを語りました。
付き添い入院による心身の負担の大きさは、当事者やその周辺の人でないと、なかなか理解されづらいもの。付き添い入院のリアルを知るとともに、「家族が少しでも力を抜ける場」の重要性を改めて感じました。
【家族インタビュー】突然始まった付き添い入院「休もうとすら思えなかった」
編集部は、トークセッションに参加した、付き添い入院経験のあるお母さんに個別インタビューを実施。3歳と1歳の男の子を育てており、入院したのは1歳の次男だったそうです。入院期間は3カ月。突然のことで驚いたといいます。
――お子さんが入院することになった経緯について、教えてください。
お母さん もともと元気に過ごしていたのですが、1歳になるころに、突然体調を崩してしまって。検査の結果、腎臓の病気が見つかり、そのまま緊急入院することになりました。あまりに急なことで、何も心の準備ができていませんでした。
――次男くんの入院中の生活について、教えてください。
お母さん 入院したのは1歳の次男で、自宅には3歳の長男もいました。入院時、私は次男の育休中だったんですね。なので、私が最初は付き添いをしていたのですが、私一人でずっと泊まりがけで付き添うのは難しくて……。
夫が看護休暇や有給を使って交代してくれましたが、家族の生活リズムや環境が一気に崩れました。長男も急に私と、かわいがっていた弟がいなくなったことで情緒が不安定になってしまいましたね。
――入院中、長男くんのお世話はどうしていましたか。
お母さん 長男は保育園に通っているので、送迎は近くに住む両親にお願いしたり、ときどき泊まりで預かってもらったりしていました。ほかに、同居中の夫のお母さんに食事の準備をお願いしたことも。もし実家が遠方だったら、長男のお世話まではしっかりと手が回らなかったかもしれません。
――付き添い入院で、とくにつらかったことは?
お母さん 一番は「休めないこと」でした。夜も検温やケアで何度も起きますし、同じ病室の物音もあって、熟睡できた日はほとんどありません。次男も、急に環境が変わったことと病気による体調の悪さなどが重なって、常に抱っこしていないと泣いてしまう状況でした。だから、トイレも急いで行って戻らなきゃいけない。自分の食事をゆっくりとる余裕もありませんでした。
――精神的な負担も大きかったかと思います。
お母さん はい。次男の体調が思わしくない日が続くと、「この先どうなるんだろう」と見通しのつかない不安で押しつぶされそうになりました。SNSやネットで調べれば調べるほど不安が増してしまって、途中からはあえて情報を見ないようにしていました。
――そんななかで、支えになったものはありましたか。
お母さん 病棟の看護師さんとの何気ない会話や、同じように付き添い入院をしている保護者との交流には支えられました。とくに次男と同い年かつ同じ病気で入院している子がいて、その子のお母さんとのつながりは心強かったですね。
同じ境遇の保護者と話すなかで「毎日毎日を生きていけば、いずれは病気がよくなるんだ」と前向きな気持ちでいられるようになりました。一人じゃないと思えたことは、とても大きかったです。
――今回のファミリールーム開設については、どう感じましたか。
お母さん もし付き添い入院中にファミリールームがあったら、たくさん休憩できていたでしょうね。当時は「休もう」ということすら頭にありませんでした。とくに、足を伸ばして横になれる場所があるのはいいですね。子どものベッドの横だと足も伸ばせませんから……。こうした場所があれば「じゃあ休もうかな」と思える家族も多いと思います。
* * *
「付き添い入院」に焦点を当てた今回の取材を通して浮かび上がったのは、子どもの入院が患者である子ども自身だけでなく、家族全員に大きな負担をかけるという現実でした。「休みたい」と思いながらも、子どものそばを離れることに罪悪感を抱いてしまう——そんなパパ・ママの気持ちは、多くの家庭に共通するものではないでしょうか。
ファミリールームは、親がほんの少し肩の力を抜き、自分を立て直すための場所。親が適切に休息でき、健やかでいることが、子どもを支える力になる。そうした当たり前だけれど見落とされがちな視点を、私たち一人ひとりが共有し、支え合っていくことの大切さを改めて感じました。
(取材・文 マイナビ子育て編集部)
DMHC公式ホームページ(施設詳細・ウィッシュリスト等はこちら):
https://www.dmhcj.or.jp/familyroom/
東京都立小児総合医療センターファミリールーム 公式X(最新情報はこちら):
https://x.com/dmfr_tmcmc
