【医師監修】臨月のむくみをどうにかしたい! 出産間近にむくみがつらいときの解消方法
「臨月になって一気にむくみが強くなって、本当につらい……」そんな悩みをもつ妊婦さんがとても多いものです。出産を間近に控えているだけに、何か問題ではないか心配。むくみによって体重が増えることも気になります。今回は東峯婦人クリニック副院長の松峯美貴先生に臨月のむくみの原因や効果的なケア法を解説いただきました。
臨月ってむくみがひどくなるの?
むくみは妊婦さんの約3割にみられる症状[*1]で、妊娠期間中に起こるマイナートラブル(妊娠に伴って起こる不快症状)のひとつといえます。では、臨月にひどくなるのはどういうことなのでしょうか?
臨月は今までに増してむくみやすくなる!
むくみ(浮腫み)とは、血液の中の水分が血管の外の組織にしみ出てしまう状態で、浮腫(ふしゅ)ともいいます。
妊娠していないときに、水分摂取量が変わらないのにむくみが出れば、何らかの原因で水分の代謝が悪くなっていると考えられますが、妊婦さんの場合は病的ではない生理的な変化で手足などの末端にむくみが出ることが多いです。
■妊娠するとホルモンの関係などでむくみやすくなる
妊娠した女性は、体に水分を蓄える作用があるプロゲステロン(黄体ホルモン)などのはたらきにより、赤ちゃんの発育や出産時の出血に備えて水分量が増加します。そのため、水分を摂りすぎていなくても妊娠中はむくみやすいのが自然で、そのこと自体は心配することはありません。
■臨月にはさらにむくみが強くなる
そして臨月には症状が強くなります。というのも、血液は心臓からスタートして全身を巡って心臓に戻りますが、臨月には大きくなったお腹が下半身の血の巡りを妨げるようになります。交通渋滞と同じで、どこかが停滞するとつながっている路線のすべてに影響がでます。つまり全身の血液循環が悪くなるので、とくに足や手など末端にむくみが生じやすいのです。
このように臨月はみんなむくみやすくなるので、冷静にボディチェックしましょう。
こんな「むくみ」には注意
妊娠高血圧症候群のひとつの症状としてむくみが出る場合や、心臓や腎臓の病気などが背後にあるケースもあります。なお、妊娠高血圧症候群は妊婦さんのうち10人に1人が発症するとされています[*2]。
家庭で測った血圧が高かった(収縮期血圧が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上)、手足以外の部分にもむくみがあるなどの場合は、かかりつけの産科に相談しましょう。
妊婦健診でもむくみをチェック
むくみの背後に病気が隠れている場合があるといっても、定期の妊婦健診を受けていて、医師から何も注意を受けていなかったら、むやみに心配する必要はありません。健診で、医師はさまざまな検査データから科学的に病気のリスクをチェックしています。
ただし、むくみについては受診時に症状があるとは限らないと思いますので、いつ・どのようにむくむのか主治医に情報提供をして、コミュニケーションをとりましょう。
産後には改善する?
人によってむくみが解消するまでにかかる時間に差がありますが、産後、自然にむくみはとれます。だいたい産後4週間以内にとれることが多いので、それを超えて症状があり、心配な場合は産科に相談してください。
臨月のむくみをやわらげるセルフケア
1. 足を少し高くして横になる
下半身を巡った血液が心臓に戻るには、重力に逆らうことになるので、ふくらはぎが血液を押し出すポンプの役目を果たします。このポンプ力をサポートする休み方をしてみましょう。
ひと休みする際や就寝時に「足枕」で足をすこし高く上げるだけ! 足首だけ高くすると、膝や腰に負担や痛みを感じる場合もあるので、膝から下全体が足枕にのり、快適になるように工夫してください。
2. ストレッチなどで適度に体を動かす
水分代謝や循環を自然に高めるため、全身のストレッチやマタニティヨガなどで体を動かすと、むくみが軽減します。主治医からとくに注意がなく、体調がよければ、臨月でも運動習慣は続けましょう。
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臨月の運動について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎臨月の運動、おすすめ7つ
3. 着圧ソックスを履く
着圧ソックスを利用するのもいいでしょう。ふくらはぎのポンプ力を助けてくれます! また、軽くマッサージするのもいいでしょう。
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★離乳期の●について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎着圧ソックスの正しい選び方&はき方
4. 食品からカリウムを摂る
カリウムが不足するとむくみにもつながります。ほうれん草や小松菜などの葉物野菜のほか、かぼちゃやバナナにもカリウムは豊富に含まれます。一方、控えたいのは塩分です。塩分控えめにしつつ、カリウムなどの栄養素を上手に摂れるといいですね。
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むくみ対策の食事などについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦の食事で気をつけることは?▷むくみが気になる妊婦のための献立
臨月のむくみ対策のNGパターン
先にも述べたとおり、妊婦さんの体内の水分量が増えるのは「赤ちゃんの発育や出産時の出血に備える」といった大事な理由がある自然な変化なので、むくむからといって自分の判断で水分摂取を控えたり、利尿剤を飲んだりするのはやめましょう。
そのようなことをしてしまうと、血液の成分などが変わり、健康を害すことにもつながりかねません!
まとめ
臨月に入り、もうすぐ赤ちゃんに会える喜びが日に日に増していきますね! そんな中、急にむくみがひどくなって、不安に感じる妊婦さんもいるかもしれませんが、多くは生理的なものなので心配しすぎず、無理なくできるセルフケアで症状をやわらげ、快適に過ごしてください。ただし、手足のむくみ以外にも変調を感じる場合は、かかりつけの産科に相談しましょう。
(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1] 一般社団法人日本妊娠高血圧学会「妊娠高血圧症候群 Q&A」
[*2]メディックメディア刊「病気がみえる vol.10 産科」p.102
小学館刊「ウイメンズ・メディカ」
医学書院刊「臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド?いまのトレンドを逃さずチェック! 」
産婦人科診療ガイドライン産科編2017
医学書院刊「ほんとうに確かなことから考える妊娠・出産の話」
厚生労働省「母性健康管理に関する用語辞典」
一般社団法人日本妊娠高血圧学会「妊娠高血圧症候群 Q&A」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます