【助産師監修】妊婦が紅茶を飲むときの上限は?カフェイン摂取の注意点
妊娠中、摂る量に注意が必要なものにカフェインがあります。カフェインを含む飲料は様々ですが、紅茶もその一つ。では妊婦が紅茶を飲みたい場合はどのぐらいまでを上限に考えておけばいいのでしょうか。
妊婦が紅茶を飲むとき、どのぐらいまでにしておくべき?
詳しくは後ほど解説しますが、妊娠中はカフェインの摂りすぎに注意が必要です。コーヒーほどではありませんが、紅茶にもカフェインが含まれています。では、妊娠中に紅茶を飲む場合はどのぐらいまでにしておけばいいのでしょうか。
紅茶は1日に600ml程度にしておく
まず結論からお伝えすると、妊娠中に紅茶を飲む場合は1日に600ml程度にとどめておくといいでしょう。この量は、妊娠中に摂っても問題ないとされるカフェイン量(1日200mg程度)と紅茶に含まれるカフェインの量(100mlあたり30mg)から計算したものです。紅茶以外にもカフェインを摂取した場合はそちらも合わせて加減しましょう。
紅茶は「妊娠中に絶対飲んではいけないもの」ではありませんが、積極的に摂る水分はノンカフェインのものを選ぶといいでしょう。
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紅茶の飲み過ぎにはなぜ注意が必要?
「妊娠中はコーヒーや紅茶に注意!」といった情報を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、その理由は、紅茶の飲み過ぎによってカフェインを摂り過ぎる可能性があるためです。
ここで、そもそもカフェインの作用とはどのようなものなのか、その好ましい面と、好ましくない面をまとめておきましょう。
適量であればリラックス効果もあるカフェイン
カフェインは摂りすぎなければ、頭をスッキリさせたりリラックスできる効果があります。
頭をスッキリさせたり、注意力を維持する効果
仕事やドライブの途中で、眠気覚ましに熱いコーヒーを一杯飲む、といったことは多くの人が試したことがあるのではないでしょうか。カフェインには実際に眠気を覚ます効果があります。また、注意力を維持する作用もあるとされています[*1]。
リラックス効果
さらに意外に感じられますが、カフェインにはある種のリラックス効果もあるとされています[*2, 3]。
咳・喘鳴の症状を緩和する作用も
そのほか、カフェインには気管を拡げて、呼吸を楽にする作用があり、かぜや喘息の症状を緩和する可能性があります。
妊娠中の摂りすぎは低出生体重児などのリスクが
それでは反対に、カフェインによる作用でうれしくないものをみてみましよう。
不眠を招く
よく知られているように、夜、カフェインを摂ると眠れなくなります。コーヒーが眠気覚ましに効果があるのですから、言わばその副作用のようなものです。
中枢神経や消化器系を刺激する
カフェインを多量に摂取すると中枢神経(脳や脊髄)系統が刺激されて、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震えなどが起きたり、また、消化管(胃腸)系統が刺激され、下痢や吐き気が起きたりすることがあります。
妊娠中にとりすぎた場合の影響
妊娠中のカフェインの多量摂取は、流産や低出生体重児のリスクを高めたり 、赤ちゃんの発育の遅れにつながると言われています 。
妊娠中のカフェイン摂取、どのぐらいまでにしておけばいい?
では、カフェインの良くない影響が現れないようにするためには、カフェインの摂取量は1日どの程度までにしておけば良いのでしょうか。
妊娠していない成人の場合
まず妊婦さん以外についていうと、成人の場合、カナダ保健省(HC)は、1日あたりのカフェイン摂取量として、健康な成人で400 mg(コーヒーをマグカップで約3杯)までにすることを勧めています。 なお、カフェインによる影響には個人差が大きく、国際的に示されている摂取上限の推奨目安量には多少ばらつきがありますが、健康な成人ではおよそ400mg/日(コーヒー・マグカップ3杯程度)までであれば問題ないとされていることが多いようです[*4]。
ただし、エナジードリンクや眠気覚ましの効果をうたった清涼飲料あるいは医薬品には、カフェインがかなりの量含まれています。使用する際は含有成分をよく確認し、過量摂取しないように注意してください。 実際にカフェイン入り清涼飲料を大量に飲んだ急性中毒が原因と思われる死亡事故が国内で報告されています 。
妊婦さんの場合
さて、それでは妊婦さんはどうかというと、さきほど紹介したような影響があるため、妊娠していない人に比べてより慎重に考えなければいけません。
カフェインによる影響には個人差があること、胎児への影響がまだ確定していないことなどから、上限として推奨されるカフェイン量には差がみられますが、妊婦さんの摂取量として世界の主な機関が公表しているのは以下のようなものです。
・世界保健機関(WHO):妊婦に対しては「コーヒーを1日3〜4杯まで」(カフェイン摂取量の記載はなし)[*4]。
・米国産科婦人科学会(ACOG):ほとんどの専門家は、妊娠中に1日200mg未満のカフェイン(約340gのコーヒー1杯程度)を飲んでも安全であると述べています[*5]。
・欧州食品安全機関(EFSA):妊婦・授乳婦については1日当たり200mgまで[*4]。
・英国食品基準庁(FSA):妊婦については、1日当たり200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)まで[*4]。
・カナダ保健省 (HC):妊婦、授乳中、妊娠を予定している女性については、300mg/日(コーヒーなら、237ml×2杯程度)まで[*4]。
カフェイン量でみると、1日200mgまでとする機関が多いようです。日本でも厚生労働省がカフェイン過剰摂取について注意喚起しており、その中で上記の目安が紹介されています(米国産科婦人科学会の数値は除く)[*6]。
飲み物のカフェイン量|コーヒー、緑茶、ほうじ茶など
では、いよいよ本題に入ります。紅茶はどのくらい飲んでよいのでしょうか?
まず、紅茶も含め、ふだん飲む機会が多い飲み物のカフェイン含有量をみてみましょう。以下は文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」や内閣府食品安全委員会の資料から、主な飲み物のカフェイン含有量をまとめたものです。
食品名:カフェイン含有量(100gあたり)/浸出法[*7]
※茶葉などの種類や抽出方法によっても実際の含有量は異なります
玉露:160mg/茶10g、60度、60mL、2.5分
煎茶(緑茶):20mg/茶10g、90度、430mL、1分
番茶:10mg/茶15g、90度650mL、0.5分
ほうじ茶、玄米茶、ウーロン茶:20mg/茶15g、90度、650mL、0.5分
紅茶:30mg/茶5g、熱湯、360mL、1.5~4分
コーヒー:60mg/コーヒー粉末10g、熱湯、150mL
エナジードリンクや眠気覚まし用の清涼飲料[*6]:
32~300mg/100mL(製品1本当たり36~150 mg)。製品によってカフェイン濃度及び内容量が異なる
上記をみてもわかるように、カフェインを含んでいる飲み物はコーヒーや紅茶だけではありません。緑茶や紅茶にもカフェインが意外に多く含まれています。
紅茶は100gあたり30mgほどで、これは煎茶やウーロン茶などよりも多く、一方、コーヒーと比べると半分ほどです。このことから、さきほど述べた「1日200mg程度まで」というカフェイン摂取量の上限を超えないためには、紅茶は1日に600ml程度までにしたほうがよいことがわかります。
もちろん、紅茶以外にコーヒーや日本茶を飲むのであれば、それらに含まれるカフェイン量も計算に含める必要がありますので、量を調整してくださいね。
まとめ
妊娠中に紅茶を飲む際の注意点について解説してきました。結論としては、過度に恐れることはないけれども、飲み過ぎるとあまり良くないことは知っておくべき、ということです。紅茶以外にもカフェインを含む飲み物はいろいろありますので、それらとの合計で、1日の摂取量に注意しながらほどほどに楽しむようにしましょう。
(文:久保秀実/監修:坂田陽子先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省「統合医療」情報発信サイト 「 健康食品 」の安全性・有効性情報:カフェイン
[*2]全日本コーヒー協会 コーヒーと健康 Q.12 コーヒーでストレスが解消される?
[*3]JBPress食の研究所 興奮してもリラックス、コーヒーの作用を解明する
[*4]食品安全委員会:食品中のカフェイン
[*5]The American College of Obstetricians and Gynecologists, Nutrition During Pregnancy
[*6]厚生労働省食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
[*7]文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます