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2022年12月07日 12:42 更新

【医師監修】産後のお腹の戻し方|ぽっこりたるんだお腹はいつ戻る?

出産という一大事を終えた女性の体は疲労困ぱいの状態ですが、産後どのように回復していくのでしょうか。健康的にボディメイクするなら、どのような注意が必要でしょう? そもそも産後のぽっこりお腹はどんな状態であるのかと、産後も取り組める体操について紹介します。

産後のぽっこりお腹はなぜ? いつ戻るの?

産後のお腹をなんとかしたい女性
Lazy dummy

出産後、体が妊娠以前の状態にもどるまでの期間は「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれます。この期間、体型や体調の回復のために運動は必要でしょうか? また、産後のお腹はいつごろ戻るのでしょうか?

戻る時期|産後のお腹は半年ほどで徐々に戻ってくる

妊娠中は「出産したらお腹もすぐに元どおり!」と思っていても、いざ出産したらなかなか戻らないお腹にがっかりした人もいるでしょう。

産後のお腹はすぐに元に戻るわけではありません。この後詳しく解説しますが、お腹の中の子宮の大きさは時間をかけて縮んでいきますし、体重も出産直後は5〜6kg程度しか減ってないことからもわかるように皮下脂肪なども付いた状態になります。

個人差はありますが、産後のお腹を含め体型の回復には半年程度はかかると言えるでしょう。

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産後の体型の戻りについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎産後の体型はいつ戻る?出産で変化したボディラインの戻し方

子宮回復|産後すぐには戻らない子宮の大きさ

出産したら少しずつ子宮が元の状態に戻っていきます(子宮復古)[*1]。

産後2、3日の子宮の大きさは拳2つ分程度(重さは約1,000g)。それが産後1週間になれば拳1つ分程度(重さ約500g)と半分にまでなり、産後6週間もすると鶏の卵ぐらいの大きさになって、非妊娠時の大きさに戻ります

子宮が元に戻ろうとする産褥期、疲労回復のための休養が十分に必要で、過度な運動は避けるべきですが、かといって安静にし過ぎるのもよくありません。

経腟分娩で、退院後とくに体調が悪くはなく、主治医からも特別な安静を促されていない場合は、徐々に起きる時間を増やし、家事や育児などをする中で体を動かしていきましょう。帝王切開の場合や、出産時に何か異常があった場合は、産後いつから体を動かして良いか、主治医に相談しておきましょう。

松峯先生
「こまめに休みをとりながら、赤ちゃんも加わった生活のリズムをつくっていくことが、健やかな体調を維持するために大切です。この時期は暮らしの中での活動で十分な運動になります。くれぐれも無理はしないでください」

産褥期と呼ばれる期間は産後6~8週にあたります[*2]。激しい運動はNGのこの時期ですが、ではどのように過ごすとよいでしょうか。

運動の時期|産後すぐの激しい運動は骨盤にもNG

臨月のころのお腹を思い出せば、産後、お腹周りの皮膚がたるんでいるのも納得するところです。ただ、仕方がないこととはいえ、自分のお腹がたるんでいるところはあまり見たくないもの。なるべく早くたるみを解消するために、シェイプアップの運動をすることが頭をよぎるかもしれません。

しかし、「産後すぐに」お腹のたるみを運動によって引き締めようとするのはちょっと待って! そもそも、このお腹のたるみは赤ちゃんがいた子宮が妊娠中に大きくなるにつれて徐々に皮膚が伸びた結果。出産によってある程度縮小するとはいえ、産後の子宮はまだ回復途中です。

子宮復古にともなって皮膚も回復していきます。個人差はありますがこれには大体6 〜8週間はかかるとされています。

子宮以外にも、出産という一大イベントを終えた体は妊娠前と同じではありません。骨盤底筋群も強いダメージをうけていて、腹筋の状態も普段通りではなく、産後すぐはできるだけ無理しないことがとても大切な時期。お腹のたるみを解消しようと焦らないことが重要です。

食事制限の時期|少なくとも産褥期はダイエットNG

産後すぐにお腹に新生児をのせるママ
Lazy dummy

子宮以外にも、たとえば女性ホルモンの分泌など内分泌系の機能も、エストロゲンやプロゲステロンなどは産後約1週間で非妊娠時の状態にもどりますが、卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンなどは大体8週間かかるとされます。

そして分かりやすい変化の一つである体重も、分娩で大きく減少した後、さらに2〜4ヶ月かけて非妊娠時の状態にもどっていくのが一般的です[*1]。
そこでなるべくなら3ヶ月、せめて産褥期は心身の回復を第一に考えた生活をするのが産後にコンディションを整えていくコツです。

松峯先生
「十分に休養をとりながら、赤ちゃんとゆっくりコミュニケーションをとり、家族の愛情を深め合いましょう。多くの場合、特別なケアを考えなくても、母子の愛着が増すような、穏やかな生活をしていると養生できます。

ただし、出産後の回復には個人差があり、医療的なケアが必要になる場合もあります。健康上の不安や発熱、下腹部痛、腟から鮮血のような出血があったときは、健診時期を待たずに産科に連絡をして、主治医に状況を伝え、指示をもらいましょう」

産後に体型回復のためのダイエットを目的に、食事や水分をとる量を控えるのもよくありません。出産後の体の回復を妨げる可能性があるうえ、授乳中の極端な食事制限は母乳の成分に影響することがあります。

おっぱいで栄養をとっている赤ちゃんの健やかな発育のためにも、バランスのいい食生活を心がけましょう。体型など美容的な回復は十分に体調がもどった後、次の段階に先送りして、まず自分の心身をいたわる時間を過ごしてください。

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産後ダイエットについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎産後ダイエットはいつから始めるべき?

産後の対策①|すぐできる体操のやり方

産後に激しい運動をしてはいけませんが、産褥期に適した運動としていくつかできることがあります。必ずやらなければならない運動ではないので、疲労感がなく、やってみたいと思うときだけでも、次に紹介するような運動を無理のない範囲で試してみましょう [*3]。

※産褥体操の進め方の注意
医師に運動を止められている人は、医師の指示に従ってください。帝王切開を行った場合や、出産時に何か異常があった場合も、必ず医師の許可を受けてから開始しましょう。

産後にするお腹の運動中の女性
Lazy dummy

産後1、2週間

・寝たまま腹式呼吸
口から息を吐きながらお腹をへこませ、鼻から息を吸いながらお腹を膨らます(ゆっくり繰り返す)

・寝たまま足首回し
足首を回し、つま先で大きな円を描く

・寝たまま頭起こし
頭だけを枕から持ち上げる(自然な呼吸をしながら、ゆっくり繰り返す)

・寝たまま屈伸
両膝を立て、片足ずつ膝の高さを変えずに、膝を伸ばす(交互にゆっくり繰り返す)

その後、1ヶ月健診まで

・母乳体操
1. 拳を胸の前に、肘を上げ、肘で脇を軽くたたく
2. 肩に手を置き、肘で胸を下からすくい上げるように回し、肩甲骨を動かす(寄せる)
3. 肩に手を置き、腕を後ろから前に大きく回し、前で両肘を近づけて胸をすぼめる

・腕のストレッチ
正座をして、指先を膝側に向けて前に手をつき、腕を伸ばす

・腰回し
肩幅程度、足を開いて立ち、手で腰を支えて、左右に腰を回す

産後の対策②|腹横筋エクササイズのやり方

産後の1ヶ月健診で問題がなく、体が回復してきたら「腹横筋を鍛えるエクササイズ」をしてみましょう。よくある上体を起き上がらせるような腹筋運動は妊娠中や産後はNGです。
※参考:産後の腹筋の状態

① 基本姿勢を取る:仰向けに寝そべり膝を立てる
② 腟を引き上げ息を吐く:軽くあごを引き、腟をおへその方に引き上げる意識をしながら「はぁ〜っ」と呼吸の音がするように息を吐き切る
③ 繰り返す:息を吸ってまた②の動作をすることを10分ほど繰り返す

腟をへそ側に持ち上げるような動きは、産後の尿もれなどの原因となる骨盤底筋の機能低下の対策にもなります。

まとめ

産褥期といわれる産後6~8週はゆっくり体を休め、まずは回復のために心と体をいたわる生活をすることが大切です。栄養と睡眠を十分にとり、心身共にできるだけ負担をかけないように過ごしましょう。そして何か健康上の不安が生じた場合は、遠慮せず主治医に連絡をとるようにしましょう。

(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気がみえるVol.10産科 第4版, p366-7, メディックメディア, 2018.
[*2]日本産科婦人科学会:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, p103, 2018.
[*3]松戸市子育て情報サイト「まつどDE子育て」ママパパ学級テキスト, 4.産後の体操
・松峯寿美「やさしく知る産前・産後ケア 」高橋書店, 2019.
・「臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイドーいまのトレンドを逃さずチェック!, 医学書院, 2018.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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