【医師監修】産後ダイエットはいつから始めるべき?どんな運動をしたらいい?
妊娠・出産で増えた体重や変化した体型を早く戻したいと思ったとき、まず頭に思い浮かぶのがダイエットでしょう。ですが、産後すぐは本格的なダイエットはおすすめできません。この記事では産後の運動や気をつけるべきことを中心に、産後ダイエットをいつからどのように始めるといいのか紹介します。
産後ダイエットは産褥期を過ぎてから
本来の「ダイエット(diet)」は食事や食べ物を意味する言葉ですが、日本では痩せるために食事内容を制限したり運動したりすることを指して使われます。産後の場合、ダイエットのための運動は必ず「産褥期」(さんじょくき)と呼ばれる体が回復する期間を過ぎてから行いましょう。
産褥期は身体を休める期間
「産褥期」は子宮が元の大きさに戻るために収縮する(子宮復古)など、出産のあと体が妊娠前の状態に回復していく期間のことで、産後6~8週までを指します。
産褥期では、子宮復古のほか、腎機能の正常化、出産時の出血が多かったことによる貧血の解消など、全身が非妊娠時の状態へ戻っていきます。出産は体に大きなダメージを与えるため、痛みや疲れが続く時期でもあります。この期間は体の回復を妨げないために休養を最優先に考えてください。
体調がよければ、産後すぐからできる「産褥体操」で体を動かしていきましょう。産褥体操はダイエット目的で行われるものではありませんが、体の回復を促してくれます。痛むところがあれば無理に動かさず、少しずつ体操の種類や回数を増やしていきます。
妊娠経過や出産の状況、産褥経過などで医師から産褥期の運動の可否について指示があれば、それに従ってください。くれぐれも自分のペースで無理をしないことが大切です。
なお、産褥期については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶【助産師解説】産褥期ってなに?産後の肥立ち?産褥期のママの心身と過ごし方
経腟分娩の場合は1ヶ月健診後を目安に
経腟分娩(けいちつぶんべん、赤ちゃんが産道を通って生まれてくる出産のこと)では、産褥期が明ける少し前の1ヶ月健診が、ダイエットのための運動を始める目安になります。
子宮復古には6週間ほどかかりますが、4週間を過ぎれば元の大きさにかなり近づいてきます[*1]。会陰部を切開した場合にも、4週間ほどすれば回復することがほとんどです。
悪露(おろ)がおさまっていて、1ヶ月健診で問題がなければ、体調に合わせて徐々にストレッチや全身を動かす体操を加えていきましょう[*2]。急に激しい運動をするのではなく、少しずつ運動の幅を広げていきます。
帝王切開の場合は1~2ヶ月後を目安に
帝王切開で出産したママは、術後1ヶ月間は日常動作レベルの活動量にとどめ、運動は1~2ヶ月後からにしましょう。
手術の後はベッド上で寝て過ごすのではなく、歩行など日常の動作で体を動かすようにしたほうが良いとされています。初めから激しい運動をするのではなく、6週間ほどかけて徐々に妊娠前の活動状態に戻るようにします。
本格的な運動を始めるのは1ヶ月健診で医師に確認してからにしましょう。回復には個人差があるので、体が辛いときは2ヶ月以降にしてもいいでしょう。
産後ダイエットを成功させるポイント
「早く妊娠前の体に戻さねば!」と、はやる気持ちもあるかと思いますが、産後ダイエットに焦りは禁物です。ダイエットを成功させるために、知っておきたいコツを紹介します。
骨盤ケアは不可欠
出産の際、ママの骨盤まわりの靭帯は骨盤を開きやすくするためにホルモンによって緩められています。産後は自然に元に戻っていきますが、うまく戻らないと腰痛や恥骨痛、尾てい骨痛の原因に。こうした痛みがあると動くのが辛くなり、日常生活や運動の妨げになってしまいます。
産後は正しい姿勢を意識して、足を組む、斜めに座わるといったポーズは控えましょう。また、骨盤底筋が弱くなると子宮脱(※)や排尿障害が起こることもあります。こうしたトラブルを予防するためにも産後は骨盤底筋を鍛える体操を行いましょう。
※子宮脱:子宮が正常の位置より下がり、腟の入り口から子宮の一部または全部が出ている状態
骨盤底筋体操のやり方は、このあと「尿もれ対策にも!骨盤底筋を鍛える運動」でご紹介します。
お腹の筋トレには注意
産後のお腹の筋肉は「腹直筋離開」(ふくちょくきんりかい)という状態になっています。腹筋は左右に分かれていて、その間に白線と呼ばれる組織があります。これが妊娠中に分泌されるホルモンの影響で伸びてしまい、腹筋が左右に広がってしまった状態が腹直筋離開です。
腹直筋離開が回復しないうちにハードな腹筋運動をすると、腹圧があがって腹直筋離開が進んでしまうことが懸念されます。また腹筋運動としてよくある「仰向けに寝て上体を起こす」という動きは、腹圧がかかって骨盤底筋に負荷をかけるため、尿漏れなどのトラブルにつながる可能性も。腹筋が回復していない産後間もないうちから腹筋運動をするのは控えましょう。
無理なダイエットは禁物
減量のために食事量を減らそうとする人もいるようですが、産後は特に、食事を極端に減らして痩せようとする方法は、栄養が偏るためおすすめできません。産後の回復のためにはバランスの良い食事が必要です。
鉄欠乏性貧血のリスクを高めることも
産後は食事から鉄分をしっかり摂取し、貧血を予防することも大切になります。出産時の出血が多かったり、もともと貧血ぎみだったため妊娠や出産でさらに重い貧血になっていたりすることがあります。そうした場合に、産後に偏った食生活をすると、貧血が改善されないまま続いてしまう恐れがあるのです。
体内で鉄が減ってしまうと、酸素を運搬する力が低下し、疲れやすい、頭痛、息切れ、運動機能の低下といった症状があらわれます。食事からの鉄を摂取することを心がけ、鉄欠乏貧血を予防しましょう。動物性食品と植物性食品をバランスよく食べることも大切です。特定のものばかり食べると栄養バランスが崩れてしまうので、偏った食べ方はおすすめできません。
産後の貧血や対策について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
▶︎産後の貧血 | 原因と鉄分不足への対処法
特に授乳中のママは注意
特に授乳している人は注意しましょう。授乳中はふだんより1日あたり350kcalほど多くのエネルギーをとることが推奨されています[*3]。また、母乳の量と栄養を保つために、鉄をはじめ、ビタミン、ミネラルなどの栄養素がより多く必要となります。ママ自身の健康のためにも産後に無理なダイエットは禁物です。
ジムに通えなくても大丈夫!おすすめの産後ダイエット
産後は赤ちゃんのお世話で忙しく、ジムに通う時間を作るのも一苦労。赤ちゃんと一緒に家にこもりがちにもなるケースも少なくありません。ここでは自宅や散歩でできる産後ダイエットにおすすめの運動を紹介します。
ぽっこりお腹を改善する筋トレ
体が充分回復したら少しずつ腹筋のトレーニングを進めてみてください。
やり方
①まず仰向けに寝て膝を立てます。
②息を吐きながら、お腹をのぞき込むように上半身をゆっくり起こします。
③上半身を元の位置に戻します。このとき、背骨を1本ずつ床につけるように意識してゆっくり下していきましょう。
大きな動きではありませんが、腹筋にはしっかり負荷がかかっています。きつくても呼吸を止めず、勢いをつけずにゆっくり上半身を起こしましょう。上体は完全に起こす必要はありません。まずは10回をめざすところからスタートし、慣れてきたら10回を1セットにして、徐々に回数を増やしていきましょう。
尿もれ対策にも!骨盤底筋を鍛える運動
骨盤底筋を鍛えるケーゲル体操は産後の尿漏れ予防になります。
やり方
①まず仰向けに寝て足を肩幅に開き、膝を立てます。
②次に尿を途中で止めるような感覚で、腟や尿道付近の筋肉を締めます。
③そのまま5〜10秒キープしてから、5〜10秒ゆるめます。
④この締めてゆるめる動きを10回繰り返します。
これを1日に3セット以上行いましょう。慣れれば座った姿勢でもできるようになります。ケーゲル体操は毎日続けて行うことが大切です。朝起きたときと夜寝る前に布団の上で行うようにするなど、日常生活と結びつけて習慣にしましょう。
ケーゲル体操については、以下の記事も参考にしてください。
▶【医師監修】骨盤底筋を鍛えて尿もれを予防「ケーゲル体操」について知りたい!
赤ちゃんとの散歩も立派な運動に
忙しい中で効率よくダイエットするために、赤ちゃんと過ごすなかにも運動の時間を設けましょう。赤ちゃんとの散歩はウォーキングのチャンス。歩きやすい靴を履き、姿勢を正して足速に歩けば、エネルギーを消費するだけでなく血液循環もよくなります。抱っこひもでもベビーカーでも構いません。
赤ちゃんが散歩に行けるようになったら、過ごしやすい時間帯を選んで散歩に出かけましょう。週に1回数時間歩くよりも、10〜30分ずつでも毎日歩く方がダイエットには好都合。習慣として続けていけるように、最初は楽しみながら、無理なく続けられる時間でスタートしましょう。
まとめ
産後ダイエットは、すぐに食事制限や激しい運動をするのではなく、産後の体をいたわりながら軽い運動と食事の栄養バランスの見直しから始めていくことが大切です。疲労回復と赤ちゃんのお世話を優先しつつ、赤ちゃんと散歩をしたり簡単にできるストレッチをしたりと、楽しみながら自然に体重を戻していくことを目指してくださいね。
(文:佐藤華奈子/監修:浅野仁覚 先生)
※画像はイメージです
[*1]『病気がみえる vol.10 第3版』メディックメディア、p.363
[*2]松戸市子育て情報サイト「まつどDE子育て」ママパパ学級テキスト
[*3]厚生労働省:日本人の食事摂取基準2020年版 Ⅱ 2対象特性「妊婦・授乳婦」
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます