【医師解説】赤ちゃんのうんちの色で病気がわかる? 注意が必要なとき、病院で伝えて欲しいこと
うんちの状態はよく「健康のバロメーター」と言われますね。毎日のオムツ替えで状態を確認するママ・パパも多いのではないでしょうか。うんちの色がいつもと違うと病気ではないか心配になってしまいますが、気を付けたほうが良いのはどんなときなのでしょうか。小児科医の坂本昌彦先生に解説してもらいます。
赤ちゃんの便の色について
保護者の多くは「赤ちゃんの便は黄色いもの」と思っています。しかし、実は赤ちゃんの便の色には色々なパターンがあります。例えば、生まれたときは「黒緑色(胎便)」、次第に「黄緑色」の便になり、生後5日を過ぎると「普通便」になります。でも、それだけではありません。
母乳栄養児とミルク栄養児でも便の色は変わってきます。白い便には注意と言われるし、赤くなることもあるし……。便の色は個人差も大きく、育児本の写真の色に我が子の便の色が当てはまらないかも、と思い始めると心配の種は尽きないですね。悩むのはごもっとも。
今回はそんな「赤ちゃんの便の色」についてお話しします。
緑、白、赤、黒……うんちの色の原因と注意したいとき
まず、赤ちゃんの便の色のパターンとして、大きく分けて「黄色」「緑色」「白色」「赤色」「黒色」があります。通常、赤ちゃんの便は胆汁に含まれるビリルビンという色素で黄色に見えます。したがって「黄色は正常な色」です。黄色ではないときに不安になるのですね。
以下に、黄色以外のうんちの色について一つ一つ解説していきます。
1.緑色便
赤ちゃんのうんちはときに「緑色」に見え、ぎょっとすることがあります。緑色のうんちの出る原因は何なのでしょうか。
心配ないことが多い。胃腸炎の可能性がないかには注意を
まず、生まれた直後に出る「深緑色の胎便」は、胎児の皮膚や胆汁などの成分からなります。生後5日くらいまでは「移行便」といって「黄緑色~緑褐色」の便になり、その後正常になっていきます。この時期は産院にいて、助産師さんからも正常だと教えてもらえることが多いため、不安になることはそれほど多くないかもしれません。
便秘のときや排便から時間が経った便でよく起こる
退院して自宅に戻った後で、黄色になっていた便が再び緑色になったとき、心配になる保護者の方が多いようです。しかし、ざっくり結論から言うと、緑色の便は基本的にそれほど心配する必要はありません。
便が緑色になる原因は、胆汁に含まれるビリルビン(※)が空気に触れて酸化するためです。したがって、便秘で長期間お腹の中に溜まっていたり、排便後おむつの中で時間が経った便は酸化されて緑色になるのです。
※ビリルビン:赤血球の中にあるヘモグロビンが壊れるとできる色素。肝臓で処理されることにより水に溶けるようになって、胆汁の成分として腸に排泄される。
母乳とミルクでも腸内環境や便色に違いが
また、母乳栄養児とミルク栄養児でも、便の色は異なります。
母乳栄養児の腸内細菌はビフィズス菌が主体で淡黄色ですが、ミルク栄養児の腸内細菌はビフィズス菌は母乳栄養児より少なく、大腸菌や腸球菌、嫌気性菌も見られるなど複雑で、緑色便が主体です。緑色の原因としては、ビリルビンの他にミルクに含まれる鉄分の影響もあると考えられています。月齢が進むにつれて、緑色便の頻度は増えていきます。もちろん緑色野菜を食べた後に緑色の便が出る場合もあります。
ここまでで説明した緑色便はいずれも病的なものではないため他に症状がなければ経過観察で良いのですが、ひとつだけ注意が必要です。それは感染性胃腸炎などの症状(嘔吐や下痢、活気不良など)がある場合です。
この場合、腸の動きも悪く食物も消化不良となり、緑色など普段と異なる色になることがあります。緑色便が出たら、嘔吐や下痢、活気がないなどの症状がないかを確認しましょう。
2.白色便
生後数ヶ月までの赤ちゃんの便の色で、注意が必要なのは白色便です。その理由を説明します。
赤ちゃんの便で用心したい色
便が黄色いのはビリルビンという成分が原因とお伝えしましたね。白色~薄い黄白色便では、ビリルビンを含む胆汁が便に十分に含まれていないことを意味します。白色便と一口に言っても、クリーム色、薄いレモン色、灰色など様々なパターンがあります。
これらの色の便が出る場合には、肝臓などの病気のせいで腸の中にビリルビンが排出されていない、もしくは激しい下痢のためにビリルビンが十分に混じる時間もなく便が排泄されている可能性があります。
肝臓の病気が原因の白色便に注意
特に最初は普通の黄色だったのが、次第に薄い黄色や灰色に変化してきた場合には要注意です。胆道閉鎖症(※)などの肝臓の病気の場合、生後数週間で徐々に白色の便に変化するためです。
この胆道閉鎖症はとても怖い病気で、なるべく早く(生後2ヶ月以内)に手術しないと肝臓の機能が悪くなります。そうすると肝硬変が進んで生存率が下がってしまうのです。だからすぐに病院や乳児健診で発見して、早く手術する必要があるのです。
※胆道閉鎖症:肝臓から十二指腸まで胆汁が通る管(胆管)が原因不明の炎症でふさがり、肝臓から腸へうまく胆汁を排泄できなくなる病気。
この胆道閉鎖症をできる限り早く発見するため、2012年度から母子手帳に便色カードの掲載が義務になりました。医療機関では、1ヶ月健診で受診した保護者に問診して便の色を確認します。答えるときは医師に便の色を番号で伝えてください。以下に具体的な便色カードの使い方をご紹介します。
便色カードの確認方法
☑ 日中の明るい部屋で、おむつに付いた便にカードを近づけて色を見比べてください。
(夜でも、昼光色の明るい照明の部屋でなら比べられます)
☑ 母子手帳には、便色を3回(生後2週、生後1ヶ月、生後1~4ヶ月)記入する欄があります。必ず3回とも記入しましょう。
☑ 生後1~4ヶ月の欄の記載時期は、生後2ヶ月がお勧めです。胆道閉鎖症の多くが生後2か月までに淡黄色便になるためです。
☑ 1~3番に近い場合はすぐに医療機関にご相談ください。1ヶ月健診を行った病院、もしくは小児科専門医が常勤する病院の小児科を受診しましょう。
☑ 4~7番に近い場合は、その後1~3番に近づくようなら受診して相談してください。
☑ 4番だったのがその後5~7番になるようであればまず胆道閉鎖症の心配はありませんが、生後5ヶ月になるまでは便色チェックを続けてください。
「ウイルス性胃腸炎」で白色便になることも
白色便と胆道閉鎖症のお話をしましたが、肝臓に問題がなくても激しい下痢のためビリルビンが十分に混じる時間がない場合にも、便が白くなることがあります。例えば嘔吐を伴う白色下痢便の場合です。このような場合には、「ウイルス性胃腸炎」の可能性があります。
便が白くなるのはロタウイルスだけではない
特に「ロタウイルス感染症」の場合には、便が白くなることが多く、これはよく育児本などにも載っているためご存じの方もいらっしゃるかもしれません。でも、実は「ノロウイルス」などロタウイルス以外のウイルスが原因の胃腸炎でも、時々白色便になることは知っておいてもよいでしょう。
3.血便・黒色便
最後に説明するのは便に「血液が混じっている場合」です。大人の血便では大腸がんなどが疑われますが、赤ちゃんの血便で注意が必要なのは別の病気です。
「緊急度の高い血便」と「あまり心配のない血便」
「血便」と言えば赤い色と思われるでしょう。でも「黒色便」も血便です。血液は胃液などの消化液と混じると黒く変色するためです。
食べたものの影響で血便に見えることも
「便に赤い血が混ざる」という訴えで外来を受診される保護者はけっこう多いです。大事な我が子の便に血が混じっているとなれば一大事ですよね。ご心配はごもっともです。
ただ、実際には赤色や黒色でも血便ではないこともあり、まずはそもそもその便が血便かどうかを確認することがスタートです。例えば、鉄剤、ジュース、ブルーベリー摂取などで便の色が黒くなったり、トマトなど赤色野菜で赤色の便が出ることがあります。血便なのかそうではないか、分からずに不安な場合はもちろん受診してご相談ください。
出産時の影響で出る血便もある
血便の原因も様々です。
生まれてすぐに血便が出る場合は、出生時に赤ちゃんにかかったストレスの影響で「一時的に胃の粘膜で出血した」ケース、「分娩時に母親の血液を飲み込んだものが便として出てくる」ケースなどがあります。いずれも黒色便として出ることが多く、退院までに医療機関で発見されることがほとんどです。
乳児の肛門近くは出血しやすい
退院後、生後1~2ヶ月を過ぎると、時々便の中に「線状」「点状」の出血が混じることがあります。その多くは綿棒刺激や浣腸、排便時に粘膜で擦れて少量出血したケースです。
乳児は皮膚や粘膜が弱く、肛門の近くにびらん(ただれ)もできやすいため出血しやすいのです。赤ちゃんが機嫌も良く、哺乳も普段と変わりなければ特に処置をしなくても自然によくなりますので、心配しなくても大丈夫です。
「緊急性が高い」のはどんな血便?
ここからは緊急で対応しなくてはいけない血便のお話です。
「腸重積」の場合
もし、赤ちゃんの機嫌が悪く、嘔吐して「イチゴジャムのような血便」を出した場合は「腸重積」の可能性があります。腸重積は生後6ヶ月~2才くらいの子に多く、腸の一部が前後の腸の中に重なって入り込んでしまう病気です。放っておくと腸が壊死してしまうため、緊急で処置が必要な怖い病気です。
腸重積は血便の症状だけということはなく、「腹痛」を伴います(始めのころは痛んだり治まったりし、だんだんその間隔が短くなるのが特徴)。しかし、この病気が起きやすい年齢はお腹が痛いと言えない年齢なので、機嫌が悪くなったりぐったりします。吐くこともあります。また最初は血便がないこともあります。そのため、赤ちゃんがぐったりして嘔吐が続く場合はすぐに病院受診が必要です。
「ミルクアレルギー」の場合
また、ミルクを始めて数日後から、嘔吐や下痢、血便を繰り返すことがあります。その場合は「ミルクアレルギー」のケースもあります。血便がなく、下痢や体重が増えなくなることで気づかれることもあります。この場合には病院で診断を受け、アレルギー用ミルクに変更する必要があります。
ここまで緊急度の高い血便のお話をしましたが、ほとんどの血便は自然によくなるので心配は要らないことをもう一度強調しておきたいです。
うんちの色がおかしい場合、急いで受診すべきなのはどんなとき?
ここからは便の色が心配なときの受診の目安と、受診の際のポイントについてお話しします。
受診の目安
まず受診の目安ですが、次の通りです。
夜間・休日でも急いで受診が必要
・オムツ全体に血便(黒色便)が広がっている
・イチゴジャムのような血便が出ている
・本人の機嫌が悪い(ぐったりしている)
・何度も嘔吐を繰り返す
診療時間内に受診
・便に少量の血が混じっているが、本人の機嫌や哺乳意欲は問題ない
・便の色が白っぽいが、本人の機嫌や哺乳意欲は問題ない
受診の際のポイント
まず、医療機関で相談を受けるとき、「どのような色の便か医師も実際に確認したい」ことを覚えておいてください。
うんちをスマホで撮影しておこう
以前はオムツを持参するよう勧めていましたが、便の色は時間とともに変わり、病院の診察までには時間がかかることがあります。
最近はスマホのカメラ機能も向上しているため、あらかじめ自宅で写真を何枚か撮って見せてもらえると分かりやすく、またオムツを持ち運ぶ必要もないので衛生的です。試してみてくださいね。なお光の加減で色の印象は変わりますので、写真を撮る際には日中の明るい部屋か、夜であれば昼光色の明るい照明の部屋で撮影してください。
医療機関で伝えてほしいこと
スマホの画像とオムツを持参した上で、以下について医師に伝えてください。
・いつから便の色が気になるか
・普段の便の回数と今回の変化(水っぽくなってきたとか、色の変化など)
・機嫌は良いか
・哺乳具合(食欲)は問題ないか(体重増加は順調か)
・食事内容(母乳栄養かミルクか)
・薬を内服していないか(抗菌薬や鉄剤)
・他に症状はないか(嘔吐や下痢、発熱など)
・周囲の家族に同様の症状(下痢など)はないか
まとめ
今回は、赤ちゃんの便の色についてお伝えしました。便の色には色々なパターンがあるので分かりにくく、不安もあるかと思います。気になる場合にはかかりつけ医の先生に遠慮なくご相談くださいね。
(執筆・監修:坂本昌彦 先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます