【医師監修】産後に生理の量は増える? 関係する要因と注意点
産後しばらくして、久しぶりに生理が来たと思ったら、量が産前よりも多くて驚いたママもいるかもしれません。産後の生理のことや産前と比べて量の変化があったとき、考えられる要因、診察の目安などについてお話しします。
産後の生理再開までに起こること
妊娠・出産で大きく変化した子宮などの性器も、産後、時間をかけてふっくりと妊娠前の状態へと戻っていきます。これを「子宮復古」といいます。
まずは「子宮復古」の経過の目安について見ていきましょう。
子宮がもとに戻るまで
出産直後は大きかった子宮も、産後6週くらいでもとの大きさに戻っていきます。
産後2~3日まで
子宮は約1,000g。赤ちゃんが生まれた後もまだ大きい状態です。
子宮頸部は2指分開いています。
悪露(産褥期に性器から排出される分泌物)は血液成分が多く含まれており、赤色をしています。
産後1週ごろ
子宮はこぶし大にまで小さくなり、約500gになります。
子宮頸部は少し閉じてきたものの、まだ1指分開いています。
悪露は褐色へと変わります。
産後2~3週ごろ
子宮はさらに小さくなり、約300gとなって子宮内膜が再生します。
悪露はさらに色が薄くなって淡黄色になります。
産後4週ごろ
子宮はますます小さくなって、約100gになります。妊娠前よりも少しだけ大きい状態です。
子宮頸部は閉じます。
悪露は子宮内膜線からの分泌液が多く含まれた白色になります。子宮内膜腺は子宮内膜にあり、ここからの分泌液は精子や受精卵に栄養を与えるなどの役割があると言われています。
産後6週ごろ
子宮は妊娠前と同じ鶏卵サイズになり、約70gとなります。
この頃、悪露はなくなります[*1]。
赤い悪露が長く続いたら要注意!
悪露の変化には個人差はありますが、産後1~2週間経っても赤い悪露が続いていたら、子宮復古が遅れている可能性があります(子宮復古不全)[*2]。
初産のママよりも複数の出産経験があるママ、母乳をあげているママよりもあげていないママの方が、子宮復古不全は起こりやすいです。
悪露以外の症状としては気だるい程度ですが、長引くと貧血や発熱を起こしやすくなります。
子宮復古不全が疑われる場合は様子見をしないで、出産時の病院やかかりつけの産婦人科で診察を受けましょう。
悪露について、くわしくは下記の記事も参照してください。
産後の生理はいつ始まる?
子宮の大きさが妊娠前に戻っても、すぐに生理が再開するわけではありません。
産後もしばらくは生理に関係するホルモンの分泌が少ないため、卵巣機能はすぐには戻りません。そのため、産後数ヶ月は生理がないのです。
なお、母乳をあげているママは母乳をあげていないママよりも、生理の再開が遅くなります。
母乳をあげている場合
母乳をあげていると、母乳を作り出すホルモン「プロラクチン」の分泌が増えます。
プロラクチンには卵巣の機能を抑える働きがあります。そのため母乳をあげているママは、あげていないママよりも生理が再開しにくくなるのです。
母乳をあげている場合、生理が再開する目安は産後3~4ヶ月ごろです。
特に母乳だけで育てている場合は、産後90日以降に初めて排卵するケースが多く見られます[*1, 2]。授乳をやめてから生理が再開する場合もあります。
粉ミルクだけをあげている場合
母乳はまったくあげずに粉ミルクで育てている場合は、産後2ヶ月くらいで生理が再開することが多いでしょう。産後80日になる前から排卵も行われるようになります。
産後、生理の量が増えることはあるの?
産後に生理の量が増えるのは、自然なことなのでしょうか?
考えられる要因を紹介します。
ホルモンバランスの変化などで増えることも
産前と産後で生理の量に変化はありましたか?
子育て中のママたちに「産前と産後で生理の量に変化があったかどうか」聞いたところ、最も多かったのは「変わらない(71%)」でした。ただ、「少なくなった(18%)」「多くなった(11%)」という回答もありました。
全体の1/3ほどのママが、産前と産後で生理の量が変化したと感じているようです。
生理の量が増える要因
生理の量が多過ぎることを「過多月経」と言います。
妊娠前に比べて生理が多い場合、次にあげるような要因による影響が考えられます。
ホルモンバランスの乱れ
産後は体の戻り具合や育児の疲れ・寝不足などの影響で、ホルモンバランスが乱れやすいものです。
そのため、一時的に生理の出血が増えることがあります。
子宮のトラブル
子宮筋腫、特に粘膜下筋腫になると、生理の量が増えることがよくあります。
また、子宮腺筋症、内膜ポリープ、子宮内膜増殖症、子宮体がんなども生理の量が増える原因となります。
その他
まれに血液の病気や肝臓、腎臓などの病気により過多月経が起こることもあります。また、血液が止まりにくくなる薬の使用などでも起こります。
多すぎるかどうかの目安は?
自分が過多月経になっているかどうか、厳密に判断するのは難しいものですが、生理の量が多すぎるのではと気になったら、次のような点に注意します。当てはまるものがある場合は、産婦人科で診てもらいましょう。
□ 1時間以内に昼用ナプキンから経血があふれてしまう
□ レバー状の血の塊が出てくる
□ タンポンとナプキンなど、2種類の生理用品を同時に使わないと経血があふれる
□ 昼でも夜用ナプキンを使う日が3日以上続く
□ 夜用ナプキンをつけていても、夜中に起きて交換しないと朝までにあふれるくらい出血する
□ 貧血と診断されたことがある
□ 生理中は、めまいや動悸、疲れやすさなどの症状がみられる
生理の期間や周期の異常
また、生理の期間が長すぎる、生理周期が短すぎる場合も体になんらかの異常が起きている可能性があります。下記に当てはまるものがある場合も、あまり放っておかずに一度受診するようにしましょう。
□ 生理期間が長すぎる:生理が8日以上続く場合は、「過長月経」と呼ばれる生理の異常と考えられます
□ 生理周期が短かすぎる:25日未満の周期で生理が繰り返される場合は、「頻発月経」といい、排卵がない状態になっていることも少なくありません
生理不順・生理が来ない時はどうする?
生理の量が多過ぎると感じる人がいる一方で、産後、生理が来なくて心配な人もいることでしょう。
生理不順や生理が来ない時の目安や対応をお伝えします。
産後1年以上、不規則だったら受診して
産後1年以上なかなか生理が来なかったり、不規則な場合も一度受診しましょう。
生理がまったく来ない場合
通常、3ヶ月以上生理が来ない場合は、「無月経」と言います。
産後は長い期間、無月経になる人もいます。ストレスや体重減少など、原因はさまざまです。
ただ、無月経が長く続くと、骨量が低下するなどの影響が出てくる可能性もあります。
産後直後しばらく生理がないのは問題ありませんが、出産から1年以上経っても生理が再開しない場合は、一度受診するようにしましょう。
生理周期が長すぎる場合
正常な生理周期は25~38日が目安です。39日以上3ケ月未満の周期で次の生理が来る場合は、「希発月経(きはつげっけい)」と言います。[*1, 2]
生理期間がかなり短い場合
正常な生理は3~7日続きます。生理期間が2日以内の場合は、「過短月経」と呼ばれる生理の異常と考えられます。
生理の量がとても少なくなった場合
生理の経血が妊娠前に比べて、少なすぎることもあるかもしれません。正常な経血量は生理期間中に合計で20~140mLと言われています。
経血の量を正確に知るのは難しいものですが、少なすぎが疑われるのは、例えば、生理用ではなくおりもの用シートで済んでしまったり、2日目なのに1日ナプキンを交換しなくても大丈夫といった状況が考えられます。
ちなみに、ふつうの日の生理用ナプキンに少しだけ経血が付いていれば1〜2mL、半分ぐらいなら3mL前後、全体的に付いていたら5mLぐらいと考えると良いでしょう(製品によって実際の量は異なります)[*3]。
経血が少なすぎる場合には、子宮の中が癒着していたり、ホルモンバランスが崩れているなどの原因が考えられます。
産後の生理不順について、詳しくは下記の記事も参照してください。
生理が来る前に妊娠することも
産後は生理が再開する前に、排卵が再開することもあります。
そのため、生理が来る前に妊娠することもあります。
生理が再開していなくても、産後は避妊を心がけておくと安心ですね。
まとめ
産後2~3日までは血が多く含まれている赤い悪露が出ますが、産後1週間ほどで褐色になり、産後4週で白色になって、産後6週ごろには悪露がなくなります。
産後1~2週間経っても赤い悪露が出続けていたら、子宮が順調に戻っていないサイン。必ず産婦人科に相談しましょう。
生理が再開する目安は、母乳育児の場合は産後3~4ケ月ごろ、粉ミルクだけの場合は産後2ケ月ごろ。生理が来ても周期が乱れていたり、生理の量が多すぎたり少なすぎたり、生理期間が早すぎたり短すぎる場合も注意が必要です。産後1年たっても生理がなかったり生理不順が続く場合は、健康に影響することがあるので、病院で診てもらいましょう。産後は赤ちゃんのお世話で毎日忙しく、つい自分のことを後回しにしやすいものですが、ママの体も大切に過ごしてくださいね。
(文:大崎典子/監修:窪 麻由美先生)
※画像はイメージです
[*1]「病気が見えるvol.10 産科 第4版」メディックメディア
[*2]「NEWエッセンシャル 産科学・婦人科学 第3版」医歯薬出版株式会社
[*3]Magnay JL, O’Brien S, Gerlinger C, et al. : A systematic review of methods to measure menstrual blood loss, BMC Women's Health 18:142, 2018.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます