妊婦は生クリームを食べちゃだめ？リステリア感染するって本当？【管理栄養士】

結論からいうと、生クリームは妊娠中も食べてOK！　でもいろいろと心配な話を聞いて不安な人もいるでしょう。この機会に生クリームについて正しく知っておきましょう。

私たちが「生クリーム」と呼ぶクリームは、含まれる脂肪分によって3つのタイプに分けられます。ひとつは乳脂肪のもの、もうひとつは植物性脂肪のもの。さらに乳脂肪と植物性脂肪を混合したものがあります。厳密には「生クリーム」は「生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」で、「脂肪分は18％以上」のものと省令で決められています。これに対して植物性脂肪のものを「ホイップクリーム」と呼び分けることもあります（※）。

「生」と呼ばれるので細菌などによる食中毒が気になるかもしれませんね。

妊娠中に注意したい食中毒の原因菌にリステリアがあります。妊娠中に感染すると、胎盤から胎児へ感染し、流産や生まれた赤ちゃんに影響が出ることがあるためです。このリステリア食中毒のリスクがある主な食品は、生ハムのように加熱しないで食べる食肉加工品、スモークサーモンのような魚介類の加工品、殺菌していないミルクやナチュラルチーズです。一般に市販されている生クリームもホイップクリームも製造過程で殺菌されているので、リステリアの心配はありません。

産後の授乳中に脂肪分が多い乳製品や肉を食べても、母乳が脂っこくなることや乳腺をつまらせる原因となることはありません。乳腺炎のリスクには次のようなものがあります。

・赤ちゃんが飲みとれず、乳房に母乳が溜まる
・下着、抱っこひもなどによる乳房の締めつけ
・授乳姿勢が適切でなく、赤ちゃんがしっかり吸えていない
・疲れやストレス

妊婦中も生クリームを食べていいのですが、何も気にせず食べ放題とはいきません。次のことに気をつけてください。

上でも説明したように、生クリームは牛乳の成分から脂肪分だけ残したもの。やはりカロリーは高く、カロリーや脂質を摂りすぎるリスクがあります。ちなみに大さじ1杯（15g）のカロリーは約60kcal、脂質は約6.5g。100gあたりだと404kcalあります（乳脂肪の場合）。

さらにケーキなどに使うために泡立てたものはグラニュー糖などが加えられています。グラニュー糖を入れた場合、100gあたりの糖質が12.9gになり［*1］、糖分の摂り過ぎが心配です。食べる量は控えめにしましょう。

生クリームの賞味期限は紙パックの牛乳と同じくらいで、未開封で1～3週間程度。開封したらできるだけ早く使い切りましょう。冷凍保存もできますが、泡立てる前のクリームを冷凍すると解凍後はホイップすることができなくなります。ホイップした状態で冷凍しましょう。

なお、植物性脂肪のクリーム類の消費期限は1ヶ月程度と長めです。こちらと混同しないよう、賞味期限はよく確認しましょう。

生クリームをたくさん使用した洋菓子は、食べると胸やけを起こすことがあります。妊娠中は消化器の不快な症状が出る人も多いもの。脂肪分の多い生クリームは胃にたまり胃酸が逆流しやすいので、逆流性食道炎の症状がある場合、生クリームは控えめにした方が良いでしょう。生クリームより脂肪分の少ない牛乳やその他の乳製品であれば大丈夫です。

生クリームに関するよくある疑問についてまとめました。

妊娠中や授乳中に特定の食べ物を除去しても、赤ちゃんの食物アレルギーを予防する効果はありません。そればかりか、アレルギー発症を心配して乳製品など特定の食べ物を一切食べなくすると、お母さん自身の栄養状態に害が及ぶリスクがあります［*2］。生クリームを積極的に食べる必要はないですが、お腹の赤ちゃんのためにも幅広くバランスよく食べるようにしましょう。

妊娠中に食べたくなったもので性別がわかる、というウワサも耳にします。これはあくまで風説であって、赤ちゃんの性別によって妊娠中の食の好みが変わるという医学的な根拠はいまのところありません。
まだ見ぬ赤ちゃんがどんな子か、親としては気になるところですよね。でも、噂や迷信の類に振り回されず、赤ちゃんのためにまずはお母さんの健康維持に努めてください。

生クリームは食べすぎや賞味期限などに注意すれば、妊婦さんでも食べることができます。妊娠中は何かと食べるものに制限があり、嗜好品を我慢している妊婦さんも多いでしょう。食べてもいいものはおいしく食べながら、ストレスなくバランスの摂れた食事をして出産に備えてくださいね。

（文：佐藤華奈子／監修：川口由美子 先生）

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