
妊婦はもずくを食べても大丈夫?気になるヨウ素や食べていい量【管理栄養士監修】
つわり中でもさっぱり食べられることから、もずく酢がお気に入りになったという妊婦さんもいるはず。しかし、海藻類にはヨウ素という栄養素が比較的多く含まれているので、妊娠中は注意が必要と聞いて心配している人もいるでしょう。もずくは妊婦さんが食べても大丈夫なのでしょうか。
妊婦ももずくを食べていい! もずくのうれしい栄養素って?

もずくは、モズク科やナガマツモ科 に属する海藻です。「ほかの海藻にくっついて育つ=藻付く」に由来し、もずくと呼ばれるようになったと言われています 。
酢の物だけでなく、天ぷら、お吸い物などにしてもおいしいもずくですが、妊婦さんが食べてももちろん大丈夫! ヘルシーなイメージのもずくですが、どんな栄養素が含まれているのでしょうか。
妊娠中の便秘予防に役立つ食物繊維
もずくには、海藻に多く含まれるミネラルのほか、「フコイダン」や「アルギン酸」といった食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は便秘予防に効果的な栄養素といわれており、腸の働きを整えるなど、体内で有用な働きをすることが注目されています。食物繊維のことを、糖質、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンに続く「第6の栄養素」と呼ぶこともあるようです 。
妊娠中はホルモンバランスの変化や大きくなる子宮による消化器の圧迫、お腹が重たくなることによる活動量の減少(運動不足)などにより、便秘になりやすい傾向があります。非妊娠時は問題なかった人が便秘になることも 。
もずくに含まれているフコイダンやアルギン酸は、水溶性の食物繊維です。 水溶性食物繊維には、腸の粘膜に栄養を与えて腸内環境を整えたり、コレステロール値や食後血糖値の上昇をゆるやかにする、便をやわらかくするなどの働きがあるといわれています 。水溶性食物繊維を豊富に含むもずくは、妊婦さんにとってうれしい食品といえるでしょう。
なお、もずくのエネルギーは100gでも7kcal程度と低カロリー[*1]。そのため、カロリーを気にせず食事に取り入れられる点もありがたいですね。
妊娠中のもずくでヨウ素のリスクは?

魚介類や海藻類には、妊娠中に過剰摂取すると胎児やママ自身の健康に影響を与える可能性のある、「ヨウ素」という栄養素が比較的多く含まれています。もずくでも、ヨウ素の過剰摂取は気にしたほうが良いのでしょうか。
ヨウ素とは
ヨウ素はミネラルの一種で、甲状腺ホルモンというホルモンの合成に必要な栄養素です。甲状腺ホルモンは、代謝をはじめとしたさまざまな体の機能の調節のほか、妊娠中や授乳期には胎盤や母乳を通じて赤ちゃんに移行し、骨や脳の正常な発育に不可欠なもの。ですから、妊婦さんや授乳中のママにとって、適度な量のヨウ素を摂取することはとても重要です。
ただし、ヨウ素は不足しても多く摂取しすぎても体に良くない影響があるミネラルです。海産物を多く摂る習慣のある日本では、不足よりも過剰摂取のほうが心配です。 妊娠中にヨウ素の摂取量が多くなりすぎると、一過性クレチン症などの、赤ちゃんの甲状腺機能低下がみられたり、ママ自身にも甲状腺機能の低下がみられたりすることがあります 。
ヨウ素の過剰摂取にならないもずくの量は?

妊婦さんや授乳中の女性が1日に摂取してもよいとされるヨウ素の耐容上限量(注1)は、2,000μgまでとされています(通常の成人の場合は3,000μg/日)[*2]。
もずく(沖縄もずく)に含まれるヨウ素の量は、100g中に140μg[*1]。妊婦さんの耐容上限量を超えるのは、もずく1.5kg近くになります。実際は他の食品からもヨウ素を摂取していますが、それを考慮しても、常識の範囲内で食べる分にはもずくによるヨウ素の摂りすぎについて心配する必要はなさそうです。
ヨウ素の過剰摂取についてはもずくよりも昆布、特に「昆布だし」に気を付けたほうがよいかもしれません。昆布はヨウ素を多く含む食品のひとつで、昆布だしの場合、水出しで37g(大さじ2程度)、煮出しただしで18g(大さじ1程度)を超えると耐容上限量を上回ってしまいます[*1]。
妊娠中は普段昆布だしを使うところをかつおだしに置き換えるなどして、ヨウ素の過剰摂取を避ける工夫をしてみましょう。
妊娠中の昆布については以下の記事も参考にしてください。
▶︎妊婦は昆布をどれくらい食べてよい?上限量と食べ過ぎたときの対処法
妊娠中のもずくに関するよくある疑問
そのほか、妊娠中の人がもずくを食べる時に気になる疑問をまとめました。
もずく以外でヨウ素のリスクがある食べ物はある?

ヨウ素は魚介類や海藻類に多く含まれているので、さきほど紹介した昆布(昆布だし)、わかめなどを、たくさん食べすぎないように注意しておくとよいでしょう。
そのほかにもヨウ素を多く含むとされる食品をリストアップしてみました。以下の食品を食べる時は、大量に食べないように気を付けておくことをおすすめします。
・ヨード強化卵
・海藻類
・寒天を使った食品
・貝類、かに類
・タラ(タラを使ったかまぼこなども)、たらこ
・あん肝
ただし1日や2日、これらの食品を食べすぎたからといって、すぐに体に影響が現れるわけではありません。「食べすぎに注意」というのは、体に悪い影響が現れないように、事前に予防しておくための手段のひとつです。毎日毎日、大量に摂取しないように気を付けておけば、さほど神経質になる必要はないでしょう。
妊娠中のダイエットにももずくはよい?

本文 中には妊娠中、「ダイエットのためにもずくを積極的に食べたい」という妊婦さんがいるかもしれません。しかし妊娠中は、医師の指示がない限り、自己判断で食事制限などのダイエットをするのはNGです。
妊婦さんが体重を過度に気にするあまり、食事を制限してしまうと、栄養が不足して赤ちゃんの発育に影響が出ることがあります。また低体重で生まれた赤ちゃんは成人後、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりやすいという報告もあります。胎児発育不全や低出生体重児は、ママのやせすぎだけが原因というわけではありませんが、赤ちゃんへのリスクも高いため、妊娠中の無理なダイエットには注意が必要です。
妊娠中の食事はできるだけ栄養の偏りなく、バランス良く食べることが大切です。単純にもずくが好きだったり、食欲が抑えきれずハイカロリーなものや栄養の偏ったものを食べすぎたりしてしまう場合の対応策として、多少もずくを取り入れるのはいいかもしれませんが、その場合も、もずくだけでお腹がいっぱいにならないように、主食、主菜、副菜などでさまざまな食品を摂るようにしましょう。
まとめ

もずくはミネラルや水溶性食物繊維を含む、妊婦さんにとってうれしい食品です。普通に食べる分には、海藻類に多いとされるヨウ素の過剰摂取を心配する必要もなく、安心して楽しむことができます。食欲がない時にも、「もずく酢なら食べられる」という人もいるでしょう。つわり中にも頼りになるもずくを食べながら、楽しくバランスの良い栄養摂取を目指しましょう。
(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)第2章(データ)
[*2]厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 Ⅱ.各論 1.エネルギー・栄養素 ミネラル(微量ミネラル)p370
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます