妊婦はわかめを食べていい?目安となる量と「妊娠中のヨウ素」について【管理栄養士監修】
わかめは味噌汁、サラダ、酢の物など、さまざまな料理に合う海藻です。体にもいいといわれるためたくさん食べたくなりますが、妊婦さんや授乳中のママにとっては注意が必要なようです。どれくらいの量なら食べてもよいのでしょうか。
妊娠中はわかめの食べ過ぎには要注意! なぜ?
馴染み深い海藻であるわかめですが、妊娠中はあまりたくさん食べるのは避けたほうがよいとされています。その理由は、わかめなどの海藻類に多く含まれるヨウ素という栄養素にあります。
わかめに含まれる「ヨウ素」に注意
ミネラルの一種であるヨウ素は、甲状腺ホルモンというホルモンの合成に必要な栄養素です。甲状腺ホルモンは、体のさまざまな機能の調節のほか、妊娠中や授乳期には胎盤や母乳を通じて赤ちゃんに移行し、骨や脳の発育に関係するといわれています。そのためヨウ素は妊婦さんや授乳中のママにとって特に重要な栄養素のひとつで、 不足すると赤ちゃんの脳の発達に影響するとされていますが、海産物を多く摂る日本では不足する心配はまずありません。
一方で摂取量が多くなり過ぎても、赤ちゃんやママの甲状腺に影響を及ぼす可能性があるといわれています。
ヨウ素はわかめや昆布、ノリなどの海産物に多く含まれているので、それらを日常的に食べる習慣のある日本では、妊娠中のヨウ素の摂りすぎに注意が必要とされています。
妊娠中の摂取量目安|わかめ100gで上限に達する量のヨウ素が
・わかめ 原藻(生)=160μg
・乾燥わかめ 素干し(水戻し)=190μg
・カットわかめ 水煮(沸騰水で短時間加熱したもの)=72μg
・カットわかめ 水煮の汁=3.6μg
・湯通し塩蔵わかめ 塩抜き(生)=81μg
・湯通し塩蔵わかめ 塩抜き(ゆで)=20μg
・めかぶわかめ(生)=39μg
妊婦さんや授乳中の女性が1日に摂取してもよいとされるヨウ素の耐容上限量(注1)は、2,000μgまでとされています[*2]。そんなに食べることはなかなかないでしょうが、乾燥わかめの素干しを水で戻したものであれば、100gで妊婦さんの上限にほぼ達するくらいのヨウ素が含まれていることは、覚えておくとよいでしょう。
(注1)耐容上限量とは、この量を超えて習慣的に摂取した場合には、健康に悪影響をもたらすリスクがゼロではなくなることを表します。耐容上限量を超えたらすぐに健康を害するということではありませんが、習慣的に摂取する食品では、耐容上限量を超えないように注意が必要です。
わかめを食べ過ぎたらどうすればよい?
おいしくて栄養豊富だけれど、摂取量に注意が必要なわかめ。食べすぎてしまった場合はどうすればよいのでしょう。
連日にならないように気をつけ、他のヨウ素を含む食べ物に注意する
1日や2日、わかめを食べすぎたからといって、すぐに体に影響が現れるわけではありません。多少食べすぎた日があったとしても、慌てる必要はないですよ。
「海藻類の食べすぎに注意しましょう」というのは、そこに含まれるヨウ素の摂りすぎによる甲状腺への影響を避けるための方法のひとつです。体に悪い影響が現れないように、事前に予防しておくための手段ですから、「毎日毎日、大量のわかめを摂取しないように気を付ける」といった程度の、予防法のひとつとしてとらえておけるとよいのではないでしょうか。
また、下で解説しますが、ヨウ素を多く含むのはわかめだけではありません。わかめをちょっと食べ過ぎたなと思ったら、他のヨウ素を含む食品と併せて注意するといいでしょう。
ヨウ素を多く含む食品|昆布などの海藻、ヨード強化卵など
わかめ以外にも、ヨウ素を多く含む食品はあります。比較的多く含んでいるのは、昆布、ひじき、テングサといった海藻類のほか、ヨードを強化した卵、貝やえび・かに類、たら(加工品含む)やたらこ、あん肝などです。
そのほか、サプリメントに含まれていることも少なくありません。「ヨウ化カリウム」または「ヨウ化ナトリウム」という表記があれば、ヨウ素が含まれています。マルチビタミンやマルチミネラルといった名称で販売されているサプリメントに含まれているケースも多いようです。サプリメントは手軽に栄養素を摂取できるため頼りたくなる気持ちはわかりますが、妊娠中の安易なサプリメントの摂取は避けたほうがよいとされています(葉酸を除く)。栄養はできるだけ食事から摂ることを心掛け、サプリメントを使用する場合は医師などに相談のうえ、各栄養素の含有量を確認して服用することをおすすめします。
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妊婦もとりたい!わかめの効果
そんなわかめですが、適量であれば妊娠中の女性にとってうれしい働きの多い食材といえます。詳しく見ていきましょう。
食物繊維が妊娠中の便秘予防を助ける
わかめには食物繊維が豊富に含まれています。この食物繊維が、妊婦さんの悩みの種になることの多い、便秘の改善に役立つことがあります。
そもそも一般的に女性は、骨盤の形状の違い、月経周期によって分泌される女性ホルモンの影響などさまざまな原因により、男性よりも便秘になりやすいといわれています。さらに妊娠中は、女性ホルモンの影響が強まったり、妊娠後期になると子宮が大きくなることによって腸が圧迫されたりするといった物理的な要因が加わることで、それまで以上に便秘になりやすい傾向があるようです。
食物繊維は、この便秘を改善するうえで欠かせない栄養素とされています。特に、わかめなどに含まれる水溶性食物繊維は、穀類や野菜、きのこ類などに含まれる不溶性食物繊維よりも大腸内で発酵・分解されやすく、腸内環境を整える効果が期待できます。
ミネラルでむくみ対策が期待できる
わかめは、カリウムなどのミネラル成分も豊富に含んでいます。カリウムは、同じミネラル成分であるナトリウムと互いに作用し合って、おもに体内の水分量の保持や神経の伝達、心臓や筋肉の機能の調節などに重要な役割を果たしています。
また、カリウムには腎臓に働きかけてナトリウムの排泄を促進します。むくみが気になる妊婦さんにとっては、特にうれしい効果ですね。
低カロリーなので体重管理にも役立つ
水で戻したわかめは、100gでも10~20kcal前後と非常に低カロリー[*1]。そのため、「ついつい食べ過ぎてしまい、体重増加が止まらない!」という妊婦さんにとっては、上手に取り入れれば体重コントロールに役立つかもしれません。
まとめ
栄養豊富で、便秘の改善にも役立つわかめは、妊婦の味方になってくれる食材といえます。しかし、どんなに体に良い食材でも、偏った食べ方をすると良くない影響が現れることがあります。食べすぎに気をつけながら、上手に摂取できるとよいですね。
(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)
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