妊娠 妊娠
2021年04月27日 16:30 更新

妊婦はネギトロを食べてもいい?水銀・トキソプラズマのリスクは?【管理栄養士監修】

手巻きやどんぶりなどで食べるとおいしいネギトロですが、マグロが原料なので食べられるのか気になる妊婦さんもいるのでは? そこで、妊娠中にネギトロを食べてもいいのかどうか、ネギトロのどんな点に注意すると良いか、などをまとめました。

妊婦も食べたい「ネギトロ」

ネギトロ盛り

お寿司のネタなどとしても欠かせない「ネギトロ」は、マグロの身から作られます。妊娠中でも食べたい! という妊婦さんも多いでしょう。

ネギトロは生のマグロからつくられる

「ネギトロ」は、切り身をとった後のマグロからそぎ落した生の身をたたいて作られています。名前に「トロ」とありますが、マグロのトロそのものは使われていないことが多いようです。

また、「ネギ」は野菜のことではなく「身をねぎ取る」という言葉からとられているという説があります。スーパーや寿司店などによっては、「ネギマグロ」や「マグロたたき」という名前で販売されている場合もあるようですね。

いずれにしても、生のマグロが原料であることは確かです。妊娠中は寿司や刺身で生魚を食べることはなるべく避けるべきと言われていますが、ネギトロの場合、何かリスクはあるのでしょうか。

妊娠中のネギトロのリスク(1)食中毒

まぐろをさばく

生のマグロが原料のネギトロを妊娠中に食べた場合は、まず細菌や寄生虫などによる食中毒が心配です。

生ものによる腸炎ビブリオ・アニサキス感染

「妊娠中は、できるだけ生魚を避けたほうがいい」と、よく言われますね。これは、マグロをはじめとした魚介類には、腸炎ビブリオなどの細菌やアニサキスという寄生虫などがいて、生のままで食べると食中毒を起こす恐れがあるからです。

ただし、腸炎ビブリオは、60℃で10分以上を目安に十分加熱すれば死滅します。アニサキスは、−20℃で24時間以上冷凍するか、70℃以上の加熱、または60℃で1分の加熱で死滅します[*1, 2]。

ネギトロはマグロを加熱せず生のまま食べるわけですから、細菌や寄生虫などが生きている場合があるのですね。ただ、冷凍もののマグロを使用したネギトロであれば、アニサキスに感染する心配はありません。一度も冷凍していない生マグロを使用したネギトロの場合は注意が必要です。

妊娠中の食中毒による影響

魚についている腸炎ビブリオは、低温状態で増殖が抑えられますが、冷凍しても短期間では死滅しません。妊娠中は胃腸の働きが落ちていることもあるので、冷蔵庫で保存されたネギトロでも、腸炎ビブリオによる食中毒を起こす恐れはあります。

腸炎ビブリオに感染すると、約半日の潜伏期間の後に激しい腹痛が起こり、水様性や粘液性の下痢が見られたり、血便が出ることもあります。下痢は1日に数回から多いと十数回にもなり、37〜38℃の熱が出たりや嘔吐、吐き気が起こることもあります[*3]。

下痢などのおもな症状は普通1~2日でよくなり回復してきますが、食中毒を起こすとお母さんの体がつらいだけでなく、十分な栄養が摂れなくなりますし、あまり状態が悪くなるとお腹の赤ちゃんに影響が及ぶ心配もあります。

妊娠中のネギトロのリスク(2)メチル水銀

海中を泳ぐマグロの群れ

魚介類にはメチル水銀を多く含む種類があり、そういったものでは妊娠中は特に食べる量に気をつける必要があります。

魚介に含まれる水銀

妊娠中にネギトロを食べることで、もう一つ心配になるのが水銀の影響ですよね。

マグロをはじめ魚の体内には、自然界に存在する「メチル水銀(以下・水銀)」という有害な物質が取り込まれています。これまでの研究によると、妊婦さんが水銀量の多い魚を食べ過ぎると、おなかの赤ちゃんに水銀が影響することがわかっています。

魚に含まれる水銀の量は種類によっても違います。のちほど詳しく解説しますが、マグロの仲間の中には水銀の含有量が高い種類があり、厚生労働省は「水銀量が高い種類は、妊娠中は食べる量に気をつけて」と注意を促しています。

妊娠中に水銀をとることによる影響

水銀を含んでいる魚をお母さんが食べると、胎盤を通じておなかの赤ちゃんの体内にも取り込まれますが、赤ちゃんはそれを体の外に出すことができません。

妊婦さんが水銀含有量の高い魚を極端に多く食べ続けていると、その影響で赤ちゃんは誕生後に音を聞いた時の反応が1/1000秒以下[*4]のレベルで遅れることがあるそうです。

ネギトロ(マグロ)に含まれる水銀量

ところで、マグロにも、水銀の含有量が高く注意が必要な種類と含有量が低いので妊娠中も気にせず食べられる種類があります。

マグロの仲間で食べる量に注意が必要なのは、ミナミマグロ(インドマグロ)、クロマグロ(本マグロ)メバチマグロです。マグロの中でもこの3種類は、厚生労働省が週に食べる量や回数の目安を示しています。

たとえば、ミナミマグロ(インドマグロ)は週に2回までで計160g程度まで、クロマグロ(本マグロ)とメバチマグロはそれぞれ週に1回、約80gまでが目安量です(刺身一人前、切り身一切れはそれぞれ80g程度)[*4]。

ただしこの目安は、一回の食事で3種類のマグロのうち1種類だけを食べる場合の上限です。同じ週にミナミマグロとクロマグロの2種類を食べるなら、「ミナミマグロ80gとクロマグロ40gをそれぞれ1回ずつ」というように、種類によって回数と量を調節して、1週間の目安量の上限を超えないようにすることが大切です。

なお、マグロの仲間でも、キハダ、ビンナガ、メジマグロ、ツナ缶詰は水銀量が少ないので、これらについては「妊婦さんでも量を気にせず食べてもいい」とされています。

ネギトロに使われているマグロは、比較的安価なキハダが多いかもしれません。もし確認できるなが、マグロの種類を確認できるとより安心ですね。

妊娠中の魚については以下にわかりやすくまとまっていますので、参考にしてください。
▶︎これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと(厚生労働省)

妊婦はネギトロは食べてはいけない?

ネギトロ巻き

ここまでで解説した通り、妊婦さんにとってネギトロは少し注意が必要な食品ですが、妊娠中は食べてはいけないものなのでしょうか。

妊娠中のネギトロは避けたほうが無難

妊娠中のネギトロについて、心配なのが生で食べることによる食中毒です。ネギトロを少し口にしてしまったからといって、かならず食中毒になるわけではありませんが、 刺身は加熱済の食品に比べて食中毒のリスクが高いことは確かです。

これらの心配があるので、やはり妊娠中にネギトロを食べることはできるだけ控えるのがよさそうです。

まとめ

公園を歩く妊婦

ネギトロは、あっさりしておいしいですが、生で食べると食中毒が心配ですし、原料のマグロの種類によっては水銀の量も気になります。万が一体調を崩してしまった際に後悔しないためにも、気がかりな点がある食品は可能な範囲で控えておいた方が無難です。
妊娠中は食生活での注意点がいくつかあって、好きなものを自由に食べられないとストレスが溜まりますよね。適度な運動などで上手にストレス発散しつつ、妊娠中も安全とされている食材でできるだけバランスよく栄養摂取していきましょう。

(文:村田弥生/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-