着床の証!?「インプランテーションディップ」はいつ起こる?あった場合の妊娠確率は?基礎体温をチェック!【医師監修】
妊娠を望んでいる人であれば、排卵から生理予定日までは着床したかどうか気になって仕方がないということも多いはず。この時期は身体の変化に敏感になりますよね。ここでは、基礎体温に現れる変化から着床の有無を推測する「インプランテーションディップ」について紹介します。
インプランテーションディップとは
インプランテーションディップ(implantation dip)は、もともとは海外で広く知られている言葉で、直訳すると「implantation=着床」「dip=一時的に下がる」という意味です。
インプランテーションディップは医学用語ではなく一般的に言われているもので、この考え方が正しいのかどうかまだきちんと調べられていませんが、これを信じる人の間では「着床時に起こる現象の1つではないか」と考えられています。
着床のころ一時的に起こる体温低下のこと
健康な女性の基礎体温表は、排卵期をはさんで低温期と高温期に分かれています。排卵後、「高温期が17日以上続く」と妊娠の可能性が高くなりますが[*1]、「高温期の途中で一時的に基礎体温の低下が見られる」こともあります。この一時的な体温低下のことを「インプランテーションディップ」と呼ぶことがあるのです。
インプランテーションディップが起こるのは時期的に着床が起こるころとされており、そのため妊娠したしるしではないかと注目する人たちがいます。
インプランテーションディップがなぜ起こるのかは不明
妊娠した女性のなかでインプランテーションディップと考えられる体温変化があった人もたしかにいるようなのですが(後半の「インプランテーションディップが起きたら高確率で妊娠している?」で紹介します)、これがなぜ起こるのか、くわしいことはわかっていません。
なお、女性の基礎体温に影響を与える要因には、妊娠以外にも病気やストレス、睡眠状態、生理周期の変動、ホルモン分泌の変化などがあります。
このように基礎体温の変化は妊娠だけでなく、様々な原因から引き起こされます。
そのため、ちょっとしたきっかけでインプランテーションディップのような一時的な体温低下が起こったり、逆に起こらないこともあるのです。
インプランテーションディップと着床出血の関係
妊娠を待ち望んでいる人にとって、着床の有無はできるだけ早く知りたいことですよね。ただ、着床が起こるのは妊娠検査薬を使うにはまだ早すぎる時期。身体の微妙な変化から推測できないかと考える人も多いでしょう。
着床出血とは
この微妙な時期、「着床した=妊娠した」女性の身体に起こる可能性がある現象には「着床出血」というものもあります。
着床出血は、文字通り「着床が起こるころ見られる軽い出血」のことです。個人差がありますが、だいたい生理開始予定日ごろやその数日前から始まり、生理より短い期間(数時間~長くても3日間程度)で終わるとされています[*2]。
着床出血は、受精卵(胚盤胞)が子宮に着床し潜り込んでいくときに、子宮内膜が少し傷つき出血することで起こるとされています。
ただ、着床出血も妊娠した女性に必ず見られるというわけではありません。妊娠女性のうち、着床出血がある人は8~25%程度[*3]とも言われており、着床出血なしに妊娠する人のほうが多いのです。
インプランテーションディップと着床出血は関係は不明
ともに「着床」がきっかけとされているインプランテーションディップと着床出血ですが、2つとも着床したら必ず起こるというものではありません。また、これらに何か関係があるかはよくわかっていません。
インプランテーションディップはいつ・どのくらい起こる?
インプランテーションディップは医学用語ではなく、きちんと定義されている現象ではありません。
ここでは、一般的にインプランテーションディップが起こると言われている時期などについて紹介します。
基礎体温にある2つの期間「低温期」と「高温期」
インプランテーションディップの時期について考える前に、基礎体温についておさらいしておきましょう。
冒頭でも説明したとおり、健康な女性の基礎体温表は、排卵期をはさんで低温期(低温相)と高温期(高温相)に分かれます。低温期と高温期の基礎体温の違いは、だいたい0.3~0.5℃ほどです。
生理から排卵日にかけては低温期で、排卵日から生理前までの2週間ほどは高温期です。高温期から体温が急に下がると、生理(月経)が始まります。生理が始まらず高温期が17日以上続いている場合は、妊娠の可能性が高くなります[*1]。
時期:高温期の途中で起こる
さて、インプランテーションディップがある場合、いつごろ起こるものなのでしょうか。厳密なものではありませんが、一般的には「高温期に入ってからだいたい7~8日後」に見られると言われることが多いようです。
排卵後の卵子はおよそ24時間しか受精できません。ですから排卵日当日か翌日が受精した日になります。受精から約1週間後に受精卵(胚盤胞)は子宮に着床し始め、さらに1週間ほどかけて着床は完了します[*3]。つまり、インプランテーションディップが高温期の7~8日目に起こったとすれば、ちょうど受精卵が着床し始めたころに当たるわけです。
期間:体温が下がるのは1日だけ
インプランテーションディップにより一時的な体温低下が見られるのは「1日だけ」と言われています。
翌日にはまた基礎体温は上昇して、元の高温域に戻ります。
体温:10分の数℃ほど下がる
インプランテーションディップで見られる体温の低下は、「10分の数℃」ほどです。
たとえば、高温期が36.6℃程度だったのがインプランテーションディップで0.2℃下がって1日だけ36.4℃になり、翌日にまた元に戻るといった変化が見られる、とされています。
インプランテーションディップ以外でも基礎体温が下がることも
卵巣の働きが悪くなる「黄体機能不全」になると高温期の体温が不安定になって、一時的に体温が下がることがあります。この場合も、高温期の体温グラフがM字を示すことがあります。
また、基礎代謝が低いと、体に熱を作れないため、高温期になっても低めの体温が出やすくなります。その他に、病気やストレス、睡眠障害、ホルモン変動などの影響で基礎体温が下がることもあります。
高温期によくインプランテーションディップのような基礎体温の落ち込みが見られる人は、一度かかりつけの婦人科に相談しておきましょう。
インプランテーションディップが起きたら高確率で妊娠している?
インプランテーションディップが起こっただけでは、妊娠したかどうかはわかりません。
妊娠以外にも、色々な原因から体温の変化は起こりますし、インプランテーションディップなしで妊娠した人や、インプランテーションディップが見られたが妊娠していなかった人もいます。
アメリカの妊活用アプリFertilityFriendが10万点以上の基礎体温表を確認した大規模調査によれば、インプランテーションディップは、妊娠した女性の23%に見られただけでなく、妊娠していなかった女性の11%にも見られたそうです[*4]。
インプランテーションディップが見られても、もしかしたら妊娠した可能性があるかもしれない、と思う程度にしておくのがおすすめです。
その上で、基礎体温の高温期が17日以上続く、予定日が過ぎても生理が始まらない、妊娠検査薬で陽性と出た、といった妊娠特有の症状が見られたら、産婦人科で妊娠したかどうか診断してもらいましょう。
まとめ
インプランテーションディップは、基礎体温が高温期に入った7~8日目ごろに1日だけ見られる、一時的な体温の低下を指しています。医学用語ではなく概念として確立したものでもありませんが、妊活中の女性の間で広がってきた考え方です。
実際には、着床したら必ずインプランテーションディップが起こるわけではありませんし、インプランテーションディップがなぜ起こるのかもわかっていないのが現状です。
そのため、インプランテーションディップが見られても、もしかしたら妊娠している可能性があるかもしれない、と思う程度にしておくのがおすすめです。高温期が17日以上続いたり、生理が遅れている、妊娠検査薬で陽性が出たなどの兆候が見られたら、産婦人科で妊娠しているかどうか確認してもらいましょう。
(文:大崎典子/監修:齊藤英和先生)
※画像はイメージです
[*1]病気が見えるvol.9婦人科・乳腺外科, p.25, メディックメディア, 2018.
[*2]American Pregnancy Association: What is Implantation Bleeding?
[*3]池ノ上克ほか:NEWエッセンシャル産科学・婦人科学, 医歯薬出版, p.327, 2004.
[*4]FertilityFriend:Implantation dip study
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます