【医師監修】着床で下痢は起こる?<体験談>流産のリスクと対処法
着床とは受精卵が子宮内膜にくっつき、妊娠が始まること。実はこの時期、下痢になることがあるようです。妊娠中に下痢をすると、もしかして流産につながるのでは?と心配になる人もいるかもしれませんね。今回は、着床の時期に下痢が起こる理由と流産との関係、ほかにもある妊娠初期症状などについてまとめました。
- 着床したら下痢することもある?
- <体験談>妊娠初期に下痢はありましたか?
- 着床のころの下痢で流産のリスクは上がる?
- 下痢だけで流産になるとは考えにくい
- 出血やひどい腹痛もある/下痢が続く場合は受診して
- 自己判断で下痢止めは飲まない
- 着床による妊娠超初期の症状
- 生理の遅れ
- 着床出血
- 基礎体温で高温期が続く
- おりものの増加
- 乳房の変化
- 吐き気やおう吐
- 頻尿
- 眠い・だるい
- 熱っぽい
- むくむ
- 気持ちの変化
- 頭痛
- めまい・立ちくらみ
- 腰痛
- ただし、個人差が大きい
- 着床したかもと思ったらすること
- 生理予定日以降に妊娠検査薬で調べてみる
- 陽性なら受診|超音波検査で確定してもらう
- 陰性でも生理がなかなか来ないなら受診
- まとめ
着床したら下痢することもある?
受精卵の着床が起こるころ、下痢になる人もいるようです。これはおもに、妊娠によるホルモン分泌の変化などが影響していると考えられます。
ホルモン変化などで下痢をする可能性がある
女性は妊娠すると、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」などの女性ホルモンの分泌量が増え始め、妊娠中はずっと増加していきます。黄体ホルモンには子宮の収縮や排卵を抑える働きなどがあり妊娠の維持に欠かせませんが、「胃や腸の蠕動運動(消化中の食べ物や便などを移動させる動き)を抑える働き」もあります。
胃腸に食べ物が長くとどまるようになると便秘がちになりますが、消化がうまくいかなくなることで逆に下痢を起こすこともあります。
また、妊娠中のホルモン分泌の大きな変化が自律神経のバランスを乱し、その結果、下痢が起こることもあります。
ただし、着床したら必ず下痢をするわけではなく、「下痢することもある」程度に捉えてください。
<体験談>妊娠初期に下痢はありましたか?
◆アンケート情報 2021年9月23日~2021年9月30日 調査対象:マイナビニュース会員、既婚女性 調査数:381名の結果から抜粋
調査方法:インターネットログイン式アンケート
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※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
着床のころの下痢で流産のリスクは上がる?
着床したころに下痢になると、流産との関連が気になるかもしれません。その心配はあるのでしょうか。
下痢だけで流産になるとは考えにくい
妊娠さんの中には、妊娠中の下痢が流産を引き起こすのでは?と心配する人もいるかもしれません。でも、“下痢という症状”自体が原因で流産になることはまずありません。
流産、とくに妊娠初期に起こる流産はその9割が受精卵自体に何か問題があって起こります[*1]。つまり、もともとそれ以上育っていくことができない運命だったということなのです。ママ側に何か異常があって起こるわけではないので、あまり心配しすぎないでくださいね。
出血やひどい腹痛もある/下痢が続く場合は受診して
ただ、下痢症状に加えて「性器からの生理の時より多い出血」や「ひどい腹痛」など他の症状もあるときや、「下痢が続いてなかなか治らない」ときは受診してください。
とくに、下痢の有無にかかわらず、まだ産婦人科で超音波検査を受けていない時期には「異所性妊娠(子宮外妊娠)」の心配もあります。
異所性妊娠に注意
妊娠4週(生理予定日の週)には「早期妊娠検査薬」、妊娠5週になると「通常タイプ」の妊娠検査薬が使えるようになるので、思い当たる性交がある人では使ってみることでしょう。これらで「陽性」になると妊娠の可能性が高いということになりますが、「どこに受精卵が着床したか」まではわからないことに注意が必要です。
受精卵が子宮内膜の適切な位置以外に着床することを「異所性妊娠(子宮外妊娠)」と言います。この場合も、最初は「生理がない」「妊娠検査薬が陽性」以外にめだった症状はないことがあります。あっても、「少量の出血」や「起きたり治まったりする下腹部痛」がある程度のことが多いのです。
ただ、妊娠6週以降になると不適切な箇所に着床した受精卵が育つことで卵管破裂などを起こすことが増えていきます[*2]。こうなるとお腹の中で大量出血し、出血性ショックに至る危険があります。妊娠検査薬で陽性が出たら放っておかずに超音波検査を受け、異所性妊娠の可能性がないことを確認するのが大切なのはおもにこのためです。
ですから、妊娠の可能性があるとき下痢のほかに、生理の時より多い出血があったり、ひどい腹痛があったりする場合には、診療時間外であっても医療機関を受診するようにしてください。
自己判断で下痢止めは飲まない
下痢をしていると、普段なら市販の下痢止め薬を飲むかもしれませんが、妊娠の可能性があるなら自己判断で市販薬を飲むのはやめましょう。
薬が必要なほど下痢がひどい、または続いているときは、服用前に医師または薬剤師に必ず相談してください。
着床による妊娠超初期の症状
妊娠するとホルモンバランスなどが大きく変化するため、下痢以外にもさまざまな症状が現れます。俗に「妊娠超初期」とも呼ばれる、生理予定日より前の時期に見られることがある主な症状を知っておきましょう。
生理の遅れ
着床して妊娠が成立すると、まず生理が来なくなるのが大きな特徴です。普段、生理周期が順調な人の場合、生理開始予定日を過ぎても生理が来ないときには、妊娠していることが考えられます。
ただ、日ごろから生理不順の人や、出産後で生理の再開がまだの人の場合には、生理の遅れが妊娠によるものかわからないこともあるでしょう。
着床出血
着床すると、「月経様出血」または「着床出血」と呼ばれる性器出血が見られることがあります。これは妊娠初期の、生理開始予定日かそれより少し前に起こり、出血量は生理より少量のことが多いと言われています。
基礎体温で高温期が続く
生理周期が正常できちんと排卵が起きている女性が基礎体温を記録していくと、「低温期」と「高温期」のはっきりした二層を示します。生理周期が28日の人の場合は「生理開始~排卵まで」の約2週間が低温期で、排卵が起こると低温期より0.3~0.5℃くらい体温が上がる高温期に入り、2週間続きます。
生理開始予定日を過ぎても生理が来ず、高温期が17日以上続いているようなら、妊娠している可能性が高いでしょう。妊娠を望む人は、日ごろから基礎体温をつけておくと、妊娠の兆候に早く気づく助けになりますよ。
おりものの増加
妊娠すると、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が増加します。そのために粘液の分泌も増えるので、おりものが増える傾向にあるます。おりものの状態は個人差が大きいので、妊娠初期ではあまり変化を感じないかもしれませんが、妊娠が進むほど水っぽいおりものが増えていくことが多いでしょう。
乳房の変化
妊娠初期には、ホルモンバランスが変化した影響で、胸の張りや痛みを感じる人もいます。妊娠すると分泌量が増える女性ホルモンには、授乳に備えて乳房の準備を整える作用もあるからです。そのため、乳房が張る、乳首の先が痛む、乳輪が黒ずんでくる、などの症状が見られる人もいます。
吐き気やおう吐
吐き気やおう吐といったいわゆる「つわり」は、妊娠初期の代表的な症状ですね。
つわりの有無や症状の程度は個人差が大きいのですが、妊娠5~6週ごろから始まって8~10週ごろにピークとなり、12週を過ぎたころからだんだん軽くなってくる、という人が多いようです。
味覚や嗅覚の変化
妊娠によってホルモンバランスなどが大きく変わることで、味覚や嗅覚、食欲の状態が変わることもあります。
「食べ物の好みが変わった」「特定の匂いがすると気持ちが悪くなる」などという妊婦さんは多いですし、妊娠前と比べて食欲が旺盛になったり逆になくなったりする、ということも珍しくありません。
頻尿
妊娠すると体内の水分量が増加し尿の量も増えるので、排尿回数も多くなる傾向があります。また、子宮が急に大きくなってくることで膀胱が子宮に圧迫されるようになるために、頻尿になるという理由もあります。
便秘・おならの増加
妊娠中は女性ホルモンの分泌量が増える影響で、腸の機能が低下しやすくなります。また、大きくなっていく子宮が腸を圧迫することもあり、妊婦さんはガスが出やすくなったり便秘気味になりやすいものです。
便秘は、意識して水分を摂ったり、食物繊維の多い食材を積極的に摂るなどで改善することもありますが、なかなかよくならないときには妊婦健診の際などに相談してみましょう。必要があれば、便秘薬などを処方してくれます。
眠い・だるい
妊娠中を通して眠気やだるさを感じたり、疲れやすくなったりする人も多いです。これも、妊娠によって女性ホルモンの分泌量が急激な増加を続けている影響と考えられます。
熱っぽい
妊娠初期には、熱っぽさやだるさを感じることもよくあります。妊娠初期には高温期が続くので、体がほてったような感じになるからか、風邪症状と間違える人も多いのです。
基礎体温は妊娠15週を過ぎると一転して低温期に入るので、そのころになると熱っぽさやだるさなどもだんだん感じられなくなるでしょう。
むくむ
妊娠すると「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の分泌量が増加しますが、このホルモンには体内に水分をためこむ作用があります。そのため、妊娠中はどうしてもむくみやすくなってしまいます。
妊娠中期を過ぎてからは、お腹の赤ちゃんにより多くの栄養や酸素を届けるために血液の量がかなり増えるので、よりむくみやすくなるでしょう。
気持ちの変化
妊娠初期によく見られる症状には、体の変化だけでなく気持ちの変化もあります。これは、妊娠によるホルモンバランスの変化の影響で、情緒が不安定になりやすいからです。
特に妊娠初期は、些細なことが気になったり、感情の起伏が激しくなりやすいものです。気分が明るくなる人もいるようですが、イライラしたり落ち込んだり、鬱々とした気分など、マイナスの感情になる人も多いでしょう。
そんなときは、自分に合った方法で気分転換できるといいですね。それでも、夜眠れない、食欲がなくなるまたは過食になる、集中力や思考力が落ちる、すぐに疲れる、といったことがあるなら、早めに受診して専門家に相談しましょう。
頭痛
妊娠したら頭痛が起りやすくなった、という人もいます。これは、ホルモンの変化のほか緊張、ストレス、疲労なども要因になります。
脳の血管が広がるため頭の片側がズキズキ痛む「片頭痛」や「緊張型頭痛」も起こしやすくなります。緊張型頭痛とは、頭の両側を押さえつけられたり締め付けられたりするような、鈍い痛みのする頭痛で、不安や緊張、ストレスを感じやすい人は起こしやすいでしょう。
めまい・立ちくらみ
妊娠初期に起こりやすい症状には、めまいや立ちくらみもあります。妊娠すると、血管を収縮させる神経の働きが不安定になります。そのため、脳に血液が流れにくくなって、立ちくらみが起こりやすくなるのです。
また、つわりなどで十分に食事を食べられないと、低血糖状態となってめまいが起こることもあります。
腰痛
まだお腹が大きくなっていない妊娠初期のころから、腰痛が起こる可能性もあります。胎盤から分泌される「リラキシン」という女性ホルモンには、出産時に備えて関節や靭帯をゆるめる働きがあります。その影響で、骨盤が不安定になって、腰に負担がかかって腰痛が起こりやすくなるからです。
お腹が大きくなってくる妊娠中期以降は、さらに腰痛を起こすことは増えていきます。
ただし、個人差が大きい
妊娠によって、女性の体はホルモンバランスが大きく変わるなど変化し、妊娠初期にはさまざまな症状が見られるようになります。とはいえ、症状の現れ方には個人差が大きいもの。ここまでに挙げた症状がたくさんあったという人もいる一方で、ほとんどなかったという人もいますし、その程度にも違いがあります。
さらに、生理前に不調が起こる「月経前症候群(PMS)」でも、似た症状を起こすことはよくあります。そのため、こうした症状が見られたというだけで妊娠の有無を知ることはできません。
着床したかもと思ったらすること
生理が遅れているうえ高温期が続いているなど、上記にあげた妊娠初期によくある症状のうちいくつか当てはまるものがあったら、妊娠しているかもしれません。その場合の対応を知っておきましょう。
生理予定日以降に妊娠検査薬で調べてみる
妊娠初期に特有の症状がいくつか見られ、妊娠の可能性があるときには、妊娠の可能性を確認するために妊娠検査薬を使ってみるといいですね。妊娠検査薬は、妊娠が成立すると分泌されて尿の中に排出される「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン」」というホルモンを検出して、妊娠の有無を判定します。
hCGは妊娠4週(生理開始予定日)ごろから尿中に出てくるようになりますが、その後、分泌量が急激に増えていきます。hCGの測定感度が高い「早期妊娠検査薬」は「生理開始予定日当日から」、通常の妊娠検査薬は「生理開始予定日の1週間後から」、尿中のhCGが検出可能で、この時期であれば尿中にhCGがある場合は99%確率で陽性になります。それぞれ推奨されている時期に検査してみましょう。
陽性なら受診|超音波検査で確定してもらう
適切な時期に妊娠検査薬を使った結果、陽性の判定が出れば、妊娠している可能性が非常に高いと考えられます。産婦人科を受診して、超音波検査で妊娠を確定してもらい、正常な妊娠かどうかをチェックしてもらってください。
陰性でも生理がなかなか来ないなら受診
妊娠検査薬を使うのが推奨される時期より早かった場合はもちろんですが、適切な時期に検査したと思っていてもその時だけ実は排卵が遅れていて検査時期が早すぎ、hCG濃度が不十分で薬剤が反応せず陰性になることもあります。
そこで、生理が来ないのに検査の結果が陰性のときは、1週間後に再検査をしてみましょう。その結果陽性判定が出たならすぐに受診を。また陰性でも、生理がやはり来ないようなら医師に相談してください。
まとめ
着床して妊娠が成立すると、妊娠初期の症状の1つとして下痢になることもあります。でも、それだけで流産につながることは考えにくいので、心配しすぎないようにしましょう。
妊娠初期には下痢以外にも、さまざまな特有の症状が見られるようになります。どのような症状があるのかを知っておき、複数の症状があって「妊娠かも?」と思ったときには、妊娠検査薬で確かめて、結果に応じた対応をしてくださいね。
(文:村田弥生/監修:齊藤英和 先生)
※画像はイメージです
[*1] メディックメディア「病気がみえる 産科(第4版)」p.91,96
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます