出血や腹痛・腰痛…流産の症状とはどんなもの? 流産しやすい原因と予防法【医師監修】
流産を経験する⼥性は決して少なくありません。妊娠した女性の約40%が流産しているという報告があるほどです。妊娠を希望している女性はぜひ知っておきたい「流産」のことについて知識を深めていきましょう。
流産とは
流産の定義
流産は、妊娠したにもかかわらず、妊娠の早い時期に赤ちゃんが亡くなってしまうこと。赤ちゃんがお母さんのおなかの外では生きていけない妊娠22週よりも前に妊娠が終わってしまう場合を流産と呼びます。
流産には、「人工流産」と「自然流産」があります。人工流産はいわゆる人工妊娠中絶で、母体保護などのために手術をして人為的に妊娠を終わらせます。それに対して自然流産は、自然に起こった流産すべてが含まれます。今回は自然流産について説明します。
流産にはどんなものがあるの?
~流産の種類~
流産にはさまざまな状態があり、それぞれに名前が付けられています。
早期流産と後期流産
まずは、流産した「時期」による分類を解説します。
妊娠したかどうかは、おおむね次に来るはずの生理(月経)開始予定日を過ぎたころ、医療機関で行われる尿検査で確認できます。市販の妊娠診断補助試薬(妊娠検査キット)も生理開始予定日の1週間後から使用可能になる場合が多いです。
しかしここまではまだ、「妊娠の可能性が高い」という段階。超音波検査で妊娠4週目後半ごろに胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が見え、さらに妊娠5週後半から6週前半に赤ちゃんの心臓の動き(心拍)を確認できるようになると、妊娠が確定します。
妊娠12週未満までに流産が起きた場合は早期流産、12週から22週未満までを後期流産と呼んでいます。
進行流産~完全流産と不全流産~
ここからは子宮の中の状態や流産の進行具合による、流産の分類です。
出血がはじまり、子宮の内容物が外に出てきている状態を「進行流産」といいます。進行具合によって「不全流産」と「完全流産」に分けられます。
「不全流産」は胎児(胎芽)などの子宮内容物の排出が始まっているものの、一部はまだ子宮の中に残っている状態のことです。出血や腹痛が続き、残ったものを取り除く子宮内容除去手術が必要になることが少なくありません。
完全流産は、子宮内容物がすべて体の外に出てしまった状態です。下腹部痛や出血の症状はすでに軽くなっているか、なくなっています。
症状が出ない稽留流産
「稽留流産」は、子宮内ですでに胎児は死亡しているのに、腹痛や出血といった流産の症状が現れていない状態のこと。
自覚症状がないので、医療機関の超音波検査で胎嚢の成長が見られなかったり、胎児の心拍が検出できないことで初めて、稽留流産と診断されます。胎児や胎盤などは自然排出される場合もありますが、子宮内容除去手術で取り除くこともあります。
妊娠超早期に起こる化学流産
「化学流産」は、尿検査で妊娠反応は出たものの、超音波検査で妊娠が確認できる前の極めて早い時期に流産してしまうこと。近年は妊娠のごく早期でも市販の妊娠診断補助薬(妊娠検査キット)で妊娠反応を手軽に調べられるようになったことから、化学流産が注目されるようになりました。
妊娠8週未満くらいまでの非常に早い妊娠段階の胎芽(胎児になる初期段階)が亡くなってしまった場合は、羊水の中に吸収されてしまうことも多いのですが、それ以降は血液とともに子宮内容物が排出されます。
しかしまだ妊娠反応を調べていない場合は、こうした流産の症状を月経や月経痛だと考えて流産に気づかないままというケースもあります。
子宮内容物が自然排出されれば、特に治療は必要ありません。腹痛や出血が続いている場合は、婦人科を受診する必要があります。
切迫流産
出血があり、流産が始まる可能性のある状態を「切迫流産」といいます。この時、子宮の中の赤ちゃんは生きていてまだ子宮口は開いていません。前述したような本格的な流産になれば、赤ちゃんを助けることはできませんが、切迫流産の段階であれば妊娠を継続できる可能性があります。
切迫流産と診断された場合は、できるだけ安静にし、無理をしないようにすることが大切です。安静にしていても流産に進行してしまう場合もありますが、子宮内に絨毛膜下血腫という血液のかたまりがある切迫流産では、安静が有効との報告もあります。
流産が起こる原因
流産の原因はケースバイケースですが、妊娠週数によっておもな原因とされているものは異なります。
早期流産の原因は?
12週未満の早期に起こった流産の多くは、染色体異常など胎児側に原因があるものと言われています。流産に至った子宮内容物を調べたところ、3分の2に染色体異常が見つかったという報告もあります。
すなわちそうした胎児であった場合、受精の段階で運命が決まってしまい、流産は避けられないことなのです。流産してしまうと「妊娠初期に運動をしたり、仕事をしたから……」と気に病む人も多いと思いますが、この時期にそのような理由で流産することはあまりないと言っていいでしょう。
後期流産の原因は?
一方で、12週以降の後期流産では、母体側に原因があるケースが増えます。性器の異常(子宮発育不全や子宮奇形、子宮筋腫、子宮内の癒着、頸管無力症など)や全身疾患(高血圧、糖尿病といった内分泌疾患など)が考えられ、もとの病気の対策をしないと、流産を繰り返す可能性があります。
絨毛膜羊膜炎など、細菌などの感染が原因となって母子感染を起こすことも後期流産の原因では多くなっています。
このころ流産となる赤ちゃん側の要因には、染色体異常のほかに、胎盤や臍帯、卵膜の異常などが挙げられます。
なお、原因不明なこともあります。
流産の症状
流産の主な症状は性器からの出血と下腹部痛です。こうした自覚症状がないまま、流産が進行する場合もあります。
性器出血
出血の量はトイレットペーパーににじむ程度、月経と同じくらい、血の塊が排出されるなどさまざまです。出血は流産のサインの一つですが、妊娠初期は特に問題がなくても少量の出血をすることがあり、それが必ずしも流産につながるとは限りません。
流産が進むと、出血とともに胎芽あるいは胎児とその付属物など子宮内容物が排出されます。流産が急速に進行した場合は大量に出血し、出血性ショックに陥ることもあるので注意が必要です。
下腹部痛や腰痛
流産が進行するとともに下腹部や腰の痛みが強まります。子宮の内容物がすべて排出されると治まりますが、残っていると持続することがあります。
流産の頻度
流産はどのくらい起きているの?
医療機関で確認された妊娠の15%前後 が流産になります[*1]。受診前の化学流産も含めると、流産はかなりの頻度で起こっていると考えられます。妊娠した女性の約40%が流産を経験しているという報告もあります[*1]。
流産しやすい時期は?
妊娠12週未満の早期流産が多く、全流産数の8割以上を占めています[*1]。
流産のしやすさは年齢とともに変わるの?
自然流産の頻度は15%前後と言われていますが、年齢が上がるとともに流産率は高くなり、40代前半では50%を超えるという報告もあります[*2]。母体の加齢とともに胎児の染色体異常が起こりやすくなることが、主な原因の一つと考えられています。
流産を防ぐためにできること
流産を防ぐには
早期流産の多くは染色体異常など赤ちゃん側に原因のあるケースで、何をしても残念ながら防ぐことも進行を止めることもできません。流産は避けられないものだったことを流産した女性も周囲の人も理解することが大切です。
なお、流産のあと、血液型(Rh型)によっては、次回妊娠したときに赤ちゃんの赤血球への影響を予防するための「免疫グロブリン注射」が必要な場合があります。
後期流産に多くなってくる母体側の異常によるものの中には、医療機関での適切な治療により流産を防げたり進行を止められるケースもあります。
前回後期流産をした人や何度も流産を繰り返している場合は、婦人科医に相談してみましょう。
出血があったときはどうすればいい?
妊娠初期は、正常な経過の妊娠でも少量の出血や軽い腹痛を感じることがあります。
一方、流産や切迫流産でも同様の症状が現れることがありますが、こうした症状が始まった時点ですぐに医療機関を受診しても有効な対処法はないとされています。夜間や時間外に症状があった場合、あわてて受診する必要はなく、翌日連絡して指示を仰ぎましょう。
ただし、腹痛が強かったり生理の時より出血量が多い場合には、進行流産や、子宮外で妊娠が起きる異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性があり、緊急の処置が必要なこともあります。すぐに医療機関を受診してください。
リラックスして過ごそう
妊娠がわかってから「流産したらどうしよう」「流産につながるからあれもダメ、これもダメ」などと心配ばかりしていても、流産を防げるわけではありません。必要以上に生活を制限することなく、リラックスして過ごしましょう。
また流産したあとも、思いつめないことが大事。流産から次回妊娠までの期間の長さと次回妊娠の成功率は関係ないと言われており、流産後に長期間避妊する必要はないとされています。
まとめ
待ち望んでいた赤ちゃんを流産してしまったら、自分を責めてしまう女性も少なくないでしょう。しかし 流産は妊娠の約15%という低くない頻度で起こり、さらにそのほとんどが妊婦さんの努力ではどうにもならない偶発的な出来事なのです。
不幸にして流産してしまった場合は、「避けられなかったこと」ということをできるだけ理解するようにしながら、まずは体と心をいたわって。そして次の妊娠に向かって心身ともに調子を整えていくようにしましょう。
(文:熊谷わこ/監修:宋美玄先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます