ヨーグルトを食べ過ぎるとどうなる?1日の目安量と上手な食べ方【管理栄養士監修】
健康食品としてたびたび話題にあがるヨーグルト。冷蔵庫に常にあるというご家庭も多いのでは? 体によいものはついたくさん食べたくなりますが、食べ過ぎることによる体への影響はないのでしょうか? 今回はそんなヨーグルトのよい点・注意点をまとめました。ぜひヨーグルトを食べるときの参考にしてください。
ヨーグルトで得られる3つのメリット
ヨーグルトは健康にいいからと毎日食べるようにしている人も多いのではないでしょうか。ヨーグルトの食べ過ぎについて考える前に、まずはヨーグルトがもつ体にうれしい効果について一緒に確認しましょう。
ヨーグルトのメリットとして、
乳酸菌・カルシウム・たんぱく質
による効果が挙げられます。
メリット① 乳酸菌による整腸効果
ヨーグルトはおもに牛乳に乳酸菌を加えて発酵させた食べ物です。ヨーグルトに使われる乳酸菌の代表的な種類としてはブルガリア菌、サーモスフィルス菌、アシドフィルス菌などがあります。
■乳酸菌の効果|整腸作用
善玉菌である乳酸菌は腸内で大腸菌などの悪玉菌の繁殖を抑えて腸内細菌のバランスを整えるため、便通がよくなるなどの作用をもつのが特徴です。ちなみにヨーグルトの他にもキムチなどの発酵食品にも含まれます。
メリット② 200gで1日に必要なカルシウムの1/3
ヨーグルトには牛乳同様、豊富なカルシウムが含まれます。プレーンヨーグルト200g(またはコップ1杯200mlの牛乳)を摂取すれば、成人に必要な1日のカルシウムのうち1/3量を摂ることができます[*1](※)。カルシウムは丈夫な骨を維持していくために大切な栄養素の1つです。
ただしカルシウムと一緒にビタミンDやマグネシウムを摂ることも大切になります。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けて骨や歯に届け、マグネシウムは骨や歯にカルシウムが定着しやすくします。ビタミンDは魚介類やきのこ類に多く、マグネシウムは大豆製品や魚介類に多く含まれるので、これらも一緒に摂るとカルシウムの栄養効率をさらに上げることができます。
※18歳以上の1日のカルシウム摂取推奨量は、男性で700~800mg、女性で650mg[*1]
メリット③ 良質なたんぱく質を含む
ヨーグルトに含まれるたんぱく質は「良質なたんぱく質」といわれます。ヨーグルトは必須アミノ酸をバランスよく含んでいるためです[*1]。
必須アミノ酸とは、ヒトの体のたんぱく質を構成するアミノ酸のなかでも体の中でつくることができないアミノ酸のこと。必須アミノ酸は日々、食品から摂取する必要があります。ヨーグルトはこの必須アミノ酸を効率よく摂取できる食品の1つなのです。
また、ヨーグルトなど乳製品のたんぱく質に含まれるカゼインという成分は、カルシウムの吸収率を高めるといわれています。もともとカルシウムが含まれるうえに、さらにカルシウムの吸収をよくするたんぱく質も含まれるとは、うれしいですね。
ヨーグルトを食べ過ぎても大丈夫?
栄養面でのヨーグルトのよさをいくつかお伝えしました。一方で食べ過ぎた場合には体への影響があるのか、説明していきます。
摂り過ぎになる?|①乳酸菌
乳酸菌が豊富なヨーグルトですが、たくさん食べてしまうと乳酸菌の摂り過ぎになってかえって体によくないということはあるのでしょうか?
結論から言うと、乳酸菌を摂り過ぎてしまう心配はありません。乳酸菌は体内に蓄積されず、常に体外に排出されているからです。したがって乳酸菌の摂取量の基準も特に定められおらず、乳酸菌による悪影響に関しては気にする必要はないでしょう。
摂り過ぎになる?|②カルシウム
栄養素の中には過剰摂取によって健康障害を起こすものもあります。ヨーグルトに含まれる主な栄養素の中で言えば、カルシウムは必要以上に摂取してしまうと腎臓や泌尿器に尿路結石を引き起こす場合があります。しかしこれは食べ物から起きることはほとんどなく、おもにサプリメントの多量摂取が原因です。
カルシウムの耐容上限量は2500mg[*1]ですが、ヨーグルトに当てはめるとプレーンヨーグルト2kgに相当します[*2]。市販のヨーグルトの大容量サイズがだいたい400gなので、2kgというと5パック分です。
したがって、通常食べる量のヨーグルトでカルシウムの摂り過ぎになる心配は低いと考えてよいでしょう。ただし、日常的にサプリメントでカルシウムを摂っている人は食品からの摂取と合わせたトータルの量に注意が必要です。
摂り過ぎになる?|③脂質・糖質
乳酸菌やたんぱく質が摂取できるヨーグルトはダイエット中の食べ物としても人気があるでしょう。ダイエットでヨーグルトを食べる場合は、脂質や糖質の摂り過ぎが気になるかもしれません。製品によって脂質や糖質の量に違いがあります。
■ヨーグルトの種類■全脂無糖 | プレーンヨーグルト。乳脂肪3%程度 | エネルギー56kcal、脂質3.0g、糖質4.9g(100g当たり) |
低脂肪無糖 | 低脂肪乳や脱脂乳からつくられるもの。乳脂肪1%程度 | エネルギー40kcal、脂質1.0g、糖質5.2g(100g当たり) |
脱脂加糖 | 脱脂乳に砂糖を加えてつくられたもの。一般的なヨーグルト | エネルギー65kcal、脂質0.2g、糖質11.9g(100g当たり) |
乳脂肪が低いと思って選んでも加糖タイプのこともあります。そのような場合は、ほかの食品から摂る糖質の量を気を付けたりするといいでしょう。
ちなみに、製品パッケージに「発酵乳」や「はっ酵乳」と書かれているものがヨーグルトです。発酵乳とは無脂乳固形分(牛乳から水分と脂肪分を取り除いたあとに残る成分)が8%以上のものを指します。
乳糖不耐症の人は?
牛乳を一度にたくさん飲んだりするとお腹がゴロゴロしたり、腹痛や下痢になる乳糖不耐症というものがあります。これは牛乳に含まれる乳糖を分解する消化酵素が十分に分泌されないことで起こります。
では、牛乳から作られるヨーグルトも乳糖不耐症の心配があるのでしょうか? 実はヨーグルトは発酵により乳糖の一部が分解されているうえ、乳酸菌には乳糖分解酵素があるため乳糖不耐症の症状が出にくい食品です。牛乳でお腹がゴロゴロなりやすい人でも比較的安心して食べることができます。
しかし、もちろん乳糖がゼロなわけではないので、一度にたくさんの量を摂れば影響が出る可能性があります。個人差があるので一概には言えませんが、心当たりのある人はあまり食べ過ぎないようにするのがよいでしょう。
栄養の偏りのリスク|ビタミンDやCの不足
ヨーグルトだけを食べ続けた場合に不足する可能性が高い栄養素として、ビタミンDやビタミンCがあります。ヨーグルト100g当たりビタミンDはほとんど含まれず、ビタミンCも1~2mgとわずかです[*2]。
ダイエット目的でヨーグルトだけを食べたりすると、ビタミンDやビタミンCが足りなくなってしまうため、注意しましょう。ビタミンDは魚類などに含まれ、ビタミンCは果物や野菜に含まれます。果物を入れたヨーグルトにしてもいいかもしれませんね。
薬との相性にも注意
食べ過ぎの問題とは異なりますが、牛乳やヨーグルトで注意したいこととして、薬によっては相性がよくないという点も知っておきましょう。たとえば抗菌薬(抗生物質)の中には、ヨーグルトなどの乳製品と同じタイミングで摂取すると薬の吸収が低下してしまうものがあります。その場合は、ヨーグルトと薬の間隔を空けて摂取するようにしましょう。
そのほかにも相性のよくない薬があるので、薬の説明書に「カルシウムが多い食品」や「牛乳」との飲み合わせについて記載がないか、確認することを心がけてください。
ヨーグルトの適量はどのくらい?
ヨーグルトそのものによる食べ過ぎの影響は少ないと言えますが、食事はバランスが大切なのでヨーグルトばかりに偏るのはやはり問題です。どの程度が適量なのでしょうか。
1日の目安|200~300g
1日のヨーグルトの摂取量はおおよそ200~300gと考えましょう。食事バランスガイドを参考に性別などの違いで詳しく示すと、次のようになります。
・成人男性で身体活動レベルが低い人…1日に約200gまで
・成人男性で身体活動レベルがふつう以上の人…1日に約300gまで
・成人女性…1日に約200gまで
■食べ過ぎの上限の目安は?
1日2kg食べ続けるとカルシウムの過剰摂取が心配になるため、少なくとも2kgやそれに近い量も食べるのは控えましょう。しかも、カルシウムを強化したヨーグルトの場合は2kgよりも少ない量でカルシウムの摂り過ぎになってしまいます。
また、カルシウムのことを抜きに考えてもヨーグルト2kgは約1120kcalと、1日に必要なエネルギーの約半分以上に及ぶため、ほかの栄養素が不足しかねません。たまに食べ過ぎてしまっても問題ありませんが、健康によいからといってヨーグルトばかり食べるのはやめましょう。
ヨーグルトに合わせる果物やナッツの食べ過ぎはこちら
<おもな果物>
▶みかん ▶バナナ ▶りんご ▶いちご ▶パイナップル ▶スイカ ▶ぶどう ▶キウイ ▶ブルーベリー ▶いちじく ▶さくらんぼ ▶柿 ▶デーツ ▶ライチ ▶すもも ▶プルーン
<ナッツなど>
▶クルミ ▶アーモンド ▶カシューナッツ ▶ピスタチオ ▶ピーナッツ
ヨーグルトの上手な食べ方
ヨーグルトの効果を高めるような食べ方や、反対に効果を下げてしまう食べ方はあるのでしょうか?
オリゴ糖をプラス|乳酸菌の効果アップ
ヨーグルトの整腸作用は、善玉菌である乳酸菌を直接摂取する「プロバイオティクス」によるものです。このプロバイオティクスの効果を高めるために、腸内にいる善玉菌のエサとなる食品を摂取する「プレバイオティクス」も取り入れるとよいでしょう。
ヨーグルトと相性のよいプレバイオティクスはオリゴ糖です。プレーンヨーグルトに甘味を足したいならば、砂糖ではなくオリゴ糖を含むはちみつがおすすめです。ヨーグルト100g当たりはちみつを小さじ1杯程度を目安にしてください。また、きな粉もオリゴ糖を含むので、きな粉ヨーグルトにしてみてもいいですね。
砂糖入りのヨーグルトは甘味があって食べやすいですが、気づかないうちに糖分を摂りすぎてしまう場合も。無糖のものをそのまま食べたり、少量のはちみつや、ビタミンCの摂れる果物でやさしい甘さをプラスするのがおすすめです。
加熱したヨーグルトは効果がない?
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は加熱によって死滅するといわれていますが、死滅した状態であっても腸内の善玉菌のエサになると考えられています。そのため、加熱したヨーグルトを食べることが無駄とはいえないでしょう。
たとえば、砂糖を多く含む甘いだけのお菓子を食べてしまうよりも、ヨーグルトやヨーグルトを使ったお菓子を選べばカルシウムやたんぱく質も摂れます。加熱したヨーグルトが腸内環境に悪いように働くわけではないので、加熱・非加熱を気にせずにさまざまな形で楽しみながらヨーグルトを摂っていきたいですね。
妊娠中もヨーグルトはおすすめ
体へのメリットがさまざまあり、食べ過ぎの危険もそれほどないヨーグルトは、妊娠中もおすすめの食品ですよ。
妊娠中の1日の目安|200~300g
妊婦さんのヨーグルトの摂取量の目安として、妊娠初期・中期は200g(非妊娠時と同じ)、妊娠後期は300gと考えましょう。
妊娠中にヨーグルトを食べるメリットとして、カルシウムを含むことが挙げられます。妊娠期の女性も一般成人女性も1日のカルシウム摂取推奨量は650mgと同じですが[*1]、実際には、妊娠中は胎児の骨づくりのため特にカルシウムが不足しやすい傾向にあります。そのため妊娠時にはしっかりとさまざまな食品からカルシウムを摂ることが必要なのです。
なお、ヨーグルト200g(300g)だけでは1日のカルシウム推奨量の半分に満たないので、他にカルシウムが多く含まれる小魚類などを摂ることも忘れないでくださいね。
赤ちゃんへのアレルギーの心配は?
妊娠中にヨーグルトや牛乳を摂ることで、赤ちゃんが食物アレルギーになるのではないかという心配があるかもしれませんね。しかし、妊娠中に食物アレルギーの原因となる食べ物を避けても、予防する効果はありません。
妊婦さんご自身が乳アレルギーである場合はもちろんそのまま継続して避けますが、乳アレルギーがない妊婦さんは、自己判断で食品を避けるということはやめましょう。ヨーグルトには良質なたんぱく質やカルシウムといった赤ちゃんを育てるのに必要な栄養が含まれているので、むしろ摂ってほしい食品です。
体にとって必要な栄養をバランスの良い食事からしっかり摂ることを目指してくださいね。
まとめ
私たちの食生活にとても身近になっているヨーグルトは体によい効果があるので日常的に摂取できるとよいでしょう。食べ続けることによるデメリットも少ないことがわかりましたね。ヨーグルトを食べるメリットを最大限に引き出せるように、ぜひバランスを意識して日々の生活に取り入れてみてください。
(文:関水芳江 先生/監修:川口由美子 先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます