【医師監修】眠りつわりが辛い……原因と眠気が強いときの対処法8つ
つわりというと吐き気やおう吐が思い浮かびますが、中には日中、強い眠気におそわれる、いわゆる「眠りつわり・寝つわり」で悩まされる妊婦さんもいます。これが起こる理由と8つの対処法を解説します。
- 眠りつわりの症状はどんなもの?
- つわりの症状はいろいろ
- 眠りつわりの症状
- 眠りつわりの影響は?
- 眠りつわりが起こる時期とその理由
- 通常のつわりは妊娠初期に起こりやすい
- 眠りつわりになりやすいのも妊娠初期
- 後期にも大きなお腹などで睡眠が浅くなって起こる
- 眠りつわりの対処法|昼間の眠気を覚ます方法3つ
- 眠い時はがまんせずできるだけ横になる
- (1)20分以内の昼寝をする
- (2)日光を浴びる
- (3)カフェインを少し摂る
- 眠りつわりで辛いときの対処法|普段から気を付けること5つ
- (1)寝る前にスマホを見ない
- (2)寝る2、3時間前に入浴する
- (3)寝室は寝るモードにしてリラックス
- (4)「左側を下にした横向き」で寝る
- (5)朝起きたら日光を浴びて朝ごはん
- まとめ
眠りつわりの症状はどんなもの?
通常、つわりというとおもに吐き気やおう吐のことを指しますが、これ以外にも人によってはさまざまな症状を起こすことがあります。
つわりの症状はいろいろ
「つわり」は妊娠によって起こる、胃や腸などの不快な症状のことです。妊婦さんの50~80%に起こると言われていますが、症状が重い人もいる一方でまったくない人や軽い人もいて個人差が大きいマイナートラブルです[*1]。
実はつわりがなぜ起こるのか、くわしくはわかっていません。妊娠すると起こるホルモン変動の影響などが言われていますが、そのメカニズムはまだはっきりとは解明されていないのです。
人によって悩まされる症状がさまざまなのも特徴で、医学用語ではなく、きちんと定義されているわけではありませんが、一般的に胃腸の不快な症状以外もつわりに含めることがあります。下記のような不調に悩まされる妊婦さんは多いようです。
一般的に言われている「つわりの種類」
・「吐きづわり」:吐き気やおう吐
・「食べつわり」:空腹になると気持ちが悪くなるのでしょっちゅう物を口にしたくなる
・「よだれつわり」:唾液による不快感
・「眠りつわり・寝つわり」 :強い眠気やだるさが続く
眠りつわりの症状
「眠りつわり(寝つわり)」では、全身のだるさや強い眠気で一日中寝て過ごしたり、いくら睡眠をとっても寝足りない感じが続いたりします。
眠りつわりの影響は?
眠りつわりがひどく一日中寝て過ごしてしまうと、赤ちゃんへの影響が心配になる人もいるかもしれませんが、それはほとんど心配ありません。逆に、妊婦さんの睡眠不足は赤ちゃん・ママの両方にとってあまり良くないことがわかっています。
ただし、あまりにも寝ている時間が多いと、運動や栄養・水分摂取が不足することもあるので、起きているときは意識して体を動かしたり、食事や飲み物を口にしたいですね。
眠りつわりが起こる時期とその理由
眠りつわりは、妊娠期間のなかでもいつごろ起こることが多いのでしょうか。
通常のつわりは妊娠初期に起こりやすい
胃腸の不快な症状が起こるつわりは、
・始まる時期:早くて妊娠5~6週ごろ(妊娠5週:生理予定日の1週間後)
・ピーク:妊娠8~10週ごろ
・治まる時期:妊娠12~16週ごろ
のことが多いと言われています。ただし、つわりは個人差が大きいので、こういった経過をたどらない人は珍しくありません。
眠りつわりになりやすいのも妊娠初期
眠りつわりも妊娠初期に起こりやすい症状です。これは、妊娠初期から分泌量が増加し始める「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の影響ではないかと言われています。
プロゲステロンには「0.3~0.5℃ほど」体温を上昇させる働きがあり、このために夜寝つきが悪くなって睡眠サイクルが乱れることで、昼間に強い眠気やだるさを感じる可能性があるのです。
妊娠中期に続くことも
妊娠中期になるとプロゲステロンを分泌する場所は変わり、体温を上昇させる作用はなくなると言われています。ただし、一度乱れた睡眠サイクルがなかなか元に戻らないと、妊娠中期になっても時差ボケのような状態が残って、眠りつわりが続くこともあります。
後期にも大きなお腹などで睡眠が浅くなって起こる
妊娠後期になると、お腹が大きくなり寝るときの体勢に苦労します。また、子宮の収縮や胎動、頻尿、腰痛なども増えてくるので、夜間の眠りは浅くなりがちです。
そのために、やはり夜中に何度も起きてしまうと日中眠気をもよおし、眠りつわりを起こす原因になります。
眠りつわりの対処法|昼間の眠気を覚ます方法3つ
日中、起きていたいのに、眠りつわりがひどい場合はどうしたら良いのでしょうか。
眠い時はがまんせずできるだけ横になる
眠りつわりのときは、基本的に無理せず横になるのが一番です。ただ、仕事や家事などがあって、そうも言っていられないことはありますよね。
そんなとき試してみて欲しい方法を3つ紹介します。
(1)20分以内の昼寝をする
日中、眠りつわりで辛いときは、可能であれば短時間の仮眠をとりましょう。短い昼寝は眠気を減らすのに役立つことがわかっています。
ただし、長時間の昼寝はかえって、夜の寝つきを悪くしたり眠りが浅くなったりして睡眠サイクルがますます乱れるもとに。
そのため、昼寝の長さは「10~20分程度」がベストと言われています[*2]。この程度であれば、仕事中であっても昼休みなどを利用してとりやすいのではないでしょうか。
(2)日光を浴びる
日光を浴びると「メラトニン」というホルモンの分泌が抑えられます。メラトニンには眠気を起こす作用があるので、日の光を浴びると眠気が軽くなることが期待できます。
とくに起きてすぐ「朝日を浴びる」のが効果的。眠りつわりが辛い時期も、朝はできるだけ同じ時間に起きて朝日を浴びるようにすると、睡眠サイクルが整い日中の眠気を減らすのに役立ちます。
(3)カフェインを少し摂る
妊娠中はカフェインの摂取に気を付けている人も多いですよね。たしかに妊婦さんはカフェインの摂り過ぎに注意が必要ですが、コーヒーなどカフェインを含む飲料を一切口にしてはいけないということではありません。
妊娠中も、「1日にマグカップ2杯程度」のコーヒーに含まれるカフェインであれば摂取しても問題はありません[*3]。カフェインには眠気を覚ます作用があります。
なお、カフェインは体の中に意外と長い時間留まります。とくに妊娠中はその傾向が強まるので、夜間の睡眠に影響しないよう、摂る場合は就寝時間の6時間前までにしておくと良いでしょう[*4]。いつも午後10時ごろに就寝するのであれば、午後4時ごろ以降のカフェイン摂取は控えると夜の睡眠に影響するのを防げます。
ほかに、「ガムを噛む」「ストレッチで気分転換する」「顔を洗う」「ミントなどの気分がすっきりする香りをかぐ」などの方法を試すこともできます。自分に合った方法で眠気をコントロールしましょう。
眠りつわりで辛いときの対処法|普段から気を付けること5つ
ここからは、眠りつわりの症状がなるべく出ないように普段から気を付けたいこと、試してみて欲しいことを解説します。
(1)寝る前にスマホを見ない
スマートフォンやタブレット、テレビ、PCなどの画面は、メラトニンの分泌を妨げる「ブルーライト」を発します。メラトニンが減ると眠気が起きにくくなります。
「就寝の2~3時間前」以降は、こうした電子機器の使用は避けましょう[*5]。
(2)寝る2、3時間前に入浴する
就寝の数時間前に一時的に体温を上げると、脳の温度が下がっていくときに眠気を感じやすくなり深い睡眠がとれると言われています。
そのため、「入浴は寝る2~3時間前に済ませておく」のがおすすめ[*6]。寝る直前に入浴するとかえって寝付きにくくなるので注意してください。
(3)寝室は寝るモードにしてリラックス
寝る前に心身が緊張しているとなかなか入眠できないので、寝室ではリラックスモードになりましょう。
強い照明の光もメラトニンの分泌を減らしてしまうので、お風呂に入ってから寝床に入るまでは照明を落とした寝室でゆったり過ごしましょう。
(4)「左側を下にした横向き」で寝る
妊娠中期以降、お腹が大きくなり始めたら「横向き」のほうが寝やすいかもしれません。とくに「左側を下」にして横になると、心臓から全身や子宮内の赤ちゃんへと血液が流れやすくなります[*7]。
寝ているときずっと左側を下にしていなければいけないということではなく、時々、右側を下にすると腰の左側にかかる負担を和らげることができます。
また、枕やクッションを「お腹の下」や「脚の間」「腰のくびれ部分」に置くとより楽に眠れるかもしれないので、いろいろ試してみてください。
(5)朝起きたら日光を浴びて朝ごはん
睡眠サイクルを整えるのにもっともよい方法は、「毎日同じ時間に起きて朝日を浴びること」です。そうすることで、睡眠サイクルの乱れをリセットできます。
また、簡単なメニューで構わないので、起きたら朝ごはんも食べましょう。日中、活発に活動するための脳のエネルギーを補給すると同時に、朝食を摂ることも体内時計を整えるのに役立ちます。
まとめ
妊娠中に眠りつわりで辛くなる理由と、強い眠気で困ったときの対処法を解説しました。眠りつわりは、妊娠によって体に起こる自然な変化のひとつ。眠気を感じたらできるだけ無理せず体を休めて欲しいのですが、状況によってはそうできないこともありますよね。
眠りつわりに悩まされているとき、短時間の昼寝など、眠気の軽減にすぐに役立つ対処法もありますが、やはり普段から睡眠サイクルを整え、夜間ぐっすり眠って日中は自然と目が覚めている状態が理想的です。妊娠中は睡眠の乱れが起こりやすい時期なので、ここで紹介した方法を日々実践して、毎日の眠りを整えることも意識してみてください。
(構成・文:マイナビ子育て編集部/監修:宋美玄 先生)
※画像はイメージです
[*1]病気が見える 産科, メディックメディア, 2018.
[*2]米睡眠財団:昼寝
[*3]食品安全委員会:食品中のカフェイン
[*4]米睡眠財団:カフェインと睡眠
[*5]米睡眠財団:ブルーライトが睡眠に与える影響
[*6]e-ヘルスネット:快眠と生活習慣
[*7]米睡眠財団:最高の睡眠姿勢
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます