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2021年01月28日 15:51 更新

【助産師解説】母乳育児のここがつらい!乗り切り方は?<ママ体験談>

赤ちゃんが生まれると、ママはお世話に大忙しになります。初めてのことばかりで、戸惑うことも多いでしょう。中でも特に頭を悩ませるのが、「母乳」「授乳」について。今回は働くママに「母乳育児」についての悩みを聞きました。記事の最後にある助産師さんの解説は必見です!

今更ですが、母乳ってどんなもの?【母乳・授乳基礎知識】

産後のママにとって、子育てのスタートを実感する存在である「母乳」。でも、溢れるほど出る人も、なかなかスムーズに出てくれなくて困っている人も、実は母乳ってどうやって分泌されるものなのか、いざ説明するとなると……ん? 母乳ってなんだっけ?となりませんか? いまさら聞きにくい「母乳」について、まずはちょっとおさらいです。

母乳育児をするママと、うとうとする赤ちゃん
Lazy dummy

母乳はどうやって出るの?【母乳の作られ方】

母乳は出産後初めて作られると思いがちですが、妊娠中から準備が始まっています。妊娠初期から乳腺(にゅうせん)組織は分泌の機能が活発に。出産前に少しだけ透明で粘り気のある初乳が出る方もいます。

かといって、妊娠中からどんどん母乳が出るわけではなく、本格的に母乳が出始めるのは、産後2~3日ごろ。出産してすぐに出てくるわけではありません。妊娠中は女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が母乳が出ないように調整をしています。分娩を終えて胎盤(たいばん)がはがれると、女性ホルモンの抑制がなくなり、プロラクチンというホルモンがたくさん分泌され、母乳が作られるようになります。

母乳育児が勧められるわけ【母乳育児のメリット】

・赤ちゃんへのメリット

母乳育児のメリットとして、ひとつに母乳には免疫物質が含まれていて、赤ちゃんを多くの病気から守ってくれることがあります。

母乳には大きく分けて2種類あり、ひとつ目は、「初乳」。黄色味を帯びた母乳で、産後3~5日ほどの間に出ます。もうひとつは「成乳」で、産後2週間以降に出るようになる白色の母乳です。

特に、初乳には免疫物質(免疫グロブリンやラクトフェリン)が多く含まれ、赤ちゃんを感染から守ってくれます。一方、成乳は免疫物質のほか糖質や脂質が多く含まれるのが特徴です。

また、消化しやすく赤ちゃんの未熟な消化機能を助けてくれるのも、母乳のメリットといえます。

・ママへのメリット

母乳育児は赤ちゃんだけにメリットがあるわけではありません。

赤ちゃんがおっぱいを吸うことで“オキシトシン”というホルモンが分泌され、産後のママの子宮復古(子宮が産前の状態に回復すること)をうながしてくれます。

そして、授乳をすることで妊娠前の体重に戻りやすくなったり、ママが乳がん、卵巣がん、子宮体がん、糖尿病、メタボリック症候群、消化器・呼吸器系疾患などになるリスクを下げてくれるのです。

母乳育児・授乳の現実 ~ママたちの声~

そんなメリットたくさんの母乳ですが、誰でも楽々できるというわけではありません。そこで、現役子育て中のママに「母乳育児」「授乳」についての声をお聞かせいただきました。

「母乳パッドがうらやましかった」

母乳がうまく出ていないと、ほかのお母さんの様子が気になったりうらやましくなったりしますよね。完母(完全母乳)になるまで少しずつでも母乳の量を増やすことができたのは、お母さんのがんばりのたまものですね!

「ファミレスで服まで母乳まみれに」

赤ちゃんがむせてうまく飲めなかったり、乳腺炎の原因になったり……母乳が出すぎるのも悩みが多いママはたくさんいます。

「1時間、おっぱいを吸い続ける娘」

1時間の授乳は大変でしたね。長く飲み続けることで母乳の量は増えていきますし、カロリーの高い母乳を飲むことができます。赤ちゃんが満足するまで授乳をすることはとても大切なことですよ。

「赤ちゃんの都合でミルクに」

定期的に母乳外来に通うことで安心感はありますよね。ただ、保険がきかないので、お財布的にはきついのも事実です。母乳ケアに補助が出る自治体もあるので、お住まいの地域のことを調べてみるのもいいかもしれません。

「完母→混合→数ヶ月後、母乳のみに」

ママの睡眠時間確保のため家族も協力、すばらしいです。1日8回以上の授乳を続けていくと少しずつ分泌量は増えていきますが、お母さんの体と心のストレスをとることも分泌アップのためにとても大切なことです!

「泣く我が子を見て涙」

産後はブルーになる時期でもありますし、赤ちゃんの泣き声だけでなぜか悲しくなってしまう気持ち、よくわかります。助産師である自分もよくメソメソしてました。自分がイメージする授乳ができないことがストレスにつながることもあります。自分が出産する病院がどういう授乳指導をするところか、妊娠中に調べておくのもいいかもしれませんね。

「母乳じゃないのはそんなにいけないこと?」

スーパーや公園で会うおばあちゃん世代の方々は、赤ちゃんをかわいがってくれる人も多くいますが、育児法にまでぐいぐい意見してくる人も。適度に受け流すのが一番とはいえ、やはり気になってしまうのはすごくわかります。

※マイナビ子育て調べ 調査日時:2019年1月22日~1月28日

助産師・清水茜先生からママたちへのアドバイス

ママたちからのアンケート結果を受け、助産師の清水茜先生に「母乳育児」に関してのアドバイスをいただきました。

必ずしも「頻回授乳=母乳が足りていない」というわけではない

母乳育児・授乳に関しては、多くのお母さん方が悩みを持っているのが現状です。厚生労働省が発表したデータ[*1]によると、0~2歳の子供を持つ保護者の77.8%が「授乳について困ったことがある」と回答しています。

すぐに泣いてしまう赤ちゃんを前に、本当はよく出ているのに「母乳が足りていないのかも……」と悩んでしまう感覚を《母乳不足感》といいます。まずは、母乳の間違ったイメージを変えていきましょう!

<母乳の間違ったイメージの例>
・出産したらすぐに母乳が出てくる
・赤ちゃんは授乳のとき以外は寝ている
・授乳は毎回きっちり3時間ごと


出産後すぐの頃は、1日に10回以上の頻回授乳が必要な場合もあります。母乳は消化のスピードが速いので、頻繁に赤ちゃんがおっぱいを欲しがるのも不思議なことではありません。

頻回授乳は母乳の出る量だけでなく、赤ちゃんの吸い方が上手でないことや、赤ちゃんの胃袋が小さく、すぐにお腹が空いてしまうことが原因のこともあります(赤ちゃんの胃のおおよその大きさは、新生児でサクランボ大、1ヶ月児で鶏卵大と言われています)。

また、お腹が空いてなくても、おっぱいを吸うことで安心感を得られるため、「すぐ泣くのでおっぱいを吸わせたはいいけれど、ろくに飲まずに寝てしまった」ということも多くあります。お母さんと触れ合えて、赤ちゃんはとても安心をしているのです。

なお、母乳の量が足りているかは、赤ちゃんの体重増加量などのほかに1回の哺乳時間、授乳間隔、機嫌、尿やお通じの回数などを参考に判断されます。
【一日あたりの体重増加量の目安】[*2]
・生後0~3ヶ月:25~30g
・生後3~6ヶ月:15~20g
・生後6~12ヶ月:10~15g

母乳育児じゃなくても、お母さんはお母さん

記事の冒頭にあるように、母乳には免疫物質が含まれ、消化吸収にも優れています。しかし、母乳の出には個人差があり、分泌が少ないことに悩むお母さんもたくさんいます。

「母乳が足りていないかも」などの不安は一人で抱えず、医師や助産師に相談するといいでしょう。相談できる場所が自宅近くにあるかどうか、調べておいてもいいかもしれませんね。

また、職場復帰やお母さんの体調、赤ちゃんの体の問題などで、母乳で育てられない場合もあります。

周囲から母乳育児を推奨されるあまり、混合栄養(母乳とミルクの併用)や人工栄養(ミルク)への移行に罪悪感を持ってしまうお母さんも少なくありません。

ミルクも、赤ちゃんの発育に必要な栄養を十分に含むよう調整されているものです。母乳であってもミルクであっても赤ちゃんと触れ合う時間を大事にしながら、「私がこの子のお母さん!」と自信と愛情を持って過ごしてください。

(構成:マイナビ子育て編集部、監修:清水茜先生)

参考文献
[*1]厚生労働省 平成27年度 乳幼児栄養調査
[*2]Casey PH. Failure to thrive. Developmental-Behavioral Pediatrics 4th eds. Carey WB, Crocker AC, Coleman WL, Elias ER, Feldman HM eds. Saunders Elsevier Philadelphia PA. pp.583-591,2009

我部山キヨ子ほか 編, 助産学講座2 基礎助産学〈2〉母子の基礎科学 第5版, 医学書院, 2016, p64
医師国家試験のためのレビューブック 小児科 2017-2018, メディックメディア, 2017, p13-14
日本産婦人科学会 監修, HUMAN+副読本 Baby+ お医者さんがつくった妊娠・出産の本, リクルートホールディングス, 2016, p92
医療情報科学研究所 編, 病気がみえるvol.10 産科, メディックメディア, 2017, p366
子育ての常識・非常識 どっちが正しいの⁉ 育児の世代対抗戦, 保健同人社, 2014, P10-16

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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