ノビルの食べ過ぎは危険?食中毒のリスクは?ノビルの栄養効果や採取の注意点を解説【管理栄養士監修】
市販ではあまり見かけないノビル。野生のノビルが案外身近なところに生えていることもあるようですが、ネギに似た風味がおいしく、採れたときにたくさん食べてしまうこともあるかもしれません。ノビルの食べ過ぎには何か危険はあるのでしょうか? ノビルを食べるときの注意点をお伝えします。
ノビルとはどんなもの?
ノビルはネギの仲間です。ニンニクやネギなど、根や茎を食べるにおいの強い植物はかつて蒜(ひる)と呼ばれており、春にあぜ道や川岸の土手に野生で生えるものを野蒜(のびる)と呼んでいたことが、名前の由来とされます[*1]。 市販ではあまり見かけませんが、ノビルとはどんな食べものなのでしょうか。
ネギやにんにくのような香り
ノビルはヒガンバナ科ネギ属の多年生植物で、古くから食べられている山菜(野草)です。葉の部分はネギやニラに近い風味があり、鱗茎(りんけい:いわゆる球根)はらっきょうに似た形で、にんにく臭があります[*2,3]。
生で食べられるの?
ノビルは生でも食べられるので、ネギのように生のまま刻んで薬味として使うことなどができます。また、葉を茹でて和え物や汁物の具にする食べ方もあるようです[*3] 。
ノビルに含まれる栄養・効能とは?
ノビルに含まれる栄養と効能を見ていきましょう。
ビタミンC|1日の推奨量の半分以上
ビタミンCの1日の推奨量は100mgですが[*4]、ノビルには100gあたり60mg含まれています。見た目や風味が似ているニラは19mg、葉ネギは32mgと、ノビルの方が豊富なことがわかります[*5]。 ビタミンCは水溶性なので、味噌汁やスープに使うと汁ごと食べることができ、無駄なく摂れるでしょう。
ミネラル|鉄などが摂れる
ノビルには100g中に2.6mgの鉄が含まれています[*5]。鉄分が多いといわれる小松菜が2.8mgなので、野菜の中では多い方だと言ってよいでしょう。ちなみにニラは0.7mg、葉ネギは1mgです。
そのほか、体内から余分な塩分を排出するカリウムや、カルシウム、マグネシウム、リンなどの骨や歯の形成に関与するミネラルが含まれています[*5] 。
ただし、ノビルだけをたくさん食べたからといって、効果が期待できるかどうかはわかりません。栄養素は互いにバランスをとって作用しているので、いろいろな食品から摂れるといいでしょう。
食物繊維|水溶性もしっかり摂れる
ノビル100gに含まれる食物繊維は6.9gと豊富です。さらに、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が同じくらい含まれています[*5] 。
<100gあたりの食物繊維量>[*5]
ノビル…6.9g(水溶性:3.3g 不溶性:3.6g)
葉ネギ…3.2g(水溶性:0.3g 不溶性:2.9g)
ニラ…2.7g(水溶性:0.5g 不溶性:2.2g)
ネギやニラと比べても多いことがわかりますね。水溶性よりも不溶性を含む食品の方が多いので、水溶性もしっかり摂れるノビルは食物繊維の摂取源になってくれるでしょう。
水溶性食物繊維には便を柔らかくする作用、不溶性食物繊維には便のかさを増やす作用があります。便秘が気になるときには、便通を整えるのに役立つ食品の1つになりそうですね。
ノビルを食べ過ぎると危険?
健康効果を期待してノビルを食べ過ぎてしまったらどうなるのでしょうか。
食べ過ぎによるリスクは低い
ノビルには過剰摂取に注意したい栄養素なども特にないため、食べ過ぎによって健康障害を引き起こす可能性は低いです。
ただしノビルに限らず、食べ物を一度に大量に摂取して消化不良をきたし、場合によって腹痛や下痢になることは考えられるでしょう。また、辛み成分の摂り過ぎで胃腸に過度な刺激を与えてしまうかもしれません。特に食べ過ぎによる大きなリスクがないからといって、制限なく食べるようなことは避けてくださいね。
ノビルに毒性はあるの?
ノビルに毒性はありません。安心して食べられる食材です。しかし、ノビルに似た植物を食べて食中毒を起こすケースがあります。
ノビルと間違いやすい毒性のある植物には、葉の形がノビルと似ているスイセンやヒガンバナがあります[*6]。見た目から区別するのは難しいですが、においで見分けることは可能です。葉をもんだり切ったりするとノビルにはニンニク臭がありますが、スイセンはにおいが弱く、青臭いという違いがあります[*7]。もっとも、素人には難しいところもあるため、ノビルだとはっきり判断できない場合は食べないようにしましょう。
ノビルの適量|1日50~70g程度
何をどれだけ食べたらよいかという目安を示した「食事バランスガイド」では、野菜は70gを1単位として、1日に5~6単位食べるようにとしています[*8] 。ノビルは鱗茎の部分を食べるかどうかでも食べやすい量に少し差がありますが、1単位分をだいたいの目安と考え、1日70gくらいがいいでしょう。いろんな種類の野菜を組み合わせてくださいね。
ノビルの美味しさを引き出す調理のコツ
薬味として生で食べるだけでなく、加熱しても楽しめるノビルの調理のコツをご紹介します。土が付いていることもあるので、残らないようにきれいに洗ってから調理をはじめましょう。
おすすめは「茹でる」
ノビルは茹でると鱗茎の苦みや渋みが減ってうま味が増すという特徴があります。茹で時間を3分程度にするとよいという報告もあるので[*9]、試してみてくださいね。 また、辛みやにおいも茹でることで軽減すると考えられるため[*9]、 においが気になるときは茹でこぼしてから調理をするのがおすすめです。
まとめ
農作物として一般にあまり出回っていないノビルですが、ニンニクやネギのような風味があり、ビタミンやミネラルもあるので、野菜の1つとして旬の時期などに楽しむとよいですね。しかしながら、他の毒のある植物と間違いやすいため、野草の知識がなく野生のノビルを採取して食べるのは危険です。くれぐれも注意しましょう。
(文:二橋佳子 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]農畜産業振興機構 :月報 野菜情報-今月の野菜-にんにく-2011年10月
[*2]石丸幹 、大島一里、 福田伸二:健康野菜としてのノビルの可能性、農業および園芸、第 93巻 第5号 (2018年)
[*3]農林水産省 :消費者相談
[*4]厚生労働省:日本人の食事摂取基準2020年版
[*5]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*6]厚生労働省:有毒植物による食中毒に注意しましょう
[*7]厚生労働省:自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スイセン類
[*8]農林水産省:食事バランスガイドについて
[*9]萱島 知子, 福田 伸二, 大島 一里:山野草ノビル (Allium macrostemon Bunge) の嗜好特性とDPPHラジカル消去活性、日本家政学会誌、73巻1号(2022)
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます