ひだまりクリニック 佐山圭子先生|小児科医として親と子どもが納得できる医療を提供したい
3人のお子さんを育てながら、小児科医として30年以上活躍してきた佐山圭子先生。現在は、東京都杉並区にあるひだまりクリニックの院長として、外来診療のみならず産後ケアや育児支援などにも力を入れています。 今回は、佐山先生にクリニックの特徴や、日々の診療で心がけていることなどについてお話を伺いました。
第二子の妊娠・出産経験が開業のきっかけに
佐山先生が開業したきっかけは、ご自身が妊娠や出産の際に受けたケアでした。「周産期に質の高いケアを受けられれば子育てがしやすくなる」という実感から、母親支援ができるクリニックをつくろうと決意します。
予防医療を中心に行う完全予約制のクリニック
当院では、1階で小児科の外来診療、2階で母乳相談・産後ケアや子育て関連の講座などを行っています。一般的な小児科と違うのは、完全予約制で、主に予防医療を提供するクリニックだということです。
予防接種や乳幼児健診を中心に行っているため、「小児科に行ったら風邪をもらって帰ってきてしまった」といった心配がありません。
小児科医としての経験や、私自身の出産・育児経験などから、とくにお母さんへの支援に力を入れたいと考えていたため、このような診療体制になりました。お母さんが幸せで安心して笑顔でいることは、お子さんにとっても大切なことですからね。
子育て支援はお母さん支援
2階では助産師が中心となって、さまざまなクラスを運営しています。月齢別クラスでは、子育てに関する悩みを参加者同士で共有しながら、スタッフが相談にのったり、解決のためのアドバイスをしたりしていますね。
人間関係に悩むお母さん向けの「こころのケア講座」や、流産・死産や新生児死亡などで悲しい経験をした親御さんたちに向けたグリーフのためのピアサポートクラスも開催しています。お母さんたちが、自分の気持ちを安心して吐き出せる安全な場を提供することで、辛い気持ちが少しでも楽になればと思っています。
患者さんが納得できる医療を提供したい
佐山先生が大切にしていることのひとつに「納得」というキーワードがあります。お子さんには診察が必要な理由を年齢にそって説明し、お母さんの希望を尊重することで、親も子も納得して医療にかかれるよう配慮しています。
子どもにもわかりやすい丁寧な説明を意識
とくに小さなお子さんたちに対しては、診療に伴う苦痛が最小限になるよう心がけています。お子さんが3歳くらいになったら、予防接種や健診の必要性などをわかりやすく説明することも意識していますね。「予防接種は体を病気から守るために必要なことだよ」「あなたをいじめるために注射するんじゃないよ」といった説明を丁寧にして、お子さんたちに納得して診療を受けてもらえるようにしています。病気に強くなるためにするのだとあらかじめ説明しておく方が、だますように連れられていきなり接種されるよりずっと子どもは納得すると思います。
お母さんの気持ちを大切にしたい
とくに赤ちゃんが生まれたばかりのご家庭に対しては、赤ちゃんとお母さんの関係がうまくいくようなサポートを意識しています。産後ケアでは、多職種連携でお母さんが自信を持って子育てできるようにするのが目標です。そのために大切なのは、お母さんの気持ちを尊重することです。「お母さんはどうしたいの?」といったことを必ず確認して、希望に沿った診療やケアが提供できるよう心がけています。
たとえば、「母乳育児を頑張りたい」というお母さんの強い希望がある場合には、助産師と工夫しながら頑張っていきます。お子さんの発育や発達をチェックしたり、ミルクの量を調節したりして工夫しながら、母乳育児が長く続けられるよう支援しています。結果だけでなく、その経過やご自身の努力に納得できるように……と考えています。
小児科医には悩みや不安を気軽に相談して欲しい
最後に保護者の方に向けてメッセージをいただきました。
親の思いや考えを素直に伝えることが大切
小児科医には、ぜひフランクに悩みを打ち明けてほしいですし、医療や子育てに関する希望があれば遠慮なく伝えてください。小児科に限ったことではありませんが、患者さんと医師がしっかりとコミュニケーションをとらないと、お互いに納得できる医療を成立させるのが難しくなってしまいます。「赤ちゃんに薬を飲ませたり塗ったりするのが不安」「体の状態を知りたいだけだから薬は処方しなくていい」といった要望があれば、それをきちんと医師に伝えることが大切です。もちろん、必要な医療であれば、納得していただけるように説明します。どんな要望も全て受け入れられるわけではありませんが、自分の意思を伝えることは納得のいく医療に重要です。
小児科通いは上手く医療にかかるための練習
小さなお子さんはよく熱を出しますし、いろんな病気にかかりますよね。通院したり、職場や家族で調整したりと、負担に感じる方が多いかもしれません。子どもが小さいときには、コミュニケーションの力、調整する力、人に頼る力が必要になります。子どもは成長と共に体が強くなり、小児科に行く頻度は徐々に少なくなるでしょう。それでも、その時につちかったコミュニケーション力、調整力、受援力はその後の人生にきっと役に立ちます。また、自分や家族が病気になって病院通いが必要になったときに、小児科通いの経験が役に立つことがあるのです。
患者さんと医師は対等な関係ですから、病院に行ったら自分の気持ちをしっかりと医師に伝えるよう意識しましょう。人間関係の対等性は、世代、性別、立場がちがっても大切なものです。夫婦で対等、職場で対等、病院・学校・保育園で対等、親子も対等だと思います。そういった対等な信頼関係を見て育つ子は、自分も他人も信頼して大事に思うことができ、その子らしさを自信を持って出してのびのびと育つことができると思います。
ひだまりクリニック
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(取材・文:株式会社メディコレ)