「脳みそに書いて貼る」「ルーレット制」市井紗耶香流、家事・育児を両立するヒントとは?/市井紗耶香さんインタビュー(後編)
4人の子どもの母親であるタレントの市井紗耶香さん。14歳でモーニング娘。としてデビューし、16歳で脱退すると、20歳で結婚&出産、パートとして働きつつ、離婚&再婚……と、意外な波乱万丈人生を歩んでいます。後編では、仕事と家庭との両立、そして夫婦が良好なチームを作るための秘訣を聞きました。
午前の仕事中から、頭の中は夜ごはんの献立
ーー現在、上のふたりのお子さんは高校生と中学生、下のふたりのお子さんは小学校と保育園に通っていらっしゃいますが、仕事と家庭を両立する市井さんの1日のスケジュールを教えてください。
市井紗耶香(以下、市井) 朝は早起きをしてお弁当を作ったり朝ごはんの準備をして、子どもたちを見送ったり保育園に送ったりしたあと、家の掃除をします。それが終わると仕事ですね。外出するときもあれば、最近はリモートでの作業やミーティングも多いですね。でも、午前中から頭の中では夜ごはんなどの買い物のことを考えていて(笑)。買い物に行くまで忘れないように、思いついたらすぐに付箋に書いていてます。「フローリング掃除用の詰め替えシート」とか(笑)。それを私は「脳みそ」と呼んでいるんですけど、長女にも「それ、忘れちゃうからママの脳みそに書いておいて!」と言うと、「はいはい、書いておくね」と、ペタッと貼っておいてくれます。
ーー脳みそ!(笑)。タスクを並行してこなしていると、忘れてしまいますもんね。
市井 そうなんですよ。特に長女は受験生で、三者面談や保護者会などが続いているので、トピックが多いんです。新年度初日に学校から年間スケジュールが配布されるので、それを全部カレンダーに書くようにしていますが、真っ黒になりますね。「運動会は絶対休みを入れなきゃ」とか「この日は入金日だ」とか。あとで「え……、この日にこんな行事があったの!?」となるのが怖いので。何度もそういう経験をして失敗した上で、今の「事前に全部カレンダーに書く」方式を採用して、日々淡々とこなしています。
長女にサポートしてもらい「ママ、結果出すね!」と仕事に奮起
ーーその話を聞く限りでは、上のお子さんたちのときに、なにか失敗があったのですね(笑)。
市井 ありましたよ~! ママ友とお茶をしていたら「え! 今日保護者会なの!?」とか。でも、夫はカレンダーを見て「なにこれ」と言うんですよね、「いや……、あなたも知っておいてよ」とは思うんですけど(笑)。
ーーそんなことを言われたら、私なら夫に当たってしまいそうになります(笑)。
市井 夫は自営業ですし、土日・祝日は休みが取れないことをわかった上で結婚したので、それはそれ、です。仕事を休んで参加してくれることもたくさんありますし、とても感謝しています。すでに私の母親が亡くなっていて、義母を頼ることもあるので、「周囲のサポートあっての自分」ということは強く感じますね。
最近は長女が下の子を見てくれるので、もう素直に「ありがたい! ママ、仕事で結果出すね! 行ってきます!」と伝えています。18歳で成人しているということもあり、イレギュラーですが、保育園のお迎えに行ってくれたこともありました。
ーー仕事が片付かないのにお迎えの時間が迫っているときの焦りは、ストレスですよね。
市井 自分ひとりの力では調整が難しいとき、たくさんありますよね。特に今の仕事は時間の区切りがないからこそ、その都度夫にも相談しています。「このくらい時間がかかりそうなんだけど、私にとっても、家族にとっても、この先の人生のことを考えると、いろんなことに繋がっていく仕事だと思うから、協力してほしい」と。
家事分担は1週間ごとのルーレット制
ーーそうやって、丁寧に言葉にすることは大事ですよね。
市井 今までの私は、そこまでできなかったと思うんです。有頂天になっていたというか、「いつでも仕事がいただけるだろう」と思っていた部分が正直ありました。肩書きで生きてきた自分もいますしね。
ただ、時代は変わるし、そんなに甘くないことを痛感しています。歳を重ねて、社会人としてシビアに見られているんだろうな、と。
ーーやるべき家庭のタスクをこなしつつ、仕事に全力で向かう姿勢が垣間見えます。そうなると、市井さんに家事が集中してしまうのは尋常じゃなく大変かと思いますが、家事分担はどうしていらっしゃいますか?
市井 私と夫、上のふたりの4人で家事ルーレットを作って、1週間ごとに回しています。
ーー学校の給食当番みたいなものですね!
市井 そう、月曜日はトイレ掃除とお風呂掃除はパパで、洗濯物をたたむのは長女、とか。ただ、そこまで厳密ではなくて。子どもたちのテスト期間中やその前後は負担が大きくなるので、「なにかあれば常に口に出して誰かに頼ること」「みんなが思いやりの心で動くこと」というのは常に伝えています。最近ようやく、チームプレイになってきたなあと思います。まだまだ構築中ですけどね。
オーブンと洗濯乾燥機は、神!
ーーいつ頃からルーレットを採用しているんですか?
市井 長女が小学校3年生ころからです。子どもたちはいずれ巣立っていくから最低限の家事を覚えてほしかったし、夫と「みんなで住む家は、みんなできれいにしよう」という意見が一致したので。
ーー旦那さまも積極的だったんですね。
市井 ルーレットは夫が作ってくれました。まあ彼はサボることもありますが、それはもういいと思っています。家事が回らなくなる前に自分がやらないと。
ーー寛大です……! そうした家事の負担軽減のために、市井さんが使っている時短に繋がるアイテムはありますか?
市井 やっぱりオーブンは神ですね。前日の夜にグラタンやラザニアを仕込んで冷蔵庫に入れておいて、翌日の帰宅後、オーブンに入れてるだけでOKですから。その間にお風呂に入ることができますしね。あとは洗濯乾燥機! これもお風呂に入っている間に洗って、寝ている間に乾燥も終わっているのですごく楽です。
ーー市井さんのお話をうかがっていると、家族でもアイテムでも”頼る”ことの大切さがすごく身にしみます。
市井 抱えてしまうとずっと悶々としてしまいますもんね。特に男性は、言ってもわからないときがほんっとうにありますからね。「前、言ったよね!?」って。だからその都度、「ここに置いておいたよ!」とか、「これ、やってくれてありがとう!」とか、いちいち言葉にして出しています。そうすると、いざというときに頼りたいときや大切な話がしたいときに、伝わりやすい気がしますね。
夫への不満は「浴槽を42度にして(笑)」ちょうどいいガス抜きに
ーー世の働くママのイライラの原因の上位には、育児はもちろん、夫への「何も聞いてない!」という不満がありがちです。「靴下を脱ぎっぱなしにしないでって毎日言ってるのに!」とか……。
市井 私、そういう場面に遭遇したら、靴下そのままにしちゃいますよ(笑)。「俺の靴下知らない? 洗濯機に入れて乾燥も終わってるはずなんだけど」「ええ! 知らないよぉ!」って。いじわるですけどね(笑)。
ーーちょうどいいガス抜きになります(笑)。
市井 お風呂の浴槽の温度を、少し上げちゃったりもしますもん。42度にしちゃうんですよ。「なんか今日熱いなぁ」「あ、今キッチンで油を使ったフライパン洗ってるんだ! ごめんね!」と言ったり。鬼ですよねぇ(笑)。
ーーいえ、かわいいです!(笑)。そういったガス抜きは必要です。同時に、旦那さんとケンカにならないためにしている工夫していることはありますか?
市井 うちの一番のケンカの原因は、子どもの進路やお金のことなんですが、気持ちが焦ったまま話そうとすると絶対にいい結果を生みません。だから「ほんとうにこれを伝えていいのか」「こういう伝え方で合っているのか」と、1日置きます。それで翌朝、「今日の夜、相談したいことがある。子どもの進路のことで」と伝えておく。そうすると、聞く体勢を準備してもらえるので、夜に夫がビールの缶を開ける前に「実はね」と切り出すことができます。
ケンカのあとは「私がこの家の太陽!」と言い聞かせる
ーーそれでもケンカになってしまうときはどうしますか? 夫婦が険悪だと、家にいても仕事中も常にモヤモヤして落ち着きませんよね。
市井 そういうこと、ありますよね。でも、ずっと引きずっているのって本当に体によくないので、ケンカした翌朝はもう普通に「おはよう」と言ったモン勝ちだと私は思っています。
ーーそれでも相手がぶすっとしていたらどうしますか?
市井 全っ然いいです! だって、相手がどんどん自分の首を締めているだけですから。「この人にはかなわない」と思わせればいいんですよ。「この家庭は私が回している! 私が太陽!」と自分に言い聞かせて「おはよう! さ、ごはんだよ! いただきます!」と言ってやればいいんですよ!
ーーすごく前向きでステキな考え方ですね! 最後に、これから復職をする読者の方へ、メッセージをお願いします。
市井 復職後、家庭と両立できるかどうかというのは、やってみないとわからないことが大部分だと思います。そのために、事前にさまざまなサポート情報を知っておくことが安心材料になります。病児保育や地域の見守りサービスに登録するなど。そうすると、不安に押しつぶされる前に力を発揮しやすくなると思います。
あとは、家事はそんなに完璧にしなくていいです! とはいえ私も、葛藤はつきまといます。「ごはん、こんなにレトルトでいいのかな」とか。でも、子どもが健康でいてくれることがなによりの安心材料だし、「今日もごはんが出せた! いただきますもできたし、ごちそうさまもできた! すごいじゃん!」の精神で生きています。「今日、家族みんなが家に帰ってこられた」、それだけでいいんです。
information
市井紗耶香さんが舞台に挑戦します!
舞台「遠き日の落球 ~あの時から続いているから今なんだ~」
2023年2月15日(水)~2月19日(日)
シアターアルファ東京(渋谷区東3-24-7)にて
詳細は市井紗耶香 公式ブログ - 舞台 遠き日の落球 - Powered by LINE (lineblog.me)まで!
市井紗耶香/タレント
1983年12月31日。千葉県出身。1998年にモーニング娘。2期メンバーとしてデビュー。現在は4人の子どもの子育てをしながらタレント、俳優業を精力的におこなっている。2023年には舞台・MCなど活動の幅を広げる予定。『saita』ではお悩み相談「市井紗耶香の#本音で話そう」を連載中。
(取材・文:有山千春 撮影:松野葉子 衣装:Velnica/マイナビ子育て編集部)