中学受験で大学付属校を志望する場合の注意点、塾との付き合い方|書籍『やってはいけない塾選び』杉浦由美子さんに訊く#4
私立中学は、付属大学への内部進学ルートがある「大学付属校」と、大学受験を前提とした「進学校」の2種類に分けることができます。両者は入試の出題傾向が大きく異なるため、受験対策を変えなければいけません。塾との相性も異なりそうです。『中学受験 やってはいけない塾選び』の著者・杉浦由美子さんに詳しく訊いてみました。
大学付属校と進学校、入試傾向はどう違う?
――前回は難関校と中堅校の対策の違いについてうかがいました。難関校では「見たこともないような難問」が出るから、それをクリアする力をトレーニングする必要があるというお話でした。ただ、難関校(偏差値60以上)でも、早稲田や慶應といった大学の付属校では、そこまでの難問はあまり出ないように思います。いっぽう、中堅校といわれる60未満の偏差値帯でも、進学校と大学付属校では、やはり出題傾向が違うように思うのですが……。
進学校は大学受験で勝てる生徒がほしい
確かにそのとおりで、進学校と大学付属校の入試の傾向は、偏差値とは別に見ていく必要があります。
ざっくり言えば、進学校は難しい問題を出して、それを一問でも多く解けた子を合格させる。いっぽう、大学付属校が出題するのは、基礎的な問題が大半で、点を落とさない子を合格させます。
これは、進学校は、6年後の大学受験で勝てる生徒がほしいから。大学入試に通じるような問題を出すわけですね。
大学付属校は真面目なタイプの生徒を欲している
大学付属校の入試は、漢字の書き取りの配点が多い傾向があります。
漢字の書き取りは、コツコツと勉強してきた子が点数をとれます。
入学後も、学校の勉強をちゃんとやってくれそうな、真面目な生徒を求めているわけです。大学受験がないからと、遊びほうけられては困るからです。
基礎的な問題しか出ないというわけではありません。早稲田や慶應の付属校ともなれば、それなりに難しい問題も出してきます。
ただ、御三家のように、4科目全部が難しいわけではありません。
早稲田系列の付属校の入試では、算数では難しい立方体の問題を出してきます。ただ、ほかの科目はそこまでハードではないですね。慶應の付属校の入試では、国語は長文を読ませますが、算数は比較的、難問は少ないです。
大手塾の目指すものと大学付属校対策
――そうなると、大学付属校を目指す場合は、塾選びも、進学校を目指す場合とは違う視点が必要になるのでしょうか。
大手塾は御三家の合格実績をあげたい
そうですね。大手塾は、御三家と呼ばれる最難関進学校への合格実績をあげることを優先します。当然、上位クラスでは、御三家対策が中心になっていきます。
大学付属校を狙う子が上位クラスにいると、御三家対策の授業を受けることになるから、付属校対策としては必要ない難しい内容までやる羽目になります。効率が悪いですよね。
毎年、大手塾の下位クラスの子が慶應普通部や早稲田実業に合格して、”大逆転”と騒がれることがあるんですが、基礎を繰り返し勉強してきて、基礎力が高まったからでしょうね。どちらの学校も確かに偏差値60以上の難関校に入りますが、大学付属校としての入試の傾向を考えれば、不思議なことではないんです。
模試偏差値や塾のクラス分けのランキングと、実際の入試は、まったく違います。
大手塾で大学付属校を目指すならここに注意!
――大手塾は大学付属校対策には合わないということでしょうか?
そんなことはありません。
大手塾であれば、志望校別に対策コースがあります。付属校にしては手応えがある難関付属校の対策も、大手塾の志望校別対策コースであれば、しっかり可能です。
ただ、塾内カーストを意識しすぎないことは重要です。具体的には、定期的にあるクラス分けテストで、「無駄に上のクラスを目指さない」こと。
上位クラスに上がりすぎると、筑駒や開成といった最難関の進学校対策の授業に巻きこまれてしまうからです。
ほどよいクラスで自分のペースで勉強すること、志望校の過去問を見て、早めから対策をすることが重要だと思います。
難関付属校対策は入試傾向をよく見て
早稲田実業の算数は、図形や立方体の問題ががっつりと出ます。それらが苦手な子は、早めから対策をしておいた方がいいでしょう。
慶應藤沢の国語は、長文を読ませるので、長文読解のトレーニングしておく必要があるでしょう。
学習院女子は、国語の漢字の配点がとくに大きいので、それの対策は強化しておきたいですよね。
どうやって対策をすればいいか、塾の講師に相談すれば大抵は対応をしてくれますが、塾によってどうしても、温度差はあると思います。
各塾の面倒見についても、書籍『やってはいけない塾選び』に具体的に記載しました。
塾は使いようです。