親子で感動の絶景アトラクション! 日本一高い鉄橋を走る【高千穂あまてらす鉄道】
旅行にベストシーズンの「秋」が到来! 心が揺さぶられるような絶景を見に、家族で旅するのはいかがですか? 今回ご紹介するスポットは、筆者の出身地でもある宮崎県から。パワースポットとしても有名な高千穂町にある【高千穂あまてらす鉄道】です。日本一高い鉄橋からの眺望はバツグンで、要所で乗客を魅了する演出も待ち受けていますよ。
もう一度鉄道を! 復興への熱い想いから生まれた【高千穂あまてらす鉄道】
かつて宮崎県延岡市と高千穂町を結んでいた「高千穂鉄道」は、2005年に九州地方を襲った猛烈な台風14号により、路線の大半が壊滅的な被害を受けました。山あいの地域にとって貴重な鉄道でしたが、復旧は果たせず、惜しまれつつも廃線へ。
その旧高千穂鉄道を公園化し、アトラクションとして運営しているのが【高千穂あまてらす鉄道】です。
「もう一度、必ず列車を通してみせる」。復興を願う有志たちが集まり、廃線跡をそのまま生かすアトラクションを考案。
動力なしの「木製トロッコ」を人力で押すところから始まり、軽トラック改造車両を2台連結して走らせる18人乗りの「スーパーカート」を経て、現在運行中のパワフルで30人乗りの「グランド・スーパーカート」へと進化しました。
グランド・スーパーカートは、牽引する動力車を2台備え、それぞれに2500㏄のディーゼルエンジンを搭載。空港で荷物を運ぶ“トーイング・トラクター”がベースになっています。
始発の「高千穂駅」から日本一の高さを誇る「高千穂鉄橋」まで、往復およそ5.1km、約30分の旅。四季折々の絶景が堪能できます。
客車の床の一部が強化ガラスになっていて、鉄橋の最高地点(105m)で直下の景色を楽しめるスリリングさも人気の秘密です。
また【高千穂あまてらす鉄道】では、高千穂鉄道時代に実際に走っていた車両で運転体験ができるのも魅力。地元の人や観光客、鉄道ファンから評判が広まり、現在は高千穂町を代表する有名な観光スポットとなっています。
高千穂あまてらす鉄道 基本DATA
■所在地:宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井1425-1
■TEL:0982-72-3216
■グランド・スーパーカート運行時刻:9:40~15:40 1日10便(臨時便をのぞく)
※時刻表・臨時便の運航状況は公式HPでご確認ください。
※悪天候の場合は運休となる場合があります。公式HPのトップページにて、当日の運行状況をご確認のうえお出かけください。
■グランド・スーパーカート受付時間:9:25~15:25
※事前予約は受け付けていません。
■休園日:第3木曜、悪天候時
■料⾦:
[入場料]
100円(環境整備費として。下記アトラクション利用の場合は、料金に含まれます)
[グランド・スーパーカート]
高校生以上 1,800円
小中学生 1,100円
未就学児 600円
[高千穂鉄道TR-200 運転体験]
定期開催時 12,000円/人
臨時開催時 18,000円/人
※参加条件:普通自動車免許か自動二輪(原付を含む)の免許をお持ちの方で20歳以上の方。
■アクセス:
宮崎交通バス「高千穂バスセンター」のバス停から徒歩約10分
■駐⾞場:15台分あり(無料)
■トイレ:あり
■⾷事:なし
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※変更がある場合がありますので、詳しくはHP等でご確認ください。
【公式HP】高千穂あまてらす鉄道
電車好きの息子と【高千穂あまてらす鉄道】に乗ってみた
夏休み中に、息子と2人で宮崎に帰省。
その際に電車好きの息子が喜びそうなスポットとして、私の姉があらかじめ調べて連れて行ってくれたのが【高千穂あまてらす鉄道】です。
九州南部に近づく台風の影響を受けて、目まぐるしく変わる空模様の朝。ホームページで最新情報を確認したところ、グランド・スーパーカートは運行予定とのこと。
現地に到着したときの天候によっては運休にもなり得る状況でしたが、車で向かってみることにしました。
私が宮崎に住んでいた当時は、宮崎市から延岡市までしか高速道路が通っていなくて、その先にある高千穂町までの所要時間はなんと4時間近く。でも数年前に高速道路が開通したおかげで、2時間ちょっとで到着しました。便利になったものですね~。
現地に到着し、駐車場から公園内に向かう階段を下りていると……
さっそくグランド・スーパーカートを発見! 乗客がたくさん並んでいるので、どうやら運行しているようです。
階段を降り切ったところにあるのが、こちらの入り口。
高千穂駅の駅舎も、そのまま入口として利用しているというわけですね。
駅舎に入って、グランド・スーパーカートの乗車券を購入。発車時刻まで40分以上もあるので、園内を見て回ることにしました。
すると、ちょうどグランド・スーパーカートが出発するところでした!
ピンクの色の車両は、まるでおもちゃの世界から飛び出してきたような可愛らしさ! 屋根も窓もない完全なオープンカーだから、風をダイレクトに感じられて気持ちよさそう。
あ、ということは……雨もダイレクトに感じるということ? 乗車中の急な大雨に不安が募ります。
駅員さんに確認したところ、乗車中は傘はさせないとのことなので、窓口で3人分のレインコートを購入することにしました。
ちなみに窓口で購入したレインコートは、開封しなければ返品可能です。せっかく買っても、雨が降らずに出番がなかったらもったいないから、この配慮はとてもありがたいですよね。
ホームには、高千穂鉄道時代に走っていた車両「TR-202」が停車していました
こちらの車両の運転体験も気になったのですが、運転できるのは自動車免許を持つ大人。ということは、私が運転!?
ちょっと不安なのと料金も安くはないので、次回パパもいっしょに帰省したときに来てチャレンジしようということで、今回は見送りました。
ホームの先にある車庫に向かうと、息子の背丈ほどの深さの縦長の穴がありました。
両サイドにレールのようなものがあるので、車両の検査に使われていたのでしょうね。階段を下りて入ることもでき、秘密基地のようなワクワク感があって楽しそうでした。
みなさんは、子どものころに「線路をたどって歩いてみたい」「線路の上で遊んでみたい」と思ったことはないでしょうか。廃線跡を整備・管理して活用しているこの公園なら、そんな願いが叶います。
線路の上をグングン進んだかと思ったら、猛ダッシュで戻ってくる息子。電車になり切ったつもりでしょうか!? 昔実際に使われていた線路だからこそ、リアル感たっぷりに遊べます。
そうこうしているうちに、先ほど出発したグランド・スーパーカートがホームに戻ってきました。
いよいよ次は、私たちの乗る番です!
グランド・スーパーカートで楽しむ絶景旅へ、いざ出発!
「先頭に乗りたい!」という息子の願いを叶えるべく、前の便が帰って来てすぐにホームに並んで順番を待ちました。
その甲斐あって、1両目の一番前の座席を確保! 息子もとても嬉しそうで、天気もギリギリもってくれそうな感じです。
さて乗り込んだ直後に、プチ高所恐怖症の私は不安がよぎります。高さ105mという鉄橋を渡るだけも怖いのに、さらに直下も見渡せるガラスの床だなんて超怖いに決まっている! 耐えられるかしら…!?
自問自答を繰り返しながら床に目を向けると……
なんとガラス張りになっているのは、客車の中央部分だけ。私たちの座った先頭部分からは離れていて、ガラスの向こうはまったく見えません! これで一安心~。
そして、ついに出発のとき。プォーンという警笛が鳴り、ゆっくりとカートが動き出しました。
運転士さんがガイドを務め、風景の見どころや高千穂の歴史などを教えてくれます。
少し進むと高千穂の街並みが見えてきました。のどかな街並みに癒されます~
屋根も窓も柵もないカートは、小学校低学年の息子と乗るにはちょっぴりハラハラしますが、視界を遮るものがないので眺めが最高! 風をきって走るから気持ちいい!
トンネル内に入った瞬間、乗客たちから歓声が上がります。
その理由は、真っ暗なトンネル内の天井に映し出されるイルミネーション。満点の星空を見上げているような感覚です。
息子も「何これ! もっとショボいかと思っていたのにすごい!」と大絶賛。実際に使われていたトンネルだけあって214mもあり、長く楽しめるのもいいですね。
お次は、道中に見えるこちらの鳥居にご注目。
芸能の神様が祀られている神社で、芸能人がお忍びで訪れているパワースポットなのだとか。宮崎県出身ながら、高千穂を訪れることがほとんどなかった私は、初めて知ることがいっぱいです。
苔むした石壁は、ジブリ映画『となりのトトロ』を彷彿とさせるよう。
頭上には、木立のトンネル。しっとりと佇むグリーンの絶景に癒されます。
そして、2つ目のトンネルに突入!
再び、美しいイルミネーションに心奪われるひととき。先ほどの2倍以上の489mのトンネルで、見応えバツグンです。
あれ、この光景どこかで見たような……と思ったら、ドラえもんとのび太がタイムマシーンで移動しているシーンにそっくり!?(笑)
カート旅のハイライト「高千穂鉄橋」に到着! 想像以上の絶景に感動
トンネルを抜けると見えてくるのが、かつて「東洋一の高さ」と謳われた高千穂鉄橋。鉄橋を渡る前に、こちらのゲート前で減速して風速計を確認します。
というのも、風が強すぎるとカートは鉄橋を渡れないから。渡れない場合は、鉄橋手前で折り返し運転になるのだとか。
風よ吹かないでーーーと祈るばかり。果たして渡れるのか、引き返すのか!? ハラハラ、ドキドキ……。そして、ついに渡れることが確認されました!
いよいよ鉄橋の上を走り始めます。目の前に迫りくる山々に、雲の切れ間から時折のぞく青空。
360度遮るものがない絶景は感動もので、自然と一体になったような新鮮な気分になります。
鉄橋の中間地点に来ると、カートはガタンと音を立てて停車。
カート乗車中に唯一立ち上がることが許され、外の景色を堪能することができる時間です。さっそく立ち上がって、鉄橋下を見下ろす息子。「わ~、いい眺め」と満面の笑みです。
私も恐る恐る立ち上がってのぞいてみました。
こ、怖い……。ちょっぴりスリリングですが、ダイナミックな峡谷美はまさに絶景です!
景色を満喫していると、運転士さんがシャボン玉を飛ばしてくれました。
高さ105mの空に舞うシャボン玉は、なんとも幻想的……!
息子もうっとりしながら見とれています。まるでファンタジー映画のワンシーンに入り込んだような気分。
ただでさえ美しい景色が、シャボン玉マジックでさらにキラキラと輝きます。素敵すぎる~。
そんな夢のような時間を終えると、カートは鉄橋を渡り切ったところにある折り返し地点へ。
そこで先頭車両が入れ替え(後方の車両が先頭)になり、出発地点の「高千穂駅」まで折り返し運転を始めます。
出発前は心配された天気でしたが、見上げると抜けるような青空と大きな入道雲が広がっていました。
高千穂に息づく神々が味方してくれたのでしょうか!? 来た道を折り返すのですが、空模様が変わるとまた違った印象になって面白いです。
雨上がりには虹が見れることも多いそうですが、今回は残念ながら見れませんでした。
高千穂鉄道時代に使われていた「天岩戸(あまのいわと)駅」も、そのままの形で残されていました。
きっと地元の人に愛されていた駅なのでしょうね。
しばらく進むと終点の「高千穂駅」に到着。次々と現れる絶景の数々やワクワクする演出に、親子で感動しきりの30分でした。
カートを降りるや否や「あー、楽しかった! また乗りに来たい」と息子。私もまったく同じ想いでした。こんな素敵な旅を親子で経験させてくれた姉に、感謝の気持ちでいっぱいです。
まとめ
仕事や家事・育児に追われる毎日、ふと美しい絶景を見たくなりませんか。でも子どもと一緒に行くと、“途中で子どもが退屈しちゃう問題”がありますよね。
そんなときは、親子で終始ワクワクしながら絶景が楽しめる【高千穂あまてらす鉄道】のグランド・スーパーカートに乗りに行ってみてはいかが。
我が家が訪れたのは真夏でしたが、春は駅舎内に咲く3種類の桜、秋は紅葉のパノラマ、冬は九州では珍しい雪景色が楽しめ、四季折々の表情を見せてくれます。
毎日たくさんのお客さんをのせて、約30分の夢の時間を提供しているグランド・スーパーカート。鉄道復活への熱い想いから込められているからこそ、乗客の感動を深く誘うのでしょうね。
みなさんのお住まいからはちょっと遠いかもしれませんが、わざわざ乗りに行く価値あり! ここでしか味わえない感動をぜひ体験してみてください。
(文・撮影:あゆーや/アソンデミエータ)