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2024年04月08日 11:07 更新

不登校によって離職した親が5人に1人、学校との意思疎通もうまくいかず苦悩する状況が明らかに

現在、不登校の小中学生は全国で約30万人いると言われ、10年連続で増加傾向にもなっています。不登校の子どもやその親の孤立をどう防ぐかが社会的課題であるなか、当事者の厳しい現実が見えてきました。特定非営利活動法人キーデザインが実施した実態調査の結果をご紹介します。

不登校に悩む保護者へのアンケート調査

子どもの不登校に悩む親子の支援を行っているNPO法人のキーデザインは、2020年から、保護者向けのLINE相談窓口“お母さんのほけんしつ”を運営。今回はその利用者3,500名を対象に「子どもの不登校が親の仕事や家計にどう影響を与えるのか」をテーマにアンケートを実施しました。その結果、375名の保護者から回答を得ています。

子供の不登校が仕事に影響した人は約7割にのぼる

「子どもが不登校や行き渋りをしてからの保護者自身の仕事への影響」を聞いた設問では、「特に変化はない」と回答した人が約3割(29.6%)となり、それ以外の約7割は仕事への影響があったことがわかりました。

最も多いのは「早退・遅刻・欠勤が増えた」で31.5%、「退職した」という人も14.8%と少なくありません。そのほか、「雇用形態を変えた」(14.4%)、「休職した」(6.0%)、「休職・退職を検討している」(3.7%)などとなっています。家計に影響が及んでいるケースも多いことが想像されます。

特定非営利活動法人キーデザイン「『子どもの不登校が家庭にどう影響を与えるか』に関する実態調査」より

仕事をやめた親も5人に1人、その理由は?

「退職した」と「休職した」を合わせると約2割であり、5人に1人が仕事をやめていることがわかります。仕事をやめた理由を聞いた結果も見てみましょう。

・小学生きょうだい(姉弟)3人が不登校となり、さすがにそれぞれに付き添ったり対応するのが、働きながらは難しく、早退欠勤が増えた。職場に理由を伝える辛さなどもあり、辞めないとどうにもならなくなってしまった。 収入が減るのは苦しいが、辞めて子どもの側にいなくてはとも考えていたこともあり退職を選びました。

・行き渋りが始まってから、遅刻や欠勤が増えました。ある程度融通の効く仕事だったこと、また上司の理解もあったため、1年ほどはその状態で仕事を続けました。完全に不登校になってからは、さらに遅刻、欠勤が増えました。思うように仕事を進められず、職場に申し訳ない気持ちと、小学生の子どもを家に1人置いていく罪悪感を持ちながら過ごしていました。経済的なこと、職場環境や条件が良かったことを考えると辞めたくはありませんでしたが、これ以上子どもを1人にしてまで仕事を続けることはできないと思い、子どもと過ごすことを優先して、退職しました。

退職を決断するまでに、仕事をしていると子どもの側にいてやれないが、仕事をやめれば収入が減ってしまう、というジレンマに悩んだ様子がうかがえます。

3人に1人は、月に約8万円以上の減収

子どもが不登校になってからの「家計への影響」を聞いた設問では、「収入が減った」と回答した人は37.8%、「収入がゼロ・ほぼゼロになった」と回答した人も1.9%いました。これを合わせると、約4割が家計にマイナスの影響を受けたことになります。

さらに、「収入が減った」または「収入がゼロ・ほぼゼロになった」と回答した人に、1ヶ月でどのくらい収入が減ったのか、具体的な金額を聞いたところ、最も多かったのが「30,001~80,000円」で37.8%でした。次いで「1~30,000円」が26.4%、「80,001~150,000円」が18.9%と続きます。

80,000円以下の減収という家庭が多いですが、80,001円以上の減収があった家庭が35.8%と、決して少なくありません。家計への影響が大きいことが想像できる結果です。

特定非営利活動法人キーデザイン「『子どもの不登校が家庭にどう影響を与えるか』に関する実態調査」より

夫婦間での相談、満足できていない人が多数

ここで、夫婦間の連携はうまくいっているのかどうかも見てみましょう。

子どもの不登校について「夫婦間で満足に相談できているか」を聞いた結果、「満足に相談できている」と回答した人は22.6%。最も多かったのは「話はするが、満足のいく相談はできていない」であり、45.5%に上りました。

また、「意見の食い違いが大きいため満足いく相談ができていない」(10.9%)、「ほとんど・まったく話ができていない」(8.5%)も1割前後見られます。夫婦間でしっかりと連携できているという家庭はそれほど多くないようです。

特定非営利活動法人キーデザイン「『子どもの不登校が家庭にどう影響を与えるか』に関する実態調査」より

学校・教育委員会の対応、「大変不満足」が最多

では、学校などの対応についての意見はどうでしょうか。

子どもの不登校・行き渋りに対する学校や教育委員会の対応を、「大変満足:5」から「大変不満足:1」まで5段階評価で尋ねた結果がこちらです。「大変満足」を挙げた人は14票だったのに対し、「大変不満足」は113票と、大きな差がでました(平均2.34)。このことから学校や教育委員会への対応に対して、不満を持っている保護者が多いことがうかがえます。

特定非営利活動法人キーデザイン「『子どもの不登校が家庭にどう影響を与えるか』に関する実態調査」より

低評価の具体的な理由を聞いてみると、

・担任の怒鳴り声が怖くなり行けなくなったが、当の担任から連絡がほとんどなかった。

・小学校で理解が得られず、転校しました。学校の教頭先生から「学校は来るべき場所、ストレスのかかる場所、我慢すべき場所」「不登校は親が子どもを甘やかした結果」。スクールソーシャルワーカーさんから「精神科を受診してください」と言われました。 不登校が理解されていない学校でした。 こちらから働きかけても全くわかってもらえなかったし、変人扱いみたいなことをされて苦しかったです。

・仕事から疲れて帰って、家事で忙しい時間に自宅に来られるのは嫌だった。クラスの子が手書きで書いたその日の学習予定やメッセージが書かれたプリントを毎日もらうのはプレッシャーだった。オンラインがあると良かった。

・先生方やカウンセラーの方々はとてもお話を良く聞いて下さり、気にかけていただいて、それは良かったのですが、どうしても目標が復学であるように感じ、子ども達にはプレッシャーだったようです。学校に行きたいのか、行きたくないのか、もう少し汲み取って、行きたく無い子に対してどうすれば幸せに過ごせるか、アドバイスいただけたら良かったなと思います。

などの声が聞かれました。学校と保護者・子ども間のコミュニケーションがうまくいかず、保護者や子どもがプレッシャーを感じる結果になってしまった状況がうかがえます。

一方、高評価の理由では「学校へ登校することだけを目標とせずに、当人のスモールステップを応援してもらえた」や「学校以外に相談できる教育支援センターを紹介してくれた」などがありました。悩む保護者の気持ちを汲み、寄り添ってくれたことが高評価につながったようです。

まとめ

子どもが元気に楽しく学校に通えれば何よりですが、さまざまな理由から学校に行きたくなくなってしまうこともあります。子どもが不登校になった場合には、やはりそれまでどおり仕事を続けることは困難であることが、今回の調査からわかりました。また、夫婦間の連携や家庭と学校との連携不足も否めません。復学を前提とするような学校の態度にプレッシャーを感じたという声もありました。サポートする周囲には、それぞれの事情を理解することが求められているでしょう。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

■「子どもの不登校が家庭にどう影響を与えるか」に関する実態調査/特定非営利活動法人キーデザイン
調査対象:子どもの不登校に悩む保護者向け無料LINE相談窓口の利用者
調査時期:2024年2月16日~20日
有効回答数:375

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