
支援級で学ぶ小学2年生が褒めてくれた先生の腕を「ガブッ!」噛んでしまった理由とは?|マンガでわかる 発達障害の子どもたち#4
「大人が褒めたい」と感じているところと、「子どもが褒めてほしい」と思っているところが同じではないことがあるようです。すれ違いが生じると、子どもはどう反応していいかわからなくなり混乱してしまうことも……
精神科医として30年以上、発達障害の診療と研究に携わる本田秀夫先生による著書『マンガでわかる 発達障害の子どもたち』(SBクリエイティブ、マンガ:フクチマミ)では、自閉スペクトラムの不可解な行動についてママ・パパのお悩み別に具体的なサポート例をマンガと共にわかりやすく解説されています。
第四回目となる今回は、褒められると腕を噛んでしまうお子さんのケースについてお届けします。
褒められたのに、先生の腕を噛んでしまった


褒められてうれしいときと、 恥ずかしいときがあります
マンガでは上に学校の先生の気持ち、下に「あつしくん側の視点」として子どもの気持ちが描かれています。
子どもが漢字の学習をしているとき、先生はその子のいいところ・できることに目を向けて、褒めようとしていました。「これは褒めポイント」と思ったところで、すかさず「がんばっているね」「えらいなあ」「キレイだね」と声をかけたのですが、なぜか子どもに噛みつかれてしまいました。

このとき子どもがどう感じていたのかを描いたのが、「あつしくん側の視点」というマンガです。この子は漢字を書くのが苦手で、自分ではうまく書けているとは思っていませんでした。自分にも得意なこともあるのに、先生は漢字を書くときしか褒めてくれない。別にがんばっているわけでもなく、いやいや書いているのに、大げさに褒めてくる。子どもとしては「恥ずかしい」「どんな反応したらいいの?」と思っていたのです。

大人の褒めたい、子どもの褒められたいのすれ違い
マンガのように、大人の気持ちと子どもの気持ちがすれ違ってしまうことはしばしばあります。このような経験をした子どもに話を聞いてみると、
「自分はほかにもいろいろなことをがんばっているのに、それは褒めてもらえない」
「褒められるのは、大人の言う通りにしたときだけ」
「うまくできていないのに褒められて、嫌だった」
などと語り出すことがあります。子どもが褒めてほしいと思っているところと、大人が褒めたいと感じるところが、一致していないことがあるのですね。
これは自閉スペクトラムの特性がある子に限らず、ほかの子どもにも、私たち大人にも当てはまる話です。
例えば仕事をしていて、自分がいいと思っていないことを上司に褒められたときには、相手の欲目が見え隠れしますよね。うれしさよりも、「この人は自分にこういうことをしてほしいんだな」という期待を強く感じることがあります。そういうとき、心から喜べるかというと、微妙なものです。むしろ「この人は思い通りになったときにしか人を褒めない」と感じて、相手に反感を持ってしまうこともあります。

子どもが褒められたがっているのかをよく見る
一方で、自分で「今回は本当によくできた」と思っているときに褒められると、「この人は自分の努力をちゃんと見てくれているんだな」と感じます。そういう場面では、大げさに褒められても恥ずかしい思いはしないかもしれません。また、「よかったね」と軽い一言をもらえるだけでもうれしいものです。
子どもを褒めるときにも、そのくらいの感覚で考えるのがいいのではないでしょうか。その子自身が得意だと思っていること、よくできていると感じていることに目を向けて、その点をピンポイントで褒める。その子がうれしそうにしているなら、思い切り褒めてもいいかもしれません。恥ずかしさがあるようなら、「上手だね」と一言伝えるくらいにしてもいいと思います。褒めるときにも「子どもをよく見ること」が重要です。
著 本田秀夫/イラスト フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち』(SBクリエイティブ)より抜粋
