親の気象病は子どもに遺伝する? 子どもの頭痛を改善する方法<久手堅司先生インタビュー#3>
天気の変化に体調が左右されるのは、大人だけではありません。子どもの気象病も増えている傾向にあるといいます。
お話をしてくださった方
久手堅 司 先生
(せたがや内科・神経内科クリニック院長)
『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社)の著者で、「自律神経失調症外来」「気象病・天気病外来」で5,000名を超える診察実績がある久手堅(くでけん)司先生に子どもの気象病についてうかがいました。
親が気象病……子どもに遺伝する?
――気象病は遺伝する傾向があると聞いたのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
久手堅司先生(以下、久手堅) お子さんが気象病の場合、多くの場合で両親のどちらかが、気象病か頭痛持ちです。実際、片頭痛は海外では遺伝するといわれています。まだ同じように言える段階ではありませんが、親御さんが気象病になっている場合、子どももなる可能性は高いです。7~8割方そうなんじゃないかな、という印象です。
――そうなんですね。何歳くらいから気をつければいいのでしょうか。
久手堅 気象病は小学生くらいから、小さい子では6歳の子もたまに来院されます。頭が痛くて、小児科では片頭痛といわれているけれど、雨が降ったら学校を休んでしまう。それで気象病ではないかと、来院されることがあります。片頭痛家系の方は6~7歳ごろから頭痛があったりしますね。
――意外と早い段階で症状が出るんですね。
久手堅 あとは、中学受験対策が始まる4年生から症状が出る子も多いです。4年生の冬頃から受験に集中するために運動をやめるので、それで首肩がこって頭痛がおきて……ということがあります。そこで出なければ、小学校高学年の身長が大きく伸びる時期に入った頃も不調が出やすい時期ですね。
ただ、中高生までなければ大丈夫かというと、そうではなくて。中高生でも増えています。その理由としてコロナ禍でわたし自身が感じたのは、やはりスマートフォンやタブレットを使うことが多くなったことです。運動量も減ったので、若い子でも気象による不調が出やすくなったというのが正直なところです。
――デジタル機器は中高生も制限した方が良さそうですね。
久手堅 そうですね。若い方でも不調が出るきっかけになるので、制限はした方がいいです。
子どもの気象病、どう治療する?
――子どもの気象病は、どんな症状があるのでしょうか。
久手堅 基本的には大人と同じで、頭痛が最も多いです。あとは朝起きられないとか、低血圧もあることが多いですね。
――子どもの気象病の治療は大人と同じなのでしょうか。
久手堅 そうですね、薬も使える範囲ではありますが、ほぼ同じように使用します。気象病では、五苓散(ごれいさん)という漢方薬が第一選択になり、これがお子さんでも結構効くことが多いです。あとは安全性が高いといわれるアセトアミノフェンの鎮痛剤(カロナールなど)を使ったりしますね。
お子さんの場合、気象病の原因として運動をしないとか、スマホやタブレットの使用、勉強が大きく関係しています。それでも受験の時期にその原因をなくすことは難しいので。その子の状況に合わせて「今は薬を増やして、受験が終わったら減らそうね」という対処をすることもあります。
ひとつ注意していただきたいのは、頭痛が続くようであれば、やはり脳の専門外来を受診することです。お子さんに隠れている病気があったら早く見つけてあげた方がいいので。きちんと検査をしてほかに原因がなければ、気象病の可能性を考えて薬やセルフケアで対処していくことになります。セルフケアも基本的には大人と同じ内容ですが、子どもの場合は鉄棒にぶら下がるだけでも良かったりします。
――鉄棒にぶら下がるだけですか?
久手堅 お子さんは関節が柔らかいから、ぶら下がるだけでもちゃんと動くので。30秒でも、それが難しければ10秒だけでも鉄棒にぶら下がると、背筋がすっきりします。
――なるほど。それなら気軽にできますね。
久手堅 そうですね。これを続けていけるといいですね。お子さんの方が回復は早いので。
――早めにメンテナンスの習慣をつけていけば、後々役立ちそうですね。貴重なお話をありがとうございました。
(解説:久手堅 司、取材・文:佐藤 華奈子)
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