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2021年01月10日 15:32 更新

【医師監修】インフルエンザの検査に適切な時期とその方法

インフルエンザの治療薬は、発症から48時間以内に服用を開始することで効果的に症状を抑えることができるため、速やかに検査・診断・治療開始することが大切です。今回はインフルエンザの診断に欠かせないインフルエンザの検査について詳しく説明します。

インフルエンザ検査の適切な時期とは?

インフルエンザ検査の結果を医師に聞く男性
Lazy dummy

※画像はイメージです

インフルエンザにかかった場合、発症後48時間以内に治療薬(抗インフルエンザウイルス薬)の服用を開始することで、効果的に症状を抑えることができます。そのため遅くとも48時間以内にインフルエンザかどうかを判別する検査を受けることが重要です。

インフルエンザが疑われるときはいつ検査に行けばいい?

インフルエンザ治療薬の効果を考えると、発症してから48時間以内に検査をするのが望ましいとされていますが、48時間以内であればいつでも良いのでしょうか。

「インフルエンザは熱が出てから12時間以内だと、検査しても陽性にならないので、待った方が良い」という話を耳にしたことはないでしょうか。実際「検査は発症から12時間経ってから」という方針の医療機関もあります。

インフルエンザ発症後12時間以内の検査では陽性が出にくいと言われ始めたのは、2009年の新型インフルエンザが流行った時で、発症早期の検査では陰性と判定され、その後にインフルエンザと判定された患者さんが少なくなかったためです。しかし、その後、インフルエンザの検査(迅速診断キット)は年々改良が重ねられ、最近では、発症から6時間後~12時間後では90%以上の割合で陽性が判定できる検査キットが増えてきているとも言われています[※1](インフルエンザ検査の詳細については後述)。

インフルエンザに感染しているかどうかの診断は、迅速診断キットの検査結果のみで判断するわけではなく、発熱、鼻や喉の炎症、倦怠感(だるさ)などの全身症状、またこれらの症状がいつごろ現れたかなどの情報も合わせて総合的に判断されます。発症後の経過時間で受診のタイミングを自己判断せず、インフルエンザが疑われる症状が出たら早めに医療機関を受診する、もしくはかかりつけの病院に電話で連絡をして症状を説明したうえで指示をもらうようにしましょう。

特に、インフルエンザにかかると重症化したり重い合併症を起こすリスクの高い、幼児や妊婦さん、高齢者、呼吸器の持病などを持っている人は早めに受診することが大切です。

なお、発症後48時間以降での検査になってしまった場合、陽性の判定が出てインフルエンザ治療薬を早速服用したとしても、症状を効果的に抑えることはできなくなってしまうことにも注意が必要です。

48時間以内の検査、治療開始が重要とされる理由

インフルエンザは、急激な発熱、全身倦怠感(だるさ)、筋肉痛、関節痛などのつらい症状だけでなく、重症化して肺炎や急性脳症などの合併症を起こす危険があります。また、感染力が強く周囲の人にうつしやすいという特徴もあります。

このため、抗インフルエンザウイルス薬の服用で治療を迅速に行い、なるべく軽症で済ませ、さらに周囲への影響も少なくすることが大切です。

インフルエンザウイルスは発症して48時間までに増殖し、症状が悪化しますが、発症後48時間までに抗インフルエンザウイルス薬を服用することでウイルスの増殖が抑えられ、症状が重くなるのを防いだり、周りへの感染の影響も少なくすることができるのです。

発症後48時間以降では、抗インフルエンザウイルス薬を服用しても、増殖したウイルスの勢いを抑えることはできなくなってしまいます。

インフルエンザの具体的な検査方法について

インフルエンザの検査方法は様々ありますが、主に「インフルエンザウイルス抗原検出検査」が用いられています。

「迅速抗原検出キット」(迅速診断キット)による検査

インフルエンザウイルス抗原検出検査は、一般的に「迅速診断キット」と呼ばれ、時間や手間がかからず診断時の検査で即結果が出るため、ほとんどの医療機関で使用されています。迅速診断キットは、現在20以上の種類があり、検査キットによって、鼻腔(鼻咽頭)から綿棒で拭う、吸引する、または鼻かみ液、咽頭から拭うなどして集めた検体にインフルエンザ抗原があるかどうかを調べるものです。

インフルエンザ迅速診断キットの特徴

検査では一定量のウイルスが採取できないと正しい判定が出ないため、医師の指示にきちんと従いましょう。

検査時に採取できた鼻汁が少ない場合のほか、ワクチン接種者の場合には判定が出にくくなる傾向があります。また、インフルエンザの型によっても差があり、A型よりB型ではやや判定が出にくいという特徴があります。
このような条件の違いによって多少の差はありますが、迅速診断キットでは、インフルエンザ発症早期から高い割合で判定ができるようになってきているため、インフルエンザを疑う症状が出た場合には、早めに受診をして検査を受けましょう。

なお、検査キットによって結果が出るまでの時間は、数分~十数分と多少の違いがあります。

インフルエンザの治療開始時期と服薬の効果、注意点

インフルエンザの検査で陽性が判定された場合は、発症48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬の服用を開始し、正しく服用することで症状を抑える効果があります。

インフルエンザの治療開始時期と方法

抗インフルエンザウイルス薬の中でも主に処方されるものは、2018年に発売された新薬を合わせて5種類あり、内服薬、吸入薬、点滴薬などがあります。これらのインフルエンザ治療薬は、患者さんの状態や年齢などに合わせて選択されます。

また、インフルエンザ治療薬とは別の薬が処方される場合もあります。肺炎や気管支炎を合併したり、重症化させたりしないための抗菌薬(抗生物質)、熱を下げる解熱剤、その他、鼻水や咳がある場合に症状を抑えるための薬などで、これらはインフルエンザウイルスに直接作用はしませんが、必要に応じて処方されます。

インフルエンザの時、医師が解熱剤を必要と判断した場合はアセトアミノフェンが処方されます。解熱剤には多くの種類がありますが、誤った使い方をすると悪化の恐れや脳炎発症のリスクがあります。市販薬もしくは処方薬であっても以前に他の病気に対して処方された解熱鎮痛薬などは、絶対に服用しないようにしましょう。

そもそも、抗インフルエンザ薬を飲まなくても、多くの場合は安静にしていれば数日で症状は軽快に向かいます。1歳以下の子供は抗インフルエンザ薬ではなく、漢方薬で対応することもあるようです。

インフルエンザ治療薬の効果とは

インフルエンザ治療薬は、発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱などの症状が1~2日間短くなります。ただし、症状が出てから時間がたってから服用し始めても(発症後48時間以降)十分な効果が得られません[※2]。

インフルエンザ治療中の注意点

インフルエンザにかかった際に、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなどの異常行動がみられる場合があります。
過去にこうした異常行動が抗インフルエンザウイルス薬の服用後に起こったと報告があったため、これらの異常行動は薬の服用が原因という見解もありましたが、 これまでの調査結果などからは、抗インフルエンザ薬と異常行動との因果関係は明らかにはなっていません。

むしろ、インフルエンザにかかると、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無やその種類に関係なく、同じような異常行動を起こすことが報告されています。インフルエンザ罹患時には、薬の服用の有無に関わらず異常行動に対しての注意が必要です。

事故につながるような異常行動は発熱から2日以内に現れることが多いとされています[※2] 。異常行動による事故を防ぐために、発熱から数えて少なくとも2日間は大人が見守り、患者さんを一人にしないようにしてください。なお、こうした事故の割合は、就学以降~未成年の男子で多くなっています。

まとめ

以前は発症12時間以降48時間以内でないと判定されにくいとされていたインフルエンザの検査ですが、年々改良され、より迅速に判定できるようになってきています。インフルエンザを疑う症状が出たら、早めに受診して検査を受けましょう。
また、検査で陽性が出た場合は速やかにインフルエンザ治療薬の服用を開始することが自分の体を守り、周囲の人に感染を拡げないためにも大切です。

(島田直子/毎日新聞出版MMJ編集部)

参考文献
[※1] 菅谷憲夫 編著. インフルエンザ診療ガイド2018-19(日本医事新報社)p.178 表1
[※2]厚生労働省 インフルエンザQ&A

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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