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2024年07月12日 10:53 更新

「家族のため完璧なママでいなきゃ」と頑張りすぎてしまう女性たちに伝えたいこと/舟山久美子さんインタビュー

10代でモデルデビュー後「くみっきー」の愛称でタレントとしても活躍、現在は化粧品などを手掛ける実業家でもある舟山久美子さん。現在第二子妊娠中の舟山さんに、自身の変化のこと、家族とのかかわりなどについて聞きました。

■「普通の女子高生」が雑誌の表紙を飾り激変

ーー5月に10年ぶり4冊目となる著書『ちゃんと自分を好きになる。「わたしはわたし」のマインド術』(KADOKAWA)をリリースしました。3年前からこの本を作りたかったそうですが、どんな思いがあったのですか?

舟山久美子さん(以下、舟山) 私は10代の読者モデルのころからずっと応援してくださるファンの方とイベントでお会いしたり、SNSのフォロワーさんとコミュニケーションを取ったりしているんですが、その中で、かつての私と同じような悩みを持つ人が少なくないと感じていました。だから、私の心がどう変化したかを知ってもらうことで、悩んでいるだれかの人生に寄り添って、応援することができたら、と思ったんです。

 16歳でモデルデビューをして、それまで普通の女子高生だった私が、突然雑誌の表紙を飾るようになり、生活環境が一変しました。どんどん忙しくなるなかで、「自分はこうしたい」という思いよりも、「こうすれば周囲の人に喜ばれる」「“くみっきー”としてこうしていなくちゃ」と考えるようになってしまい、無意識のうちに自分を見失っていった気がします。

 取材で「今週で楽しかったことは?」と聞かれて答えられなかったことも。本当の自分がどこにいるのか、自分のやりたいことはなにかがわからなくなって、20代はすごく悩みました。だけど、病気をしたり、結婚をしたり、出産をしたり、といったいくつかの人生の転機のたびに自分自身と向き合ったことで、30代にかけて少しずつ変わることができたように思います。

ーー20代から30代にかけて、大きな転機を迎える女性は多いですよね。制作にかけた3年間で準備したことは?

舟山 まずは私自身の軸がぶれないことが必要だと思って、本づくりに取りかかるまでに心の断捨離を決行しました。自分が本当にやりたいものと、少しでも違和感があるものに向き合って、行動の取捨選択をするというか。本当は心地よくないのに習慣化してしまっている行動をやめてみたんです。

 たとえば、読者モデルをしていたころ、身につける服や小物を選ぶにも「人からどう見られるか」が前提になっていました。ほかにも、SNSには同じ服を着た写真をアップしないとか、そういう無意識のうちに作っていた習慣をひとつずつ見直して、整えてみたんです。

 そうやって、自分がどんなことを大事にしたいのか、心地いいと感じるのかを見極めました。

ーー物理的にも断捨離したんですか?

舟山 やりましたね。以前は衣装部屋としてひと部屋がいっぱいになるほどの服や小物を持っていたんですが、断捨離後はクローゼット1つで完結できるまでになりました。

 身につけるものを選ぶときには、自分が心地いいか、モチベーションが上がるか、着心地がいいか、一生使いたいと思えるか、といったことを基準にしてみたんです。もちろん仕事柄トレンド感は必要だけれど、本当に自分が気に入る服を着ることのほうが大事だなって、改めて実感しました。

■入院中、1人の時間に気が付いたこと

ーー10代で芸能のお仕事を始めて、20代までノンストップで走り続けていましたよね。先ほど病気の経験や妊娠出産は転機になったと伺いましたが、一番大きな価値観の変化をもたらしたできごとは何でしたか?

舟山 いちばん大きかったのは、27歳で体調を崩して仕事を休んだことだと思います。入院して久しぶりに休んで、家族や友人や仕事関係の人たちと会わずに1人過ごす期間に、それまで自分が、自分のことをまったく気にかけないで生活していたことに初めて気がついたんです。「人からどう見られるか」とか「家族や周囲のために仕事を頑張らなきゃ」とか……。だからフラストレーションがたまってしまって、自分がダメだと感じたり、だれかのせいにしてしまったり。

 そんな自分を変えたいと思い、“モデル”や“くみっきー”などの肩書を外した状態で、本当の心の奥にある気持ちを見つめてみたんです。自分はどんなことが好きか、幸せだと思うのか、どんなふうに生きたいのか、変わりたいのかを、ノートに書き出してみることを始めました。毎日ノートを見直して、変わりたいと思う気持ちを持ち続ける、そんなことを繰り返して、少しずつ自分が変わってきたと思います。

ーー今も続いているんですか?

舟山 はい。どうしても考え方のクセがあると思うから、自分がどうありたいのかを書き出して日々見つめ直さないと、無意識のうちに戻っちゃうんです。だから、今もノートに書いて毎朝見直しています。

 「どうありたいか」って難しいことじゃなくて、今の自分が思いつく、「これができたらいいな」ってことでいいんです。今週はこういう目標だったな、先週はここができていなかったから、今週はできるように意識してみよう、と。まず意識を向けることを大事にしています。

ーーたとえばどんなことを書くんですか?

舟山 本当にちょっとしたことです。洗い物はためないですぐ洗う、とか、乾燥機から出した衣類はその場でたたむ、とか。洗い物や洗濯物もたまってくると、それを見るだけでイライラしちゃいますよね。たたんであれば、クローゼットに戻そう、という気持ちになるから。自分がごきげんでいるためにどうしたらいいかを目標として書き出している感じです。小さなことですけど、「今週はできた! 私、えらい!」って、ごほうびにジェラートを買ったりして、自分の機嫌を取ることにつながるのかなと思います。

■「今日しないこと」を見極める

現在は第二子を妊娠中。家族3人で撮影したマタニティフォト(提供写真)
現在は第二子を妊娠中。家族3人で撮影したマタニティフォト(提供写真)

ーー子どもができて時間の使い方は変わりましたか?

舟山 変わりましたね。子育てしていると、仕事も家事もと、常にタスクオーバーな状態になりがちです。でも女性はホルモンバランスの変化もあって、コンディションがゆらぎやすい上に、完璧にタスクをこなさなきゃ、というプレッシャーを感じやすい。すると、家族への不満が噴出してしまうことがあります。だから私は家族と笑顔で接するために、「今日しないこと」を見極めるようにしています。

ーーしないこと、ですか?

舟山 「仕事がハードだったから今日はご飯を作りません」「めちゃくちゃ部屋が汚いけど今日は片付けません」と宣言して、「しないこと」を決めてしまうんです。心のどこかで「あれやらなきゃ〜」とひっかかっているのってモヤモヤしますよね。潔く「やらない」と決めて、完璧じゃない自分があってもいいよね、と受け入れると肩の力がすっと抜けていきます。

 そうすると、翌日スッキリした気持ちでリセットできて、意外と効率よく動けちゃうんですよね。それは子育てをしてみて、時間が限られていると実感したからこそわかったことです。

ーーたしかに「やらない!」と宣言すると、自分も楽になりそうですね。

舟山 子育てしていると、だれかに言われたわけじゃないのに、自分が母として完璧にしなきゃいけないんじゃないかって頑張りすぎることがありました。だけど、いっぱいいっぱいでいると、大切なものが見えなくなったり、家族のいいところが見えなくなってしまうなぁって。

 イライラがとまらないときや、調子がよくないとき、自分らしくいられてないかも、というときは、肩の力をゆるめて少し心の余白を作ることを大切にしています。

■家族のいいチームワークを作る工夫

ーー夫婦で子育ての分担について話し合うことはありますか?

舟山 夫とは、子育てでママとパパのどちらかに比重が偏るのは良くないね、2人で子育てしたいね、と話しています。

 2人で子育てをするためにはよく話し合うことを大切にしています。最近は夫と話し合うなかで、視点の違いに気づくことがありました。

 私は、今現在の家庭内をうまく円滑に回すにはどうすればいいかを重視していて、夫は家族の未来をよくするためにどうしたらいいかを重視していたんです。だから二人で、どんな家族になりたいか、ひとまずゴールを話し合って共有しました。そのうえで、現在の家事やお迎えはどんなふうに分担できるか、未来のための教育や経済的なゆとりのために何をどう分担するか、具体的なことをこまめに話し合っています。

ーーパートナーになにかやってほしいことがあるときにはどうやって伝えますか? 夫婦って伝え方次第で険悪になってしまうこともありますよね。

舟山 夫婦だから、もちろんムッとすることもあるし、感情的に伝えたくなっちゃうこともあります。とくに産後の睡眠不足のときは、「なんでやってくれないんだろう」とか「寝ないで夜中の授乳をしてるんだからもっと協力してよ」と思ってたんですけど、自分で思ってるだけじゃ、相手は気づかないんですよね。

 伝えるときには、できるだけネガティブな伝え方にならないように「家族のためにこうしたほうがいいよね」と目的も一緒に話すようにしています。あとは、ちょっとゲームっぽいというか、楽しい伝え方にしてみます。

ーー楽しい伝え方ですか?

舟山 あるインタビューで横澤夏子さんが話していたことを使わせてもらってるんです。子どもの寝かしつけのあと、1時間お風呂に入りたいときには「ちょっと箱根に行ってくるね。1時間は、パパお願いね」って言って、ゆっくりお風呂に入るっていう。2時間ほしいときは「今日は熱海まで行きたいので……!」って(笑)。そんなふうに言い方を変えるだけで、相手もスムーズに協力できますよね。いいチーム作りをするためにいろいろと工夫しています。

■子どものことは、まず「いいよ」と受け止めてあげたい

ーー結婚、出産、そして第二子妊娠とフェーズが移り変わる中で、夫婦関係はどう変化していますか?

舟山 最近では、夫は母性が増しているなあと思います。以前よりもずっと、私と同じ感度で息子の変化に気づくようになっています。だから、息子に関する心配や不安を話しやすくなりました。同時に私の体調もすごく気にかけてくれるようになって、レスキューを出す前に対処してくれたりするので、家族としてワンチームになってきたなと感じます。

ーー妊娠を伝えてから、お子さんの「イヤイヤ」が激しくなったり赤ちゃん返りしたり、ということは出てきていますか?

舟山 すごくあります。家の中でも「抱っこ、抱っこ!」ってせがんできたり、もう言葉を話せるのに、喃語のようなよくわからない赤ちゃん言葉で話してきたり。「赤ちゃんなの?」って聞いたら「そうだよ、赤ちゃんだよ」って堂々と赤ちゃん宣言していました(笑)。でもそれも受け止めてあげたいなと思っています。

 「ねえママ」「これやって」って甘えてきても、仕事や家事の最中だと心のなかでは(今はできないよ〜)と思っちゃうんですけど、それは口に出さず、まずは「いいよ」と受け止める訓練をしています。忙しいときには「いいよ、洗濯物がたたみおわったらね」「いいよ、ご飯作ったらすぐ行くね」とか。そうやって「いいよ」のワンクッションを入れると、不思議と自分もちょっと楽になるんです。

ママをひとり占めできるのは今だけ。長男をたくさん甘えさせてあげているという舟山さん。(提供写真)
ママをひとり占めできるのは今だけ。長男をたくさん甘えさせてあげているという舟山さん。(提供写真)

ーー「いいよ」と言ってもらえると、お子さんも安心して待てるんですね。では最後に、日々頑張るママたちにメッセージをお願いします。

舟山 フォロワーさんからもよくDMをいただきますが、本当にみなさん、頑張ってると思います! だからもう少し、肩の力を抜いてもいいと思います。

 私が1人目を出産したあと、先輩ママに言われて心が軽くなった言葉があります。「子どもを育てて生かしてるだけで花マルだから、それ以外を頑張ろうとしないでいいよ。今のあなたのままですばらしいことを絶対に忘れないでね」って。

 親になると自分の人生だけじゃなく、子どもの人生への責任を考えてついつい肩肘張っちゃうときがあっても仕方ないと思います。でも、まずは自分をいたわったり、自分の時間を大事にしてあげる、自分を褒めてあげる時間を少しでも持ってほしいです。

 毎日頑張らなくていいから、ママが楽しく、笑顔でいられれば、きっと家族がハッピーになると思います。

舟山久美子さん/モデル・タレント、実業家

1991年4月29日生まれ。16歳でモデルデビュー後、雑誌『Popteen』の専属モデルを6年間務め、連続表紙17回の表紙起用を記録。テレビ界でも一躍人気者に。現在は、モデルやタレント、プロデューサー業と幅広い分野で活動するほか、自身の所属事務所の取締役を務め、ライフスタイルエモーショナルブランド『Herz』を立ち上げ実業家としても活躍している。

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(撮影:松野葉子 取材・文:早川奈緒子)

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