昔は田舎を出たかったけれど、今は田舎育ちで良かったと思える。あばれる君のサバイバル子育て/インタビュー【1】
子どもたちにも大人気の芸人・あばれる君は7歳と2歳の男児を育てるパパ。そして今、パートナー・ゆかさんのお腹には第三子となる赤ちゃんがいます。上梓したばかりの初エッセイ『自分は、家族なしでは生きていけません。』とのタイトルどおり、家族とのかかわりで、子どもの成長とともに自身も学びを得ているといいます。
■妻との出会いから20年。円満の背景にある「ごはんの時間」
ーー奥様のゆかさんが第三子の出産を控えているとのことで、おめでとうございます!
あばれる君 ありがとうございます。この夏に出産予定です!
ーーじゃあ、いまはもうだいぶお腹が大きいんですね。
あばれる君 そうですね。でも妊婦さんなのに奥さんの動きは全然素早いんですよ。華麗に家事をこなしています。
ーーゆかさんとは高校時代から交際し、2013年に結婚。2016年に長男が誕生した際は、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)で立ち会い出産に密着する様子が放送されましたね。
あばれる君 地元・福島の病院での出産でしたが、その日、僕はロケで海に出ていたんです。陸に上がったときに「陣痛が始まった」と連絡が来て、福島に急行しました。タイミング的に分娩室には入れなかったんですが、陣痛に苦しむ奥さんの姿は、男性も見ておいたほうがいいと思います。
ーー命がけで産んでいますからね。出産の前後で、奥様に対する見方は変化しましたか。
あばれる君 もちろん! すごく辛いことを乗り越えて子どもを産んでくれて、ほんとに感謝しているし、「強いな」と尊敬します。
ーー出会って20年以上、互いに高校生のときから付き合い続けて結婚というのがスゴイなあと思うのですが、夫婦円満の秘訣はありますか?
あばれる君 えらそうなことは何も言えませんが、やっぱり「みんなでごはんを食べる」とか、そういうことじゃないでしょうか。あとは、一緒に子どもの行事に参加することで、必然的に同じ目標に向かえるようになっていきますよね。
たとえばうちは今、早朝から僕が子どもの野球の練習に参加して、それが終わって帰ったら奥さんがごはんを作って家で待ってくれいる、みたいなルーティンがあります。このルーティンができてから、家族の時間がより有益でいい時間になりました。
■第一子の妊娠中、妻を怒らせた一言
ーーご自身も料理が得意ですよね。お子さまが好きなメニューは?
あばれる君 かき玉汁とか? 長男が野菜嫌いなので、なんとか食べさせる工夫をしています。苦手な野菜も細かく刻んでかぼちゃスープに混ぜたり。しいたけを細かく刻んでひき肉と一緒に混ぜた鶏団子鍋とか、知らずに野菜を摂取していますよ。
ーー野菜も美味しく食べてほしいという親心が伝わります! ごはん作りは、お子さまが生まれてから自然とするようになったんですか?
あばれる君 そうですね、きっちり分担しているわけではなくて、夫婦それぞれ手の空いている方がやっています。
ーー「私ばっかりやってる!」「いや僕ばかり!」とならないのはステキですよね。
あばれる君 奥さんがそういうことを言わないからじゃないですかね。奥さんのほうがやっていますけど。
ーーゆかさんのどんなところがすごいと思いますか?
あばれる君 書類を提出するのが早いところとか。たとえば、番組から「この時代の写真ありますか?」と言われたとき、その時代の写真をピンポイントですぐ出してくるんですよ。記憶力がすごいんです。妊娠中に僕が言った言葉とかも、ずっと覚えているみたいです。
ーーどんな言葉ですか?
あばれる君 「ちょっと飲みに行ってくる」とか……(苦笑)。
ーー(笑)たしかに、妊婦にとっては忘れられないかもしれません。3人目がお腹の中にいる今は……?
あばれる君 3人目ともなると自分も成長しますし、2人子どもがいる時点で家族が中心の生活になっています。だから今は出歩くより、僕が家にいたほうが奥さんもうれしいのかなとごく自然に思えますし、そうすることで気持ち的にも充実しているんです。
ーー充実を実感するのは、どんなときですか?
あばれる君 やっぱり、ごはんの準備をしているときや、みんなでごはんを食べているときですね。夕方6時くらいから食べ始めて7時半くらいには終わって、それぞれテレビを見たり本を読んだり、子どもと一緒にポケモンのカードゲームをやって遊んだりしています。
■第一子の妊娠中、妻を怒らせた一言昔は田舎を出たかったけれど、今は田舎育ちで良かったと思える
ーーあばれる君といえばポケモンですよね。現在放送中の『ポケモンとどこいく!?』(テレビ東京系)の前々身番組『ポケモンゲット☆TV』(2013年~2015年放送)が、あばれる君とポケモンの出会いだったと思います。子どもと一緒にできる趣味があるのはとてもいいですね。
あばれる君 たしかにそうですね。僕の父親が子どもの趣味に興味を持たなかった分、僕は子どもが好きなゲームなどに積極的に参加していきたいなと思っています。
ーーお父様はとても厳格な方だとエッセイにも書かれていましたね。43年以上教師を続けたことへの尊敬の念も綴られていました。
あばれる君 厳しい親父だったんですけど、今はほんとうに丸くなって、優しくていいおじいちゃんです。父は海釣りとかに連れて行ってくれたりして、楽しい思い出もたくさんあるので、僕自身も子どもと積極的に遊ぼうと思えているのかもしれないですね。
最近では実家に帰ると餅つきやバーベキューをやってくれたり、火おこし体験をさせてくれたり、子どもたちに育てている野菜の収穫を体験させてくれたりします。
ーーとてもいい環境ですね!
あばれる君 昔は「早く田舎から東京に出たい」と思っていましたが、いまは「田舎生まれでよかった」と思います。
ーーご自身でもよく、お子さんをキャンプや山に連れて行っていますよね。
あばれる君 そうですね、息子も自然が好きだから、喜んでついて来てくれます。初めては長男が3~4歳くらいのとき、富士山の麓でキャンプをしました。
■第一子の妊娠中、妻を怒らせた一言サバイバル育児の極意は「トライアンドエラーの精神」
ーー厳しい自然の中だと、大雨だったり寒かったり虫がいたり、子どもにとって楽しくない状況もあると思いますが。
あばれる君 雨の中で子どもとふたりで過ごすことも、すごく神秘的な体験ですよ。雨音の中で、ふたりでジューッと肉を焼いて食べるとか。そういうのが好きなんですよ。
ーーステキ! 山では親子でどんな会話をしますか?
あばれる君 あまり会話しないかもしれない。食べるとか削るとかを、無言で楽しんでいます。
ーー黙々と自然に溶け込む親子……すばらしい光景なんですが……!「暇だからスマホ貸してよ」なんて言われないんですか。
あばれる君 ファミレスにいるときは言ってきます(笑)。でも、キャンプのときはまわりに石や木がありますから、そちらへの興味が断然スマホに勝ちますよね。
ーーサバイバルの視点から、育児で大事にしていることはありますか?
あばれる君 雨風にさらされることで精神力が鍛えられるとは思っています。エアコンの効いた暖かい場所や涼しい場所もいいけど、やっぱり外での刺激で、自分の細胞を強化してもらいたいですよね。刺激に慣れることで、多少のことでは動じなくなりますしね。怪我をして学んでいくことも大切です。「ここを触ったら危ないんだよ」と理解するので、トライアンドエラーです。
ーートライアンドエラーはとても大切なことだと思う一方で、親としてはつい傷つく前に「あぶない!」と止めたくなる気持ちも否めません。そういう葛藤は、いかがですか?
あばれる君 もちろん安全第一ですから、あからさまに危険な場所にはもちろん行きません。ただ、火を焚べるときに火の粉が飛んできて「アッツ!」となるとき、「この辺は火の粉が飛んでくるから危ないんだな」「顔を近づけたら危ないな」ということを自分で学んでいってほしいと思います。
ーーあばれる君自身、幼少期にそういった体験はありますか?
あばれる君 そうですね。福島は雪が積もるんですけど、ソリで雪の林道の坂を滑っていたら崖から落ちたことはありますね。
ーーえええーー!
あばれる君 落ちる瞬間、見える景色がスローモーションでした。無傷でよかったです。落ちて以降、「これは危険だ」とわかって、そういうことはやらなくなりましたね(笑)。
・あばれる君/お笑い芸人
1986年9月25日生まれ、福島県出身。ワタナベコメディスクール9期生として入学し、2009年にデビュー。2015年2月、『R-1ぐらんぷり2015』決勝に進出。2020年5月より自身のYouTubeチャンネルでポケットモンスターのゲーム実況を開始すると、特異な実況スタイルで人気に。大学在学中に中学社会科と高校世界史の教員免許を取得。2022年には世界遺産検定1級に合格。2013年に高校時代から交際していたゆかさんと結婚。2015年に長男が、2021年に次男が誕生した。まもなく、第三子が誕生予定。
(撮影:松野葉子 取材・文:有山千春)