こだわりすぎは失敗の元? 誰もが襲われる“マイホームブルー”って!?|小さな家、建てました#3
家づくりは、とことんこだわりたい! という方も多いはず。しかし、あれもこれもとこだわりすぎるのは考えもの。上手なこだわり方のコツとは……?
整理収納アドバイザーの資格を持つ竹村真奈さんががあえて選んだ小さな家と小さな暮らし。現実と理想をすり合わせながら暮らしやすい家ができるまでの過程をまとめた『小さな家、建てました』(翔泳社)より一部抜粋して、連載(全3回)でお届けします。
前回までの土地との出会い、施工会社選びに続き、第3回の本記事では、
✅ 著者が最もこだわった間取りや内装のポイント
✅ マイホーム作りにはつきもの!? マイホームブルー
についてをご紹介します!
部屋の主役を決める
ハウスメーカーの注文住宅には、商品ごとに「標準仕様」が定められていることが一般的。標準仕様というのはもとから、価格設定内で抑えてある設備や素材のこと。標準仕様でない仕様は「オプション仕様」と呼ばれ、追加費用がかかる場合もあれば、コストダウンできる場合も。
私は最終的な減額調整のときに、これもダメあれもダメと肩を落としました。ただ、自分の中での優先順位がはっきりしていたので家の面積の多くで使うクロスは標準でいい、お風呂は無駄なものを省いて標準よりコストダウン、造作棚は割高なので既製品を購入しよう、と。
フロアごとの主役を決めるとインテリアは楽しいです。1階は玄関と洗面台、2階はキッチン、3階は? という具合いに。玄関はモルタル中心で、そこから続いていくイメージの洗面台。ここは自分で図面作成したくらいこだわっていたので、一歩も譲れず! キッチンはステンレスのバイブレーション仕上げにモルタルの腰壁、水栓はタッチレスのグローエのk7シリーズ、食洗機はBOSCHを採用したい。しかし、数百万超え…!「標準仕様」のグラフテクトを採用すれば、腰壁もいらないし食洗機はパナソニックがいいかも、水栓はいつでも変えられるから安いものにしよう。これだけで数百万減額できました。減額調整で凹んでいる暇はないのです。
それからも取っ手の色やバックセットのサイズや種類など決めることは盛りだくさんです。このとき、部屋のベースカラー、メインカラー、アクセントカラーを決めておくとあれこれ悩まなくていいですよ。自分の中で譲れないものがありすぎると、減額調整で涙を流すことに。理想で凝り固まらず、好きなモノを増やす感覚を楽しんで。
暮らしやすい動線をイメージする
何案もいただいた間取り図の中から、私たちは(小さな家にしては)広く取った玄関案に釘付けでした。人が出入りするだけの玄関を広く取るなんて! 斬新〜! 玄関が広いだけで気持ちがいいし、玄関を開けた瞬間の開放感はその家の印象にも大きく影響してくると思いました。気をよくした私たちは、ハウスメーカーと間取り図のブラッシュアップ作業に入っていきました。
人気の回遊動線にしたかった私は動線についても細かく提案していきました。同時に収納についても希望を細かく伝えていきます。使用頻度の高いモノは取りやすく、よく使う場所の近くに収納できるように考えながら進めます。収納はたくさんつくるより、モノの量を減らすほうが効率的。収納が多ければ多いほど、モノは家に入ってくるし、整理も収納も大変になるからです。
旧家から持っていく家具は採寸済みでジャストフィットするサイズで設計してもらって、あとは造作棚をつくってもらいました。玄関を入ってまっすぐいくと右に引き戸があり、その先に洗面所があるのですぐに手洗いができます。洗面台の下には無印良品のラタンボックス3個置き、そのうちの2個を使ってフェイスタオルを10枚収納。10枚のフェイスタオルは半年ごとにまるっと買い替えます。バスタオルはもう何年も使っていないし、必要と感じたこともありません。残りの1個のラタンボックスには入浴剤とドライヤーを収納しています。
洗面台の上にはサンワカンパニーのホテルミラーボックス120㎝。ボックス左端の底面には工務店の方に穴を開けてもらいティッシュをシュッと取り出せるようにしました。コンセントも内蔵されているから、ドライヤーも使えるし、アップルウォッチや電動歯ブラシの充電にも便利。種類が豊富なアイカ工業で造作してもらった洗面台には15センチの穴を開けて、ふた付きの丸いダストカバーを設置。下に受け皿になるゴミ箱を置いて、上から捨てたものをしっかりキャッチ。家づくりにおいて、こだわったポイントが詰まりまくった洗面所は今もお気に入りの空間です。
クロスも洗面台もフロアマットもグレーで統一して、暗い印象にならないかなと心配しましたが我が家の象徴となるようなお気に入りの造作洗面所に仕上がって大満足。はじめは洗面台は白がいいと決め込んでいたけど、頭をゆるゆるにして自分の中の常識を覆してみると新しい世界が広がって楽しさ倍増です。洗面台の上にはできるだけモノは置かず、いつも清潔に保っています。ミラーの上に横長サイズのFIX窓を付けたので昼間でも明るいです。
一度は襲ってくるマイホームブルー
マイホームブルーって聞いたことあります? 私は知らなかったのですが私にも襲ってきたんです、マイホームブルーが。仕事もしてるし、育児も家事もしてる中で、ハウスメーカーの担当者さんと日々奮闘(?)しながら、インスタグラムを見ては最新のステキな家の情報収集をして、そしてまた現実とぶつかって……。
いつもキレイに片付いた広い部屋。ライトアップされたクリスマスツリー。天まで続きそうな吹き抜け。自然あふれる窓からの眺め。味わい深い中庭。日当たりのいい落ち着く和室。ヌックでティータイムを楽しむ親子。私が諦めたステンレスのバイブレーション仕上げのキッチンで料理する主婦。平家暮らし。屋内にまさかの滑り台、遊園地みたいに大きなプールを広げてはしゃぐ子どもたち。
そんな投稿を毎日見ていると、不意にもやもやっとし出す瞬間がやってくるんです。そこから、なんとなくギスギスした悪い目で投稿を見るようになり、私の家はこんなに小さいのに、こんなに家づくりを楽しんでる自分がものすご〜くちっぽけに思えてきたりするわけですよ。そのときは一度鏡で自分の顔を見て気持ちを引き締めて! 明るい未来が詰まった家はあなたの腕に掛かっているんですから、諦めないでください。でもね、私みたいに凹みまくっちゃっている人がインスタグラムにわちゃわちゃいることがわかって、また救われたのも事実。
後悔例、失敗例をたくさんアップしている方々は、神様です。ありがとうございます。人の後悔や失敗をたくさん読んで元気をもらおう! という性格の悪いような話だけど、そうやって前向きに発信してくれる人に勇気をもらうし、私もがんばろうって思わせてもらえるんです。嬉しい打開策も惜しみなく書いてくれていて「いいね」押しまくりです。もちろん同じ失敗をしないように事前に回避できるところが最大のありがたみ。
インスタグラマーさまさま……。それらのおかげで本当に参考になったことは、「建具はすべて天井高のハイドアにすべし(断然広く見える)」「天窓はやめておけ(雨音がうるさい、掃除しづらい)」「外の換気口の色は外壁と揃えて」「コンセントはあればあるだけいい」などなど、ためになることのオンパレードです。
そんなマイホームブルーな気持ちがあなたのもとにやってきたら、「#マイホーム後悔ポイント」「#マイホームトラブル」の投稿に励まされてください。1週間SNSから離れてみるのもいいです。気持ちが穏やかで気分のいいとき、冷静になったらまたその扉を開いてみてくださいね。
著:竹村 真奈『家事がラクになる 小さな家、建てました 土地選び、断捨離、間取り。施主だからわかる、家づくりのポイント』(翔泳社)より一部抜粋・再編集/マイナビ子育て編集部