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2024年09月09日 06:41 更新

「時間がない!」が口癖だったワーママが充実した時間の使い方をできるようになったワケ【川瀬はるさん×吉武麻子さん対談/前編】 

子育てと仕事を両立している漫画家の川瀬はるさん。小さい子を抱えながら働く毎日はとにかく目まぐるしく、毎日毎日「時間がない!」が口癖だったとか。

そんなギリギリの生活を送る中で出会ったのが、タイムコーディネーターの吉武麻子さんです。吉武さんもまた2人の子どもがいるワーママで、好きなインテリアや洋服のように、24時間を自分らしくコーディネートする“タイムコーディネート”の考え方を提唱し、活動しています。今回は書籍『やりたいことがどんどん叶う! じぶん時間割の作り方』(川瀬はる著、吉武麻子監修)を出版した2人が、改めて顔を合わせ、「時間」をテーマに対談をしてもらいました。

保育園に落ちて仕事に専念できない。慢性的な時間不足に……

――はじめに、お二人が初めて会った日のことを教えてください。

川瀬はるさん(以下、川瀬) 吉武さんとは編集者さんを通して紹介していただいて、2023年のはじめに初めてオンラインでお話しましたね。当時、3歳の子どもが1人。引っ越しをその少し前にしていたんですけど、待機児童がいっぱいで保育園に入れなくて……一時保育を利用していた時期でした。だからあまり仕事に専念できなかったんです。私たちの場合、ほかに子育てに協力をお願いできる人がいなくて、夫と2人だけ。育児と仕事の両立で大変な上に引っ越し直後で地域に馴染んでいないから、さらに孤独になり……と八方塞がりの状況でした。

吉武麻子さん(以下、吉武) あの頃は大変そうだったのを覚えています。

川瀬 当時は本当に気持ちの余裕がなかったですね。ちょうど仕事で漫画の連載の準備が始まっていた時期で、できれば仕事に打ち込みたかったんですけど、そういう事情から専念できずに自分の時間がないという慢性的な時間不足を感じていて。夜中にこそこそ仕事をしていてしんどかったけど、この悩みは解決できないと思っていました。そんなときに吉武さんと出会って、タイムコーディネートの話を聞きました。

保育園呼び出しも、タスクを分解すれば夫婦で分担できる!

吉武 確か、流れでお子さんの病院の付き添いの話をしましたよね。

川瀬 そうです。吉武さんが明るく私の話を聞いてくださって。そのときに「子どもを一時保育に預けて、お熱が出ましたと頻繁に電話が来る。その対応は私が全部やっている」という話をしたんです。そこに吉武さんが「やることを分解してみませんか?」と言ってくれたんです。「例えば、お迎えと病院は時間の融通が効くフリーランスのはるさんが行って、薬局に薬を取りに行くのは旦那さんに行ってもらうとか、やることを分解したら2人で分担できるんじゃないですか?」と言われて。

吉武 言いましたね!

川瀬 当時の自分は思考停止しちゃっていて、私さえ我慢すれば1日が無事に終わるから……。もうこれでいいんだと思い込んでたんですよ。それを吉武さんが明るく「こういう方法もありますよ」と言ってくれたのが私の中ですごく衝撃だったんです。

吉武 ご家庭によってもちろん状況が違うので、私が提案した方法をはるさんが実際にやるやらないはどちらでも良かったんです。ただ本人は大変な毎日の真っただ中で、子どもに早くお薬を飲ませなきゃだったり、自分が行ったほうが早いからだったり、そういう気持ちが先行して「自分がやる」という一択になると思うんですけれど……。 一連の流れを俯瞰して分解してみるといろんな方法があるので、その可能性を見るだけでも気持ちが違いますよね。今回は全部私がやるけれど、こういうときはここを頼める方法もあるんだな、みたいに。

打開策があると、それだけで安心しますし、ちょっとした気持ちの余裕が生まれます。そのちょっとした気持ちの余裕って、実際には時間を生み出さなくても、非常に重要だなというのは、はるさんのお話を聞いててすごく感じたの覚えています。

川瀬 私は吉武さんのお話を聞いて、いろいろな気持ちが湧いてきたんですよ。そんな方法があったのか! 今すぐやってみたい、ちょっとでもこの苦しい状況を変えたいっていう気持ちと、 変えるにも腰が重い気持ちと。とにかく今日1日を乗り切ることだけに一生懸命だから、ひとつ何かを変えてしまうと全部崩れちゃいそうで恐ろしくて。

川瀬 もともとめんどくさがり屋で、 慣れたパターンを続けたい性格なので、素直に切り替えられなかったんです。ただ、言われたことは自分の中に残るんですよ。「自分より先を行く先輩が言ってくれた一言」みたいな感じで。

吉武 ちょっとした気づきを得るだけでも、ご自身で考えていけるようになりますよね。

川瀬 本当にそうです。あと、私は腰が重かったのですが、吉武さんから聞いた話を夫に話してみたら、「それいいじゃん」ってなったんです。すぐにまったく同じことを実践するわけではないけど、 何においてもまるごと私が受け取るんじゃなくて、分解して「ここだけはお願いね」と夫に任せる部分を作る。その方法は夫もやってみよう!と。

――素晴らしいですね!

吉武 パチパチパチパチ(拍手)

「自分の心地よい時間を大切にする」ってどういうこと?

――タイムコーディネートは一般的な時間管理術と違って「自分の心地よい時間を大切にする」ことを大事にされていますね。

吉武 そうですね。タイムコーディネートの基本的な考えが、 ①心地よい時間を自分でまず探求すること②限られた時間の中で自分のやりたいことを実行していくことをセットにしています。

①については心地よさの基準というのは人によって異なるので、まずは「どういう時間の使い方が自分にとって心地いいのか?」という定義が大事になってくるんです。「のんびり外を眺めながらお茶も飲めるような、余裕のある時間の使い方が好き」という方もいれば、「とにかくやりたいことを詰め込めるだけ詰め込んで、チャレンジングなこともトライしたい」っていうのが心地よいっていう人もいますし。

①を理解した上で、②に関して言えば、タイムコーディネートに興味持ってくださる方は、仕事も子育ても自分時間も諦めたくないというふうに、がむしゃらに頑張っている方が多いんです。でも、常にオンの状態だとやっぱり心身ともに疲れてしまうので、24時間という限られた時間の中でどう振り分けていくのか、心地よい時間のバランスはどんな感じか常に考えてくださいねとお伝えしています。

川瀬 私は最初、「心地よさ」という言葉に戸惑いを感じました。というのも、長らく自分の意思を無視した生き方をしてきたから……。出産すると、 強制的に赤ちゃんの命を守らないといけない状態になるので、自分のことは後回しになります。またそれ以前、漫画家になる前は会社員をしていたんですけど、そのときもその場に合わせた対応をすることに心がけていたので、自分の感情や心地よさは一旦横に置いてきたんです。だから、「そんな私が心地よさを感じていいのかしら?」みたいな。もちろん、当然いいはずなんですけど。

吉武 もともと日本人は空気を読む文化がありますよね。空気を読んで、今はここで私が我慢をしたほうがいいみたいなシーンが普段からよくあるので、気持ちを抑えがちなんだと思います。もちろん、そうして抑えることや空気を読むこと自体は悪いことじゃないと思うんです。

だから、モヤっとしたとき「私自身は本当はどうしたかったのか?」、「どうしたら心地よかったのか?」と振り返ることで、自分なりの心地よさの基準が少しずつ明確になっていくはず。逆に嬉しかったときもそうですね。「今日自分は気持ちよく過ごせたな」というときに、「なぜそうだったのか?」と振り返る。ほかにも楽しい、悲しい、困ったなどなど。そのときの自分の本当の気持ちに気づく回数が増えれば増えるほど、心地よさの輪郭がはっきりしてくると思います。

自分が心地よさを感じることに最初は戸惑ったという川瀬さん。そんな川瀬さんが今、心地よいと感じている時間とは?
後編では、タイムコーディネートを始めた川瀬さんの変化と、世間にはびこる「時間の思い込み」をベースにお二人の考え・体験談を伺います!

プロフィール

川瀬はる
長野県出身。2021年『私をとり戻すまでのふしぎな3日間』(オーバーラップ)でデビュー。 2024年4月『おはよう、しっぽ』(文藝春秋)発売。早起きが好き。
X(旧Twitter):@mkawasem
Instagram:@kawase_haru

吉武麻子
TIME COORDINATE 株式会社代表。 大学卒業、旅行会社勤務・韓国留学などを経て独立。 キャリアとライフイベントの狭間で葛藤した経験から、疲弊せずに毎日を楽しみながら仕事のパフォーマンスもあげていくオリジナルのタイムコーディネート術を考案し、のべ3000名以上に指南。手帳の製作販売も行う。 著書『目標や夢が達成できる1年・1カ月・1週間・1日の時間術』(かんき出版)。神奈川県出身、2児の母。
X(旧Twitter):@time_coordinate
Instagram:@time.coordinate

書籍『やりたいことがどんどん叶う! じぶん時間割の作り方』

やりたいことがどんどん叶う!じぶん時間割の作り方
(2024/09/09時点)

今回お話を伺った漫画家・川瀬はるさんの著書。対談相手のタイムコーディネーター・吉武麻子さんが指南役で登場し、漫画の監修をしています。「時間がない!」けど、「自分の時間も持ちたい!」。そんなはるさんが、具体的に何をどうしたのか、オール漫画で簡単にわかりやすく紹介。「あれもこれもやりたいけど、どれも中途半端」「時間術の本を読んだけど、何も解決しなかった」というワーママ・ワーパパの悩みを打破してくれる一冊です。

(取材・文:江原めぐみ)

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