諸外国と比べて日本の若者は、自分の将来をポジティブにイメージできない?【こども家庭庁が調査】
温暖化による異常気象や終わらない戦争、円高などによる物価高……。世界規模での不安要素が多い現代を生きる子どもや若者たちは、将来をどのように考えているのでしょうか? 今回は、こども家庭庁が実施した「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」をもとに、現在の日本の若者たちの将来像について世界と比較して見て行きます。
日本を含む5カ国、13歳~29歳の男女に調査
こども家庭庁では、日本と諸外国の子ども・若者の意識を比較することで、日本の子ども・若者の意識の特徴などを的確に把握することを目的に「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」を実施しました。対象国は、日本のほか、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデンの計5カ国、対象者は13歳~29歳までの男女とし、各国1,000サンプルを集めました。今回はその中から主に、自分の将来像についての調査結果を取り上げます。
40歳ごろの自分のイメージ、「親を大切にしている」が最多
まず、自分が40歳くらいになったときのイメージが、それぞれどの程度あてはまるかを尋ねた設問における、日本の子ども・若者の回答がこちらです。選択肢は「そう思う」「どちらかというとそう思う」「どちらかというとそう思わない」「そう思わない」の4つとなっています。
設問に提示されたいくつかの「自分についてのイメージ」の中で、「そう思う」「どちらかというとそう思う」と回答した合計が最も多かったのは、「親(保護者)を大切にしている」で73.2%でした。次いで多かったのは「幸せになっている」で68.2%、さらにほぼ同率で「健康である」が68.0%が続いています。
一方、少ないものとしては、「外国に住んでいる」12.9%、「有名になっている」15.7%などが見られます。
また、前回調査(平成30年度)と比較して減少していたのは、「こどもを育てている」(12.6ポイント減)、「結婚している」(8.3ポイント減)でした。
各国と比べると、日本の若者は将来、自分に満足しているイメージが弱い?
ここからは前問の各項目の結果を、日本と各国との比較の中から、とくに違いが見られたものに注目していきます。まずは、自分自身や仕事に対する満足感にかかわる項目を見てみましょう。
■自分自身に満足している
まず、「自分自身に満足している」かどうか、ですが、日本の子ども・若者の回答は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が55.0%でした。一方、他の4カ国は8割前後となっており、20ポイント以上の開きが見られます。さらに言えば、「そう思う」だけを見ると、日本の14.6%という数字の低さが目立ちます。将来自分に満足しているイメージが持てない人が、日本の若い世代には多い傾向にあるのでしょうか。
■自分の望む仕事ができている
「自分の望む仕事ができている」という項目に対しては、日本の子ども・若者が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合は57.5%。やはり他国とは20ポイント以上の開きがあります。また、「そう思う」に限ると日本は16.9%で、「自分自身に満足している」と同様に2割未満と低い数字になっています。将来の就職についてポジティブなイメージを持てない人が、4割以上いるというのは、やはり多いという印象を受けます。
日本の若者は他国と比べ「有名になる」ことへの関心が低め?
続いて、他人や社会と関係する項目を見て行きます。やはり日本の傾向としては、他の国よりも数字が低いことが挙げられます。
■仲間と仲良く暮らしている
「仲間と仲良く暮らしている」という項目ですが、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の回答を比較すると、他の4カ国は76%超である一方で、日本は61.1%と、10ポイント以上の差が見られました。
大人になって歳を重ねたときの友人づきあいがイメージできない、日本の子どもや若者も少なくないようです。
■多くの人の役に立っている
次に、「多くの人の役に立っている」という項目を見てみましょう。
やはり日本の子ども・若者は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合が39.2%とほかの国と比べてかなり低くなっています。特に「そう思う」と回答した人は10.5%と約1割程度で、次に少ないスウェーデンと比較しても約17ポイントの開きに。謙虚であるともいえますが、自己肯定感が低かったり、社会的役割について具体的に考えられなかったりするケースもあるのではないかと想像されます。
■有名になっている
次に、「有名になっている」という項目ですが、日本の子ども・若者で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答している割合は15.7%である一方、他の国々は3~4割となっています。日本の場合、そもそも、有名になりたいと考える人が少ないということなのかもしれません。SNSによって有名人がより身近になっている現代ですが、意外にもそれと「自分が有名になること」とは別物だととらえている若者が、とても多いようです。
日本の若者は外国と自分との関わりについて消極的?
では、グローバル化が言われるようになって久しい昨今、今の若い世代は「国際的」と自分自身の関係について、どう思っているのでしょうか。
■国際的に活躍している
「国際的に活躍している」という項目について、「そう思う」と回答した日本の子ども・若者はわずか6.4%、「どちらかというとそう思う」を足しても21.4%でした。5割を超えている他の4カ国と比べると、かなり低いといえるでしょう。
日本の地理なども関係するかもしれませんが、SNSなどで海外の人たちとのコミュニケーションも容易になっている現在の状況を考えると、やや意外な結果かもしれません。
■外国に住んでいる
同様に、「外国に住んでいる」というイメージを持つ日本の子ども・若者は、他国と比べるとかなり少ないようです。
日本は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が12.9%ですが、他の4カ国は4~5割と多くなっています。外国に住むことをイメージしにくい日本人は、若い世代でもまだまだ多いことがわかりました。
結婚や子育てのイメージが持てない、日本の若者
最後に、結婚や子どもに関する項目を見ていきます。
■結婚している
「結婚している」という項目について、日本の子どもや若者が「将来、自分は結婚するだろう」と思っている人の割合は50.2%となっています。他国ではドイツのみ65.7%で6割台ですが、ほかは7割以上という結果です。各国の事情はそれぞれ異なるため、一概に言えませんが、日本の若い世代にとってはとくに、結婚が当たり前ではなくなっている状況がうかがえます。
■こどもを育てている
続いて「こどもを育てている」という項目に関しても、日本の子ども・若者で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合は42.8%で、他国が6~7割であることと比べると低いという印象です。若い世代が子どもをもつイメージを持てないことは、日本がまだまだ子育てしにくい国であることの表れかもしれません。
まとめ
今回は、自分の将来像について聞いた調査結果でしたが、残念ながら日本の子どもや若者は、他の調査国と比べるとネガティブな傾向を感じる結果でした。一般に安全で暮らしやすいと思われる日本ですが、日本の若者たちの多くは自分の将来をあまり明るく描くことができていません。ここには当然、日本の社会状況も反映されていることでしょう。とくに、将来自分自身に満足していると思える人がやや少ないのが気になります。向上心の高さの表れであればよいですが、その理由が自分を肯定できないことにある可能性も考えられます。ご家庭でも一度、自分の子どもが明るい将来を思い描けているかどうか、話を聞いてみるとよいかもしれません。
(マイナビ子育て編集部)
調査概要
■我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)/こども家庭庁
調査対象国:日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデン
調査対象者:満13歳~29歳の男女
調査期間:2023年11月~12月
調査回収数:
日本:1,089、アメリカ:1,064、ドイツ:1,078、フランス:1,026、スウェーデン:1,026