【子ども・若者の意識調査】日本と諸外国で違いが目立った「自己肯定感」、一方で「親の愛」を感じるのは共通
子どもには「自己肯定感」を強く持ってほしい。そう思う親は多いことでしょう。実際、今どきの子どもや若者たちは、自分自身のことをどう考えているのでしょうか? 今回は、こども家庭庁が実施した「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」をもとに、現在の日本の若者たちの自己認識の現状を他国との比較のうちに見て行きます。
日本を含む5カ国、13歳~29歳の男女に調査
こども家庭庁では、日本と諸外国の子ども・若者の意識を比較することで、日本の子ども・若者の意識の特徴などを的確に把握することを目的に「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」を実施しました。対象国は、日本のほか、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデンの計5カ国、対象者は13歳~29歳までの男女とし、各国1,000サンプルを集めました。今回はその中から主に、自己認識に関わる項目を見て行きたいと思います。
自分のイメージは? 日本の子ども、若者の回答は…
まず、自分自身のイメージについて、どの程度あてはまるかを尋ねた設問における、日本の子ども・若者の回答がこちらです。選択肢は「そう思う」「どちらかというとそう思う」「どちらかというとそう思わない」「そう思わない」の4つとなっています。
設問に提示されたいくつかの「自分についてのイメージ」の中で、最も「そう思う」「どちらかというとそう思う」と回答した合計が多かったのは、「自分の親(保護者)から愛されている(大切にされている)と思う」で80.8%でした。次いで多かったのは「自分には長所があると感じている」で65.6%、「自分には友人が十分いる」が64.3%と続いています。
一方、「今の自分が好きだ」は「そう思う」「どちらかというとそう思う」が53.4%と、やや低い印象です。今の自分を好きだと思えない人が半数近くに上る点は、少し気になります。
日本の子どもの自己肯定感、他国との違いは?
■「私は、自分自身に満足している」
ここからは、前問の回答結果を各国と比較したもので詳しく見て行きましょう。全体的には日本と他国で差が見られたものが多くなっています。まずは「私は、自分自身に満足している」という項目から。
「そう思う」「どちらかというとそう思う」と回答している日本の子ども、若者は57.4%ですが、他の国と比べると最も低い数字になっています。日本以外はいずれも7割以上が「そう思う」「どちらかというとそう思う」と回答しており、今回の国の中では日本の低さが目立ちます。特に「そう思う」の数字の差が大きく、日本の16.9%は、他国の半分ほどにとどまる結果となりました。
■「自分には長所があると感じている」
「自分には長所があると感じている」という項目に関しても、日本の子ども、若者は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答している人の割合が最も低くなりました。日本は65.6%で、次に少ないスウェーデン(73.1%)とも7.5ポイント、最も多いドイツ(85.2%)とは19.6ポイントもの開きがあります。
他国と比べると、日本の子どもや若者は自分の長所を感じられていない人がやや多い印象です。
■「今の自分が好きだ」
続いて「今の自分が好きだ」という項目ですが、ここでも日本の子ども、若者は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の割合が最も低く、53.4%でした。半数は超えていますが、ほかの国はすべて7割以上であるところを見ると、日本の子どもや若者の自己肯定感は低めという印象を受けます。また、「そう思う」の回答に絞って見ると、日本の17.5%は特に低い結果となっています。
■「自分には友人が十分いる」
「自分には友人が十分いる」という項目では、どうでしょうか。特に違いが見られるところとして、「そう思う」が日本は24.0%ですが、他の国は最も高いアメリカで45.7%、その他、フランスが40.1%、ドイツが36.4%、スウェーデンが34.2%でした。「十分」の解釈には個人差が生じますが、自身の主観において「友人が十分いない」と感じている人が、他国と比べて日本の子どもや若者はやや多いようです。
日本の子どもは、自分にはチャレンジ精神がないと思う子が多い?
■「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」
ここまで、自己肯定感にかかわる部分をお伝えしてきましたが、その他の項目についても見て行きましょう。まずは、「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」という項目は、どうでしょうか。
日本の子ども、若者は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合が57.1%とほかの国と比べて低くなっています。また、「どちらかといえばそう思う」に関しては各国で大きな差はなく、主に「そう思う」の値の違いによる結果であることがわかります。
とはいえ、今の日本の子どもや若者の6割近くが「自分の気持ちをはっきり相手に伝えることができる」と答えているのは、意外に多いと感じる人も少なくないかもしれません。
■「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」
次はチャレンジ精神に関する設問となっている、「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」という項目。日本の子ども、若者の回答は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が合わせて56.4%でした。前問同様、「どちらかといえばそう思う」に関してはどの国も40%台で大きな差はありませんが、「そう思う」で日本の13.4%という低さが目立っています。日本の子ども、若者はチャレンジ精神がさほど旺盛でない人が、他の国と比べると多いようです。
「親に愛されていると思う」5カ国いずれも約8割
■「自分の親(保護者)から愛されている(大切にされている)と思う」
これまで、他国と差が出た項目を見てきましたが、日本を含む5カ国の結果が同様だったものもありました。
「自分の親(保護者)から愛されている(大切にされている)と思う」という項目についてですが、これに関しては、日本と他の国で大きな違いはありませんでした。いずれも「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合が約8割となっています。一方で、いずれの国においても、約2割の子どもや若者が親(保護者)の愛を感じられていない点にも、目を向ける必要があるでしょう。
■「自分は役に立たないと強く感じる」
続いて「自分は役に立たないと強く感じる」という項目に関しては、今まで見てきた結果からすると意外にも思えますが、日本の子ども・若者の「そう思う」「どちらかというとそう思う」と回答した人の割合が46.1%で、調査国の中で最も少なくなっています。最も多いのはアメリカで65.4%、その差は19.3ポイントでした。
まとめ
今回の調査結果を見るかぎり、日本と他の4カ国では、子どもや若者たちの自己認識にやや異なる傾向が認められました。なかでも、今の自分を好きではないと思っている人が多かった点は、親世代としても特に気になるのではないでしょうか。一方で、親から愛されているという実感は、日本が他の調査国より低いということはありませんでした。自分の長所や好きなところを、自分の力だけで見つけるのは、なかなか難しいものです。親子で互いの長所や好きなところを言い合ってみる、というのもいいかもしれませんね。
(マイナビ子育て編集部)
調査概要
■我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)/こども家庭庁
調査対象国:日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデン
調査対象者:満13歳~29歳の男女
調査期間:2023年11月~12月
調査回収数:
日本:1,089、アメリカ:1,064、ドイツ:1,078、フランス:1,026、スウェーデン:1,026