- 掲載
- 2026年08月08日 10:31
「ゲームばかりで大丈夫?」元ゲーム依存の医師が語る、親子で考えたい“ゲームルール”
「うちの子、ゲームばかりしていて大丈夫?」「何時間遊ばせていい?」「ルールを作っても守れない……」――子どもが小学生になる頃から、多くの家庭で悩みの種になるのがゲームとの付き合い方です。
総合診療医でeスポーツドクターとしても活動する阿部智史先生は、「ゲーム時間が長いだけでは依存とは言えません」と話します。自身も高校時代からゲームにのめり込み、大学受験に失敗するほどのゲーム依存を経験した“ゲーマー医師”である阿部先生。現在は4歳のお子さんを育てる父親でもあります。
今回は、そんな阿部先生に、ゲーム依存の見極め方から、親子で実践したいルール作り、そしてゲームとの上手な付き合い方について聞きました。
阿部智史
1987年生まれ。家庭医療専門医・指導医。東海大学医学部付属病院総合内科学客員講師、医療法人救友会理事長、湘南伊勢原クリニック院長、Dr.GAMES理事。東京2020オリンピック選手村ドクター。現在も熱心なゲーマーであり、複数のオンラインゲームで全国ランキング1位の経験を持つ。1児の父。
■長時間ゲームしていても「依存」とは限らない
阿部先生は、年齢や性別にかかわらず幅広い診療科を横断し、患者のさまざまな問題に対応する総合診療医です。最近は子どものゲーム依存の相談に来る患者さんが増えているのだとか。
「最近では『ゲームのプレイ時間が長すぎて困っています』『不登校でずっとゲームをやっています』という相談があります。間違われやすいのですが、ゲーム時間が長いだけでは依存とは言えません。長時間ゲームをしていても、学校や習い事や塾に通えている、友だちとも遊んでいる、など社会生活が成立しているならゲーム依存ではないのです。
依存かどうかは、社会生活に悪影響が出ているかどうかで判断します。ゲームのために学校に行かない、外出しないといった形で社会生活が崩れている場合や、親子関係や周囲とのコミュニケーションがうまくいかない、部屋にこもってゲームをプレイし続けている、という状況ならば依存と考えられます。このような場合は、専門家への相談が必要な段階でしょう。
家庭である程度判断するためのツールとして、ゲーム依存症専門外来の先生方が作った『ゲームズテスト』(※)と呼ばれるスクリーニングテストをやってみるのもいいと思います」(阿部先生)
※ゲームズテスト(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター HPより)
■大学受験に失敗し、ゲーム依存の状態に突入
阿部先生は中学受験の難関とされる私立武蔵中学・高校に通っていました。しかし高校時代からゲームにのめりこみ、人生のどん底を味わったといいます。
「高校時代、同級生たちが受験勉強を頑張るなか、私はなりたい職業像もはっきりせず、漠然とした不安を感じていました。将来へのモヤモヤを抱えながら、ゲームに没頭することで現実逃避していたのかもしれません。
ゲームに没頭するあまり大学受験に失敗し、高校卒業後はフリーターの道を選びました。そしてアルバイトをしながら1日14時間以上もゲームをする毎日。睡眠不足で生活リズムも崩壊し、親との関係も悪化して、まさにゲーム依存状態でした」(阿部先生)
そんな阿部先生に転機が訪れたのは20歳のころ。アルバイト先の飲食店で「正社員にならないか」と誘われたのです。
「あらためて自分が本当にやりたい仕事はなにか自問自答を繰り返す中で、子どもに関わる仕事をするため、もう一度受験勉強をしたいと考えました。そこからはゲーム断ちをして猛勉強を始めました。受験勉強ではゲームで培った集中力や粘り強さが役立ったと思います。
医大に合格後は猛勉強しながら国家試験に合格し、ゲーマーとしても大会で成績を残しました。医学生とゲーマーを両立した経験から、ゲームはうまく活用すれば、論理的思考力や問題解決能力、コミュニケーション力など、人生に役立つスキルを身につける“味方”になると、身をもって実感しています」(阿部先生)
■ゲームとうまく付き合うための、最初のゲーム選び
スマートフォンやタブレットなどが広く普及した現代では、幼児期からデジタルデバイスでゲームに触れる機会が増えています。阿部先生は「今の時代はゲームを禁止したり厳しいルールを守らせるよりも、ゲームとうまく付き合うスキルが必要」だといいます。
「ゲームとうまく付き合う上で、まずはプレイ時間を自分でコントロールできるようにすることが重要です。そのためには、プレイ時間をコントロールしやすいゲームソフトを選びましょう」(阿部先生)
<ゲーマー医師がすすめる「最初のゲーム」選び>
(1)オフラインで完結できる
(2)全ステージクリアやエンディングがある
(3)ガチャやコスチュームなど課金要素がない
(4)親子で一緒に遊べる
オフラインでステージクリアできるゲームは、1面ごとに区切りをつけやすく、達成感も得やすい特徴があります。ゲームデビューの段階では『スーパーマリオ』シリーズや『星のカービィ』シリーズ、『ポケットモンスター』シリーズがいいと思います。
そして子どもの興味ももちろんですが、親が興味を持って子どもと一緒に遊べるゲームを選ぶのがおすすめです。親子一緒に遊ぶことでゲームを通した共通の言語が生まれ、親子のコミュニケーションがスムーズになります」(阿部先生)
阿部先生は「子どもが友だちの影響でゲームに興味を持つ前に、親子で一緒に始めてみてほしい」と話します。
「子どもがゲームに興味を示したら、始める時期としては幼稚園年長から小学校低学年くらいまでがいいと思います。小学校に入ると、友だちとの会話や遊びを通じてゲーム文化に触れる機会が一気に増えます。その前に家庭内のルールや遊び方を身につけておくことで、友だちと一緒にゲームで遊ぶときにも、家庭のルールを守りながら付き合っていきやすくなるのです」(阿部先生)
■“ゲーマー医師”はわが子とどう向き合っている?
阿部先生は現在、4歳の子どもを育てるパパでもあります。
「息子は3歳ごろからタブレットで動画を見るようになり、そのころに『スイカゲーム』をやり始め、4歳になってから『ぽこ あ ポケモン』を始めました。強いダメージ表現もなく、子どもも安心して遊べる平和なゲームですし、自分の心の中を投影し整える『箱庭療法』的な癒やし効果もあると思います。
子どもとゲームを進めながら、読めない字は読んであげ、『マグマってなに?』と聞かれれば『この赤くて熱そうなのがマグマだよ』と教えています。ゲームを通して親子の会話が生まれ、学びにもつながっていますね」(阿部先生)
家庭では独自のゲームルールも設けています。
「わが家では平日は夜8時に寝ると決めています。そこから逆算して、7時におふろ、6時に夕食なので、保育園から帰宅して夕食までのちょっとした時間がゲームの時間になっています。
土日など家でのんびり過ごせる日は、テレビや動画やゲームなどのスクリーンタイムを3時間以内というざっくりとしたルール。とはいえまだ4歳なので、なかなかルールを守れず、しょっちゅうバトルしています(笑)。なんとか話し合って、最終的にはルールを守るところに着地できるようにしていますが、なかなか難しいですね」(阿部先生)
■ゲームを禁止するより、「付き合い方」を学ぶ
子どもと一緒に話し合って家庭内でのルールを決めたとしても、いつまでもきちんと守られるとは限りません。つい声を荒げてしまう場面もあり、葛藤している親は多いのではないでしょうか。
「忙しいときに何度注意してもルールを守れないと、親も『どうして約束を守れないの!』と感情的になってしまうこともありますよね。そんなとき思い出してほしいのは、失敗を成長のチャンスと考えること。
『次はどんなルールなら守れるのか』を一緒に考えてみましょう。『何試合まで』『何回負けたら終わり』など、子どもや家庭に合ったルールに作り変えていくといいと思います。
そして、ルールを守れたら『やったね!』と一緒に喜ぶ。守れなくなったらまた話し合って調整する。このような経験が、自分をコントロールする力を養うことにつながります」(阿部先生)
親子で話し合いながらルールを作り、子どもが自分でコントロールしながらゲームと付き合えるようになれば、その経験は学びにも生かせそうです。
「子どもがゲームそのものを楽しんで、スキルを上げたりレベルアップしたり、試行錯誤しながら頑張っている状態であれば、とてもよい付き合い方だと思います。
小さいころからゲームのルールを自分で考え、守る練習を続けることは、セルフコントロール力を養うことにつながります。中学受験や高校受験で、どうやったら目標に近づけるかの戦略を考えることにも役立ちます。
ゲームは必ずしも子どもの学びにとって敵ではなく、さまざまな力を伸ばしてくれる味方にもなり得ます。だからこそ、子どもが興味を持っているものがどんなものか、親も興味を持って一緒に学べる関係性であるといいですよね」(阿部先生)
(取材・文:早川奈緒子)
