【医師監修】川崎病とは? 未だ原因不明の子供の病気?
子供がかかりやすい川崎病は、治療法は確立されていますが、原因はまだ完全には解明されていません。冠動脈瘤や心筋梗塞などの重篤な合併症や後遺症もあるので、適切な診断と治療が大事な病気です。
川崎病ってどういうもの?
※画像はイメージです
乳幼児に多い病気である川崎病。いったいどのような病気なのでしょうか?
心臓に後遺症が残る可能性のある病気
川崎病という名前は、この病気を最初に報告した小児科医の川崎富作博士の名字からつけられました。世界的に「川崎病」と呼ばれています。
川崎病は発熱と発疹が特徴で、全身の小さな血管に炎症を起こす病気です。小児期に急に発熱するほかの病気に比べて重症で、いつもは元気だった子供が急にぐったりして動けなくなることがあります。ただ早期に適切な治療を行えば、元の日常生活を送ることができる場合が多いです。
川崎病で大きな問題となるのは、心臓の血管の冠動脈に瘤(こぶ)ができてしまうことです。この冠動脈瘤ができると血管が狭くなったり、血栓(血のかたまり)で冠動脈が詰まったりして、狭心症・心筋梗塞を起こす心配が出てきます。
発症は1歳前後が多い
発症は1歳頃が多く、主に4歳以下の乳幼児がかかるといわれています。日本川崎病研究センターの調査([*1]2015~2016年の2年間の患者を対象に実施)によると、罹患率のピークは男女ともに月齢9~11ヶ月だそうです。また、男の子の罹患率は女の子の1.27倍という結果も出ています。[*1]
過去に全国規模の流行が3回ありましたが、2015年の患者数は1万6323人で調査開始以来、最多数となりました。2016年は1万5272人でやや減少しています[*1]。しかし、少子化の影響によって子供の数は減少しているため、罹患率自体は上がっています。
川崎病の原因
川崎病は子供がかかる病気で、全身の血管に炎症性の変化が見られますが、原因はどのようなものなのでしょうか?
原因は特定されていない
細菌感染やウイルス感染、遺伝要素などの説がありますが、原因はまだ解明されていません。日本人をはじめとするアジア系の人の発症が多いことや、きょうだい間で同時期に発症するケース、再発するケースもあることから、遺伝的な要素との関連も研究されています。
川崎病の症状
川崎病の急性期の特徴的な症状と診断
川崎病には主要症状と呼ばれる6つの特徴的な症状がみられます。これらから判断して、診断がなされます。
【主要症状】
(1)発熱
高熱が5日以上続く(※)
(2)両目の充血
両目の白目の部分が赤く充血する(両側眼球結膜の充血)
(3)唇や舌の発赤
唇が荒れて赤くなり、腫れたりひび割れて出血することがある。舌が赤くなって腫れ、イチゴのように赤くブツブツになり「イチゴ舌」と呼ばれる状態になる
(4)発疹
さまざまな形の赤い発疹が出る。発疹はおなかや背中など全身に出る
(5)手足の発赤や腫れ
手足がかたくパンパンに腫れる。手や足の裏が赤くなる
熱が下がった回復期に、指先の皮がむける(膜様落屑〈まくようらくせつ〉)
(6)首のリンパ節が腫れる
発熱に反応してリンパ節が腫れる。化膿性のリンパ節のような発赤や疼痛はあまりない。年齢が高い場合に症状としてみられる割合が多い
(※)4日以下の発熱日数でも、ほかの症状から川崎病と診断されて治療を開始したあとに熱が下がった場合も含まれます。
6つの主要症状のうち5つ以上に該当するか、もしくは4つ以下でも、冠動脈瘤がみられた場合やほかの病気ではないと判断された場合は川崎病と診断されます。
主要症状は同時に現れることもあれば、発熱があってからその他の症状が次々に出てくることもあります。1歳未満の赤ちゃんはBCG接種部位が赤く腫れる症状がみられるのも特徴的です。
川崎病の治療
症状が現れて急激に進行する急性期に、どのような治療法がされるのかをみていきましょう。
炎症を抑えて、冠動脈瘤を防ぐのが目的
川崎病は重症になるとさまざまな合併症がみられることが大きな問題です。心筋梗塞を起こす原因となる冠動脈瘤ができたり、心臓の筋肉に炎症が起きる心筋炎、心臓を包む心膜に炎症が起きる心膜炎などを併発したりします。ですから、治療は急性期の強い炎症反応をできるだけ早く抑え、冠動脈瘤ができるのを最小限に抑えることを目的に行われます。
川崎病と診断されると、ほとんどのケースで免疫グロブリンの大量療法が行われます。
免疫グロブリン療法とは
この治療では免疫グロブリン製剤を静脈内に点滴で投与します。免疫グロブリン製剤は、献血された人の血液からガンマグロブリンというタンパクを取り出したものです。この中には細菌やウイルスが体に侵入したときに感染を防ぐ抗体が含まれています。
免疫グロブリン療法は現時点で最も効果的とされていて、冠動脈瘤の後遺症が大幅に減少しています。頻度は高くないですが、寒け、ショック(チアノーゼ、血圧低下)、アナフィラキシー様反応、無菌性髄膜炎、溶血性貧血、肝障害、黄疸、急性腎不全、血小板減少、肺水腫などの副作用が出ることもあります。様子を見ながら慎重に投与されます。
アスピリンの内服を併用
アスピリンの内服薬を用いる療法は古くから川崎病の治療で行われてきましたが、現在は免疫グロブリン療法と併用されています。血管の炎症を抑えたり、血を固まりにくくすることで血栓ができるのを防ぐ作用があります。
早期の治療開始が大切
免疫グロブリン製剤の投与は発熱から7日以内が望ましいですが、冠動脈瘤ができるなどの変化が出始めるといわれる10日以内には治療により解熱していることが望ましいと考えられています。早期に治療を始めるには、早めの受診が大切です。
入院期間は?
入院期間はおおよその目安ですが、1回の免疫グロブリン製剤の点滴で治った場合で約10~14日間です
治療後の日常生活
急性期の治療が終わったら、どんなことに気をつけたらいいでしょうか。心臓に後遺症がある場合とない場合で異なります。
後遺症がなかった場合
冠動脈に瘤ができるなどの後遺症がなく順調に退院できたら、その後2~3ヶ月はアスピリンなどの薬を内服し、数年間は受診を定期的にすることになります。医療機関からきちんと説明を受けましょう。運動も制限なく行うことができますが、開始の時期は医療機関で相談してください。また、川崎病は再発することはまれです。
後遺症が残った場合
心臓に冠動脈瘤が残った場合は、アスピリンの内服継続を実施し、場合によっては抗凝固剤などを併用して継続して治療を行うことがあります。また、運動のレベルでの制限は、症状に応じて定められます(運動可能から制限が必要なレベルの設定がいくつかあります)ので、担当医師から生活の管理について指示を受けましょう。
アスピリンを長期的に投与している小児には、毎年インフルエンザの予防接種を行います。これは、インフルエンザまたは水痘の小児にアスピリンを使用すると、ライ症候群のリスクが高まるためです。また、同時にインフルエンザ・水痘が疑われる場合には、担当医師にすみやかに相談してください。
まとめ
もしお子さんが川崎病と診断されたら、不安になってしまうことも多いでしょう。しかし治療法は日々進歩しており、よりよい対処法は生まれ続けています。症状や後遺症には個人差があります。病院へ早く行き、適切な治療を受けましょう。
[*1]第24回川崎病全国調査成績 日本川崎病研究センター
参考文献
日本川崎病学会 「川崎病(MCLS、小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き (厚生労働省川崎病研究班作成改訂5版)」
http://www.jskd.jp/info/pdf/tebiki.pdf
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)