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【医師監修】子供のチックの症状と正しい対応 ストレスとの関係は?
子供がよくやるまばたきや首をかしげる行為はクセだと思われがちですが、もしかしたらチックの症状の可能性もあります。子供のチックの症状や正しい対応方法などをお伝えします。
そもそもチックとは?
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※画像はイメージです
チックとはどんな疾患? トゥレット症候群とは違うの?
チックとは子供、男児に多く、だいたい10人に1人が経験すると言われています。
一見すると普通のクセのように見える症状なので、最初は気づかないケースも少なくありません。突発的で急速な、反復性がある、リズムなく運動(運動性チック)や発声(音声チック)が繰り返されますが、こういった症状は、自分の意思とは関係なく引き起こされるのが特徴です。
乳幼児期からの心と体の成長に伴って見られ、大人になるにつれて普通は自然と消失することが多いですが、稀に、学童・思春期まで続き、生活に支障が出る場合もあります。症状が続く期間が4週間以上12ヶ月未満の場合を「一過性チック障害」、12ヶ月以上持続する場合を「慢性チック障害」とし、さらに慢性の中でも多彩な運動性チックと1つまたはそれ以上の音声チックがある場合をトゥレット症候群と呼びます。
運動チックと音声チックの2タイプ
前述のように、チック症は、動きが中心の「運動チック」と、発声が中心の「音声チック」の2つに分類されますが、さらにそれぞれ「単純チック」と「複雑チック」に分けられます。
〈運動チック〉
運動チックとは、多くは首から上の動作として症状が出ることが多いです。
具体的には、まばたきを繰り返す、顔をしかめる、首を振る、肩をすくめるなどが「単純性運動性チック」とされ、手足の動きや、ジャンプ、スキップなどに見える発作、物に触る、蹴るなどが「複雑性運動性チック」に分けられます。
〈音声チック〉
音声チックは、「単純性音声チック」で発声、咳払い、鼻鳴らし、「複雑性音声チック」で公共の場や人前で言うことがはばかられるような汚い言葉を発する(汚言症/おげんしょう)、他人の言った言葉を繰り返す、音声や単語の発声を繰り返す、などがあります。
チックは気持ちや体に負担がかかると増加したり、集中したりしていると減少し、また、通常睡眠中には減少します。
多い年齢、発症年齢、性別は?
チックの発症年齢は、4歳~11歳頃で、特に6歳前後によく見られるようです。また、女子よりも男子に発症が多く、男女比はおよそ2~3対1とされています。
チックは治る?
チックの大半は一過性の軽いものであり、成長を重ねるにつれてチック症が改善していくことがほとんどです。慢性チック障害でも小学校高学年~中学生時代がピークで、それ以降は消滅することが多いです。
どうしてチック症状が起きるの?
チックの原因は完全にはわかっていませんが、その子の体質(脳の特性)が要因の一つである可能性が示唆されています。また、トゥレット症候群の場合は、遺伝的要因との関与も考えられます。
生活が不規則になったり、疲れたり、不安になったりなどのストレスに関しては、原因ではないもののチックを悪化させる可能性があるとされています。
子供のチック症状にどう対応すれば良いの?
もしかしてチックかも?と思ったら
幼い子供が行う動作が症状の中に多いため、「うちの子も、もしかしたらそうなのかもしれない」などと心配される保護者も多いかと思います。
まず、しばらくは様子を見ることが第一です。チックは、成長や時間とともに軽減・消滅していく場合が多いものです。親心として「自分の育て方に問題があったからでは」と思ってしまう人もいますが、それはありません。もちろん、お子さんにも非はありません。気長に見守りましょう。
ただし、本人が症状によって辛い思いをしていたり、生活面に支障がでたり、周りに迷惑がかかってしまうようでしたら、かかりつけの医師や、小児神経専門医に相談して、適切な診断とアドバイスを受けるのが最善でしょう。
病院でチックと診断されたら
チックと診断されたらまず重要になるのは、子供との接し方や環境作りです。チックというのは自分では止められないもので、親や先生に「止めなさい!」と叱られても逆効果です。悪いことをしているわけではないので、責めるような言い方をしたり、無理に行動を止めさせたりするようなことはしないようにしましょう。
過剰に反応するのではなく、見守る姿勢で、子供の周りの環境から心の負担になっていると思われるものを取り除いてあげましょう。声掛けをする際は、子供の気持ちに寄り添った言葉をかけるよう心掛けてください。本人がチックの症状を意識しないよう、運動や遊びで発散させたり、何か熱中できる事を仕向けて症状を緩和させる、本人に気にさせないような配慮がよいでしょう。
また、幼稚園や保育園、学校の先生に前もって症状について話し、理解ある対応をお願いすることも大切なサポートの1つです。子供が精神的に傷つくことのないように、あるいは自信をもって本人の力を発揮できる生活を送れるよう、親御さんが周りの大人に頼むこともとても重要です。
どうやって治療するの?
日常生活にそれほど支障をきたさないチックは治療する必要はありません。治療すべきは、社会的に大きな障害が引き起こされる場合のチックです。どのような時、どのような状態で、症状が出るか等を評価した上で、適切な治療を施す必要があります。不安な場合は、かかりつけの医師や小児神経医などに相談してください。
まとめ
チックはいずれ自然と消失します。症状が現れたら、周囲が過剰に反応するのではなく、症状に理解を示し、注意したりせずにしっかりと向き合ってあげてください。ストレスや負担を取り除く努力をすることが大切です。
不安に思うことがあれば、早めに専門医から適切なアドバイスを受けることも大切です。チック症の正しい知識を把握し、医師や家族や周りの人の理解を得ながら経過を見守っていきましょう。
日本小児神経学会「チックの症状について教えてください」
厚生労働省「吃音、チック症、読み書き障害、不器用の特性に気づく「チェックリスト」活用マニュアル」
大阪府「まばたきパチパチ~子どものチック~」
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2020.03.03)